勉強したことを確実に頭に定着させる「過剰学習」テクニック
過剰学習の本当の効果とは?
「勉強したことを確実に頭に定着させる方法」について調べたおもしろい論文(1)が出ておりました。
これはブラウン大学の研究で、183人の男女を対象にしたもの。全員に画像のパターンを覚える記憶トレーニングをしてもらい、「過剰学習」の効果を調べたんですね。
過剰学習ってなに?
過剰学習ってのは、自分「これ以上やっても変わらないな…」と思ったところから、さらに20〜30分ほど同じトレーニングをくり返す方法のこと。たとえば英単語の勉強だったら、
- 単語を10個おぼえる作業をくり返す
- 「明日になったら忘れるかもだけど、とりあえず今日は完璧に覚えたな」ってとこまでやる
- そこから、さらに20分ぐらい同じように単語を記憶していく
みたいな感じです。「もう十分」と思ってから、さらに同じ学習を続けるのがポイント。
20分の過剰学習でスキルの定着度があがった
で、今回の実験では、まずは8回の記憶トレーニングをしたうえで、参加者を2つのグループにわけたんですね。
- 20分の過剰学習を行なう
- なにもしない
そこから全員30分の休憩をはさみ、似たような記憶トレーニングさらに8回実行。次の日に記憶テストを行ったところ、こんな結果が出たんですな。
- 過剰学習を行ったグループは、1番めのトレーニングの成績が格段にアップした
- 過剰学習を行わなかったグループは、2番めのトレーニングの成績だけが良く、1番めの成績はズタボロだった
- ただし、過剰学習を行ったグループは、2番めのトレーニングの成績が少しだけ低下していた
つまり、過剰学習をはさまずに似たような学習を行うと、最初に学んだことが定着しないわけですな。英単語の勉強をしてからすぐに文法の学習をすると、せっかく覚えたはずの単語を忘れてしまうようなイメージですね。
過剰学習で脳のモードが切り替わる
こういった現象が起きるのは脳のメカニズムが原因でして、
- 新しいスキルを学ぶと、脳が「学習モード」に切り替わる
- 「学習モード」のまま別のスキルを練習すると、先に学んだ情報が後から入ってきた情報に上書きされてしまう
- 最初に覚えたことを忘れる!
って流れになってるみたい。勉強のおかげで脳が柔軟になったのはいいんだけど、そのせいで後から入る情報に干渉されやすくなっちゃうわけですね。これはわかるなぁ。
ところが、ここに過剰学習をはさみこむと、
- 新しいスキルを学んだおかげで脳が「学習モード」に
- いったん過剰学習を行うと脳が「定着モード」に切り替わる
- 最初の情報が温存される
- 新しいスキルが定着!
といった感じになるんだそうな。ただし、定着モードに切り替わった脳は、後から入ってきた情報をブロックしがちになるんで、2番めに学んだスキルの定着率はやや下がっちゃうみたい。なるほどねぇ。
現実的に過剰学習をどう使うか?
その点では過剰学習にも弱点はあるわけですが、この実験では、1番めと2番めのトレーニングの間に3時間半のブレイクをはさめば問題はクリアされるとのこと。具体的には、
- 英単語を「もう十分」ってとこまで覚える
- そこから、さらに20分の過剰学習
- 3時間半の休憩。またはまったく別の学習をする(数学とか)
って感じで組み立てていくと、英単語の定着率があがるのかなーという。
研究者いわく、
なにか大事なことを学びたいときは、おそらく過剰学習が使えるだろう。過剰学習をすれば、学んだことを忘れずにすむ確率がアップする可能性が高い。
とのこと。この実験は「視覚トレーニング」しか調べてないんで、どこまで一般化できるかは不明ですが、楽器やスポーツの練習なんかにも転用できそうではあります。個人的にも「過剰学習」の考え方は試してみようと思います。