スマホ1時間で近視リスク21%増!? 画面と視力の危うい関係を示したメタ分析の話
「スマホで近視になる!」みたいな結論のメタ分析(R)が、なかなかイヤーな内容だったので、今回はその中身を詳しく見てみましょうー。
「画面を見るほど目が悪くなる」は本当だった?
この研究は、過去の45件の観察研究を統合したメタ分析で、対象はなんと延べ33万人超(平均9歳)。あくまで観察研究の結論ではありますが、なんせデータ量は膨大なので、それなりに信頼できる内容になってるんじゃないでしょうか。その結果、何がわかったのかと言いますと、
- スクリーンを見る時間が1時間増えるごとに、近視になるリスクが21%上昇する
- 複数のデバイス(スマホ・タブレット・テレビなど)を合算したスクリーンタイムでは、近視のリスクが28%上昇する
- 特にスマホを1日1〜4時間の範囲で見ている人は、近視リスクが急激に増加する
みたいな感じです。つまり、「スマホ1時間くらいなら大丈夫でしょ!」とか油断していると、着実に目をやられていくってことですな。こいつは怖いぜ……。
リスクの上がり方は“S字カーブ”
この研究では、スクリーンタイムと近視リスクの関係を「線形モデル」と「非線形モデル」の2つで分析していまして、だいたいこんな結果が出てます。
- 線形モデル:毎時間ごとに近視リスクが一定のペースで上昇 → 1時間で21%アップ
- 非線形モデル:近視リスクがS字型に上昇 →「1時間以下:ほぼ影響なし」「1〜4時間:急上昇ゾーン」「4時間以上:増加は鈍化」
ここで重要なのは、「1時間まではセーフゾーン」かもしれないんだけど、「2〜4時間だとヤバい!」みたいなポイント。とくに1日中スマホをいじっている子どもや、リモートワークで8時間以上ディスプレイとにらめっこの大人は、まさにリスクど真ん中といえそうっすね。というか、まさに私がそんな感じなんですけども。
なぜ画面を見ると近視になるのか?
そもそも近視ってのは、眼球の成長が過剰になりすぎて、光の焦点が網膜の手前で合っちゃうのが主な原因になっております。これが進行する理由としては、
- 長時間の近距離作業(スマホ、読書、パソコンなど)
- 屋外での活動不足
- 遺伝的要因
などの複合的な要素が絡み合っているとされていて、今回の研究でも「画面の使用時間」と「近視リスク」の関係を示すと同時に、それ以外の変数にも触れてくれてます。たとえば、
- 近視の子どもは近くのものを好む傾向がある=それで因果関係が出たように見えるのでは?
- 学歴が上がるほど近視が進む傾向がある=これは近距離な作業の多さが影響してる?
- 屋外活動が多いほど近視になりにくい傾向がある→自然光のおかげで近視が防がれているのかも?
って感じで、いかにもありそうな話がいくつも挙げられてたりするんですよ。なかなか難しいもんですなぁ。
「外で遊ぶと目が良くなる」のは本当だった
で、上記のなかで最も重要なのは、屋外活動による近視のプロテクト効果でしょう。これについては別のメタ分析もありまして、子どもが屋外で過ごす時間を増やすと、近視の発症リスクが最大69%も低下するなんて報告もあったりするらしい。これはけっこう強烈なメリットですね。
その理由として考えられているものもいくつかありまして、
- 自然光が眼球の成長を抑制してくれる
- 屋外では遠くを見る機会が増える
- スクリーンを使わない時間が自然に増える
といった点があるでしょう。つまり、スマホを避けることそのものが重要というより、「その時間を何に置き換えるか」が視力維持のカギだってことになるんじゃないでしょうか。
じゃあどうすればいいの?ってことで、ここまでの研究結果を踏まえると、日常で実践できる対策はおおむね以下のようになるでしょうね。
- スクリーンタイムは「1時間以下」を意識:とくに子どもの場合は、1日1時間以内におさえるだけでもリスクを大幅に下げられそう。大人でも、休憩をはさみながら使う習慣が大事。
- 1時間見たら、10分は外に出る:いわゆる「20-20-20ルール」(20分ごとに約6メートル先を20秒見る)を使っても良いですが、近視予防にはやっぱ本物の屋外活動が効くらしいので、昼休みの散歩などをしておきたい。
- 室内では“遠くを見る”習慣をつくる:机に向かう時間が長い人は、窓の外を定期的に見るなど、「ピントを遠くに合わせる」動作を意識的に入れるのが吉。
- 教育熱心な人ほど注意:学歴が上がるほど近視が増える傾向があるため、早期教育や読書漬けを進めたい親御さんは、外遊びとのバランスをセットで考えることが重要。
ここらへんは簡単なのでぜひ守っておきたいですけど、ここで強調しておきたいのは、「スマホやタブレットが悪者だ」ってわけじゃないところですね。あくまで屋内中心の生活が良くないよーぐらいの話だと思いますんで、上記のような介入を早めにやっとくのがよさげであります。
あくまで観察研究なので「画面を見た=絶対に目が悪くなる」とは限りませんが、複数の研究が同じ方向を示している時点で、ある程度の信頼性は担保されていると考えて良いでしょうな。