「悩みを解決したいときは、他人の視点で考えてみよう!」の正しさが実験でも確認される
「悩みを解決したいときは、他人の視点で考えてみよう!」なんてアドバイスをよく聞きますが、その効果を検証したおもしろい論文(1)が出ておりました。
これはウォータールー大のイゴール・グロスマンの実験で、「他人へのアドバイスは的確なのに、自分のことになるとつい間違った判断をしちゃう」って現象について調べたもの。
この研究は、人間関係について正しい判断をしたいときに起きる、新しいバイアスの存在を初めて実証した。深い知恵を持ちながらも、私事に関しては失敗することが多かったソロモン王にちなんで、このバイアスを「ソロモンのパラドックス」と呼ぼう。
とのことで、具体的には、まず被験者に以下の2パターンのシナリオを想像してもらったんですね。
- 自分の身に対人トラブルが起きたシーン
- 友人の身に対人トラブルが起きたシーン
その後、全員にアンケートを取りまして、
- 全体の状況に対する知識の限界を把握できているか?
- 妥協できるポイントは認識できているか?
- 多様な落としどころを想像できるか?
といった能力に違いが出るかを見てみたわけです。すると、友人の身に起きたトラブルを想像したグループのほうが、あきらかに冷静で総合的な判断をする確率が高くなっていたとか。この現象は年齢を問わずに起きるそうで、20〜40代と60〜80代の被験者をくらべても、やはり同じような結果が見られたそうな。
これは、他人の視点を使うことで「問題が人ごとになる」って効果もあるんでしょうが、「自分を壁に止まったハエだと考えると怒りが消える」と同じように、メタ認知が起動するって側面もデカそう。認知療法で使われる「脱フュージョンテクニック」も、自分を第三者の立場に置くのがポイントでしたしね。
研究者いわく、
他人に向けて話しかける様子を想像するだけで、対人トラブルにまつわるバイアスを簡単に消せることがわかった。この方法を使えば、私たちはより賢明に問題を対処できるだろう。
とのこと。具体的には、頭のなかで自分の名前を呼びながら、他人の視点から自分にアドバイスをしてみるといいらしい。ややマヌケな姿ですが、確かに効果はありそうな感じがしますな。
credit: Purple Sherbet Photography via FindCC