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筋トレしても筋肉が成長しない「ノンレスポンダー」はどうすればいいのか問題


世の中には、「ノンレスポンダー」と呼ばれる人がいるわけです。すごーく簡単に言うと、トレーニングの成果が出にくい人のことで、

 

  • 筋トレしても人より筋肉が発達しない……
  • がんばって走っても健康にならない……

 

みたいなタイプのことを言います。これは切ないですなぁ。

 

1980年代から行われた実験では、同じようなトレーニング・プログラムを数カ月した人でも、体力がまったく向上しない人もいることが判明。このような違いは、遺伝子の差で約半分ぐらいを説明できると考えられております。

  

ノンレスポンダーが存在する理由には諸説ありますが、考えられることとしては、

 

  • 筋肥大に関する遺伝子の発現が、人によって異なる。

  • ノンレスポンダーは、運動の後に体の炎症反応が拡大しやすく、そのせいで筋肉が成長しづらくなっている。

 

などの原因が推定されております(R)。詳しい原因はまだよくわかりませんが、どうやらノンレスポンダーは、運動によって筋肉が炎症を起こしやすく、自己修復するのが精一杯で成長に回すリソースが なくなってしまうのかもしれません。 これは切ない原因ですね。

 

それでは、このようなノンレスポンダーには 良い対策は無いのかってことで、 新しいデータ(R)では、「運動しても肉体が成長しづらい人はどうすればいいのか問題」について深掘りしてくれておりました。

 

これはサンパウロ大学などの研究で、 研究のデザインをざっくり紹介すると、

 

  1. 参加者に、まずはどちらかの足だけでレッグエクステンションをやってもらう。1セット8~15レップスで、これを1セットのみ行う。

  2. 続いて、最初とは別の足でレッグエクステンションをやってもらう。 こちらも1セット8~15レップスだが、4セット行う。

  3. 筋肉の大きさをMRIで測定し、皆の足がどのように成長したかをチェックする。

 

って感じになります。 片足ずつ異なる筋トレを行うことで、個人差を排除しながら、 トレーニングへの反応をチェックできるわけですね。

 

すると、結果は以下のようになりました。

 

  • 1セットしかトレーニングを行わなかった足は、 筋肉が成長していないケースが多かった(これは予想通り)。被験者の60%は、 太ももの筋肉が3.3%以上増加することはなかった。

 

  • ただし、1セットのトレーニングで筋肉が反応した人もおり、 そのような人の場合は、4セットのトレーニングをしたほうがより大きな反応を示した。1セットで反応した人のうち、4セットで筋肉サイズが有意に大きくなったのは51%だけで、15%は4セットのトレーニングによって、かえって筋肉の反応が悪くなった。

 

ということで、ざっくりと結論を見てみましたが、このデータからわかることを一言でまとめると、

 

  • 最初は筋肉が増えないように見えた人でも、セット数さえ増やせば筋肉が増える。

 

みたいになります。他の人より筋肉が増えないように見えたとしても、 さらに筋トレのセット数を増やせば、ちゃんと筋肉には成長が見込めるのではないかってことですね。

 

めちゃくちゃ当たり前の結論のように見えますが、 データを細かく見ると複雑なニュアンスもありまして、

 

  • 参加者の中には4セットが1セットより悪い結果になった人もいたため、 一概にセット数さえ増やせばオーケーとは言いづらい。

 

  • また、筋力については、4セットやったとしても、1セットよりも筋力顕著に大きくなることはなかった。 筋力については、また別のファクターが絡むので、 こちらもセット数さえ増やせばオーケーとは言いづらい。

 

みたいなところがあります。 おそらく、 たいていノンレスポンダーの人は、 セット数さえ増やせば どうにかなるんじゃないかと思われるものの、この法則は誰にでも当てはまるわけじゃないのが悩ましいところですね。そのため、 もし自分がノンレスポンダーだと思ったら、 とりあえずセット数を増やしてみて、それでもうまくいかなかったら、さらに別の変数を変えてみるといった実験が必要になるでしょうね。

 

かく言う私は、特にノンレスポンダーってわけでは無いのですが、 50代が目の前に迫ってきたため、 今までと同じ筋トレをしていては同じような効果は得られないんだろうなぁと予測しております(一般に、歳をとればとるほど筋トレの同化刺激に対する反応が鈍くなり、 筋トレの効果が出ない可能性が高くなる)。

 

ちなみに、今回の研究は筋トレだけに焦点を当てたものですが、過去の研究では、 有酸素運動についても同じような傾向が確認されていたりします。 つまり、有酸素運動で体力が上がらないように見えた人は、シンプルに運動の量を増やそうぜって話ですな。やはりこちらも個人差はありますので、 色々と試してみる必要はありますが……。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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