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【質問】 プロ アスリートも使っている「キネシオロジーテープ」って意味ありますか?

 



こんなご質問をいただきました。

 

キネシオロジー・テープって意味ありますか?ランニングの後に貼り付けると、なんだか筋肉痛が少なくなった気がするのですが。

 

キネシオロジー・テープってのは、丈夫で伸縮性のあるテープで、↓みたいな感じの商品ですな。

 

 

こいつを貼ることで、筋肉の機能がアップし、関節が安定し、痛み、腫れ、筋肉の痙攣などがやわらぐと考えられております。アスリートやトレーナーの世界では、標準的な白いアスレチック・テープが何十年も使われてきましたが、こちらは硬い綿でできていて負傷したところを安定させる目的がメインなのに対し、キネシオロジーテープは綿の中に高分子弾性繊維が織り込まれているため、テープが柔軟で、貼っても可動域を妨げないんですな。 オリンピック選手やプロのアスリートも使ってるんで、本当に効果があるなら気になっちゃうところです。

 

で、キネシオロジーテープの効果について、私見をざっくりまとめると、こんな感じになります。

 

  1. キネシオロジーテープの 研究が限られているので、誰にもはっきりしたことが言えない

  2. 現在の証拠を見ていると、多少は効果がありそうだが、大きな期待はしないほうが良さそう

  3. とはいえ、 そんな高価なものでもないし、副作用があるようなものでもないので、試しに使ってみてもいかが?

 

ということで、 まだ謎が多い手法なので、あまり期待せずに使う分にはいいんじゃないの? ぐらいのお答えになります。 まぁスポーツ傷害の痛みを和らげる他の効果はないでしょうが、 筋肉痛をやわらげるぐらいの効果はあるかもしれません。

 

もうちょいくわしく見てみると、いまの時点で最も信頼がおけそうなのは2012年(R)と2013年(R)に公開された系統的レビューで、それぞれキネシオロジーテープの有効性に関して、 過去のデータを精査してくれております。ここでは合わせて18の研究が検討されてまして、 こちらも非常にざっくりとしたことを申し上げますと、

 

  • 6~7つの研究では、キネシオロジーテープを使うことで、筋骨格系の痛みに対して中等度の効果がある可能性が指摘されている。 
  • ただし、いずれの研究においても、長期的に痛みを改善したり、筋力が アップしたり、 負傷した可動域が改善 したいといった メリットについては認められなかった。

 

ということで、 どちらのレビューの 先生方も「キネシオロジーテープを傷害の予防や治療、筋力や可動域の改善に使用することを支持するエビデンスは不十分である」と結論づけてたりします。 なので、ちょっとした筋肉痛には良いかもしれないけれど、 体を負傷した際の痛みが改善したり、 スポーツのパフォーマンスが上がったりなどの効果を求めるのは、やめておいたほうがよさそうであります。

 

また、もう少しニッチな研究も紹介しておくと、 コクランに掲載された2021年のレビュー(R)では、腱板(筋肉が骨にくっつくところの白っぽいスジみたいなやつ)にダメージを受けた人にキネシオロジーテープが効くのかどうかをチェック。1,054人が参加した23の臨床試験を分析したところ、

 

  • キネシオロジーテープが、偽のテーピングよりも痛みを軽減し、関節機能を改善し、肩の可動域を広げるという明確なエビデンスは見つからなかった!

 

って感じの結果だったそうです。 こちらもちょっとがっかりな結論ですね。

 

と言うと、 何やらキネシオロジーテープには 全く意味がなさそうな印象もありますが、いちおう一部の研究では、 希望が持てそうな結果も出てますんで、公正を期するためにも取り上げておきましょう。

 

  • 血行とリンパの流れを改善する……かも?:キネシオロジーテープが皮膚の表層を持ち上げて、皮膚とその下の組織の間に空間を作り、血行とリンパの流れが促進されて炎症が軽減される 可能性が指摘されております。2018年の研究(R)では、リンパドレナージとともにキネシオロジーテープを使うことで、リンパ液のうっ滞が改善され 、血液循環も改善されたとのこと。 ただし、 この研究は、かなり特殊な患者さんが対象なので、一般的に健康な人にも有効なのかは謎。

 

  • 固有感覚を向上させる?:キネシオロジーテープは、皮膚、筋肉、関節にある受容器を刺激し、自分の身体が空間のどこにあるのかを鋭敏にし、 それによって運動の能力が上がるかもしれないとも 言われております(R)。もっとも、 こちらも特定の病気に悩む人しか対象にしないので、 一般的な人の運動能力が上がるかどうかは謎。

 

  • 筋肉の緊張を解きほぐすかも?:キネシオロジーテープは、筋肉、皮膚、関節構造の侵害受容器(痛みの通り道)を抑制すると考えられてたりします(R)。上でも見たとおり、 筋肉痛については一定の効果が確認されているので、これについてはありそうな気もしますね。

 

ってことで、 ざっと見てきましたが、 キネシオロジーテープに関しては、 普通の筋肉痛に使う分はあり。 それ以上の効果を求めるとがっかりするかもなぁ……ってところです。どうぞよしなに。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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