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運動強度は「5段階」でOK──誰でも使える動強度の決め方を考えたぞ!という研究の話

 
 

「運動は強度の調整が大事!」ってのはよく言われるところです。もし必要以上に強くやりすぎてしまったらオーバートレーニングになりかねないし、逆に楽すぎる負荷で続けてしまったらトレーニングの効果が出ないことになっちゃいますからね。

 

が、なにごとも言うは易しで、自分にとって最適な運動強度を確かめるのは意外と難しいもんでございます。現時点では、「自分が“ややキツい”と感じられるキツさを目指すのがいいよ」ってのが専門家の総意なんですけども、「それって結局はどう判断すればいいのよ」って部分は曖昧なままだったりします。

 

そこで運動やフィットネスの世界では、「ゾーン2がいい」とか「心拍数70%でやるべし」とか、強度に関するアドバイスがいくつも出てまして、たとえば、

 

  • パーソナルトレーナーは「1RMの80%で8レップ」みたいに言いがち
  • 公衆衛生の専門家は「中強度で週150分」みたいに言いがち
  • アスリートのコーチは「LT1を越えないように」みたいに言いがち

 

みたいな感じでして、もちろんこれはこれで参考にはなるものの、同じ「運動」でも用語や基準がバラバラなんで、これだと話が噛み合うわけがないんですよね。

 

ということで、そんな混乱を解消しようと、近ごろビクトリア大学のデヴィッド・ビショップ博士を中心に、16人の国際的な専門家チームが「運動強度の共通語」をまとめたコンセンサス・ステートメント(R)を発表してくれてて、これがめっちゃ役に立ちます。「結局、自分はどれぐらいの辛さで運動すればいいんだ!」とお悩みの方には、かなり有用なのではないかと。

 

 

 

結論、運動強度は「5段階」でOK

では、研究チームがどんな新ガイドラインを出したのかと、まずはざっくりとした5段階の分類を提案してくれております。

 

ゾーン名主観的な感覚(RPE)
Very Low(超軽い)RPE 1~2(楽すぎて運動してる感じがしない)
Low(軽い)RPE 2~3(鼻歌まじりでできる)
Moderate(ややキツい)RPE 4~5(会話はできるけど余裕はない)
High(キツい)RPE 6~7(息が上がってくる)
Very High(超キツい)RPE 8~10(限界に近い)

 

ということで、このブログでは毎度おなじみの「RPE」を使った内容になってます。簡単におさらいすると「RPE」ってのは、運動中に自分が感じる“キツさ”を数値化する主観的評価指標のこと。「主観で正しく判断できるの?」と考える方もいるでしょうが、実際の生理的データとけっこうな精度で一致することがわかっているのでご安心あれ。

 

このRPEをざっくり5段階にわけたのが今回のコンセンサスのキモでして、これによって運動強度の“共通言語”が誰にでも使える形で整ったわけです。使いやすいですねぇ。

 

また、この分類がすぐれてるのは、有酸素運動と筋トレの両方に使えるところです。たとえば、有酸素運動をガチでやっている人は、「第1代謝閾値(LT1)」と「第2代謝閾値(LT2)」というポイントを目安にして、ゾーンを分けることができるはず。具体的には、

 

  • LT1以下 → Low
  • LT1〜LT2の間 → Moderate
  • LT2以上 → High〜Very High

 

みたいな感じですね。有酸素運動といえば、「走っている間で喋れるかどうか」で運動の負荷を判断する「トークテスト」もおなじみですけど、この考え方からすれば、「トークテスト」もそれなりに目安として使えそうであります。

 

同時に、筋トレでは「1RMの何%」みたいに負荷を決めるケースが多いんだけど、これだと個人差が大きすぎてあんまり使えないケースがよくあるんですよね。その代わりに、このコンセンサスで推奨されているのが、「RIR(Reps In Reserve)」方式であります。これは、「あと何回ぐらいダンベルやバーベルを動かせそうか?」という感覚に基づく評価法で、以下のように分類して使います。

 

RIR(あと何回できそうか)強度分類
8回以上Very Low(超軽い)
7〜8回Low(軽い)
4〜6回Moderate(ややキツい)
2〜3回High(キツい)
1回以下Very High(超キツい)

 

つまり、「もう1回もできない」レベルで追い込んでるなら、それはVery Highなのでオーバーワークになりがち。「あと5回は余裕でできる」ならModerateぐらい、という感じっすね。もちろん、この感覚を身につけるには、何度か限界までやってみる必要がありますが、これができるようになると筋トレの質はグッと上がるでしょう。

 

 

 

で、それって本当に意味あるの?

ここまで読んで、「いや、別にざっくり“キツい”で伝わればいいでしょ?」と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこの“ズレ”が、オーバートレーニングや停滞の原因になることがあるんですよ。フォスター博士いわく、

 

このズレが、オーバートレーニング症候群の正体を説明してくれた。

 

とのことで、つまり正確な強度でトレーニングできないと、回復が間に合わず、パフォーマンスも上がらないままになってしまうケースがめっちゃ多いってことですな。

 

さらに、健康面でもこの違いは重要で、研究チームはこんなポイントを指摘しておられます。

 

  • 高負荷の運動は、たしかに寿命延長効果が大きい!

  • しかし、高負荷の運動はケガのリスクも高くなる!

  • それゆえに、強度のバランスをどうとるかがカギだ!

 

健康のためには高負荷の運動は欠かせないものの、それだけリスクも高いのでバランスが大事ってことですな。なので、「とにかく運動すればいい」ではなく、「どの強度で、どれだけやるか」を見極めることが、健康にもパフォーマンスにも欠かせないわけです。そこで今回のコンセンサスは、めっちゃ役に立つわけっすね。そもそも運動の世界に“共通語”を導入するってのは、まことにありがたいことですからね。ということで、自分の運動負荷にお悩みの方は、ぜひご利用ください。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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