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【質問】睡眠薬を毎晩飲むのは悪いことですか?

 

 

こんなご質問をいただきました。

 

睡眠薬を毎晩飲むのは悪いことでしょうか? いま薬のおかげでここ数ヶ月で最高の睡眠を得ています。それでも薬の使用をやめるべきでしょうか?

 

ということで、どれぐらい睡眠薬の連用には問題があるのか、と。まー、現時点で睡眠薬で良い成果が出ているので、使用を打ち切りたくないって気持ちも分かるところです。

 

で、睡眠薬の安全性についてですが、大きな結論から言いますと、

 

  • そりゃあ長期の使用はダメですよ

 

って感じになります。あくまで睡眠薬は一時しのぎみたいなもんで、再び健康な睡眠に復帰するまでの橋渡しみたいな存在なんで。

 

長期的に睡眠薬を使うとどうなるかと申しますと、

 

  1. すぐに耐性がつく:処方された睡眠薬を長期間服用すると、すぐに体が薬に慣れちゃって、どんどん使用量が増えていきます。なので、睡眠薬は長くても2週間以上は服用すべきではないってのが基本的なガイドラインに鳴るでしょう。あくまで睡眠薬は正常な睡眠パターンを取り戻すためのもので、短い間だけ睡眠薬で就寝時間を調整したら、その後は服用をやめるべき。


  2. 死亡率が上がる:2019年にBMJオープンに掲載された研究(R)では、睡眠薬や抗不安薬を3年間続けている人を調べたところ、「これらの薬を飲めば飲むほど死亡率が増加する」との結論が出た。2015年に発表された別の研究(R)では、睡眠薬を2年間服用したグループを調べたら、やはり死亡率が増加していた。特にベンゾジアゼピン系睡眠薬を服用している人に顕著だった。


  3. 睡眠薬の離脱に問題が出る:睡眠薬に依存しすぎると、うたた寝が苦手になったりするケースもよくあります。その性で、処方された睡眠薬を使い切ると、不眠症が以前より悪化することも珍しくなかったりします。また、睡眠薬を定期的に服用していた人が急にやめると離脱症状が出やすく、不安、震え、吐き気などを起こすこともありますんで。


  4. 睡眠薬を利用中は他の薬が危険になる:睡眠薬を服用しているときは、眠気を誘う他の薬は控える必要があります。抗ヒスタミン薬、抗うつ薬、抗不安薬など、鎮静作用のある薬や、アルコールのように中枢神経系を抑制する物質を併用すると、呼吸が遅くなって睡眠に悪影響が出ることもありますんで。


  5. 翌日の注意力が低下する:睡眠薬を使った翌朝は、眠くなったり、めまいがしたり、頭がうまく働かなかったりもします。いわゆる「モーニング・アフター 効果」ってやつで、処方された睡眠導入剤を服用している人のさらに32%がこうした症状を感じているんだそうな(R)。


  6. 転倒のケガリスクが上がる:2020年の研究(R)によると、毎晩睡眠薬を使用している高齢者は、転倒して腰の骨折や打撲などの怪我をするリスクがめっちゃ高くなる(頭がもうろうとしやすくなるから)。

 

って感じで、基本的に睡眠薬の長期利用は問題だらけですんで、2週間をめどに使用は打ち切り、それでも入眠に問題がある場合は、もう一度医療機関に相談すべきでしょう。日本はわりと海外と比べて眠剤天国だったりするんで、難しいところがあるんですが。

 

ちなみに、上記は処方薬の話ですけど、ドラッグストアで買えるレベルの睡眠導入剤にも、それなりの問題が指摘されていたりします。具体的には、ジフェンヒドラミンを使った睡眠導入剤を長期にわたって使うと認知症のリスクが高まるみたいなんですよ。

 

たとえば、2015年の研究(R)によると、10年間にわたり、一般的な睡眠導入剤に使われる量のジフェンヒドラミンを、1~2週間に1回ぐらいのスパンで定期的に服用している人は、服用しない人に比べて認知症リスクが54%上昇したんだそうな。ジフェンヒドラミンって成分は、脳の伝達物質ってアセチルコリンの働きをブロックする働きを持ってまして、そのせいで脳の記憶や学習がジャマされちゃう可能性があるんですよ。もちろん、短期の服用なら問題はないんですが、長く使い続けると悪影響が出かねないわけっすね。

 

ただし、睡眠導入剤と認知症との関連は、まだそこまで確実なものでもないので、過度に不安にならないようお願いします。イギリスで行われた最近の研究でも、「まぁ暫定的な相関しか確認されてないから、もうちょい研究しないとよくわからないよねー」って結論なんで。ただし、ここらへんの問題をRCTでチェックするのはほぼ無理なんで、明確な結論が出ることは今後もないような気がしますが。

 

ってことで、処方薬にせよ市販薬にせよ、睡眠系のお薬には注意してくださいねーって話でした。薬を使わない睡眠療法は、他にも「認知行動療法(CBT)」 とかいろいろありますんで、こういった方法も合わせて使いつつ、ぜひ長期使用はおひかえいただければと。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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