健康な食事を続けるには1年でどれだけコストがかかるのか?問題
パレオダイエットはどれだけコスト増につながる?
「パレオダイエットの教科書」では「加工食品を減らそうぜ!」を暮らしの最優先事項にしてるわけですが、そこでわりと言われるのが「お金がかかりそう…」って感想だったりします。
現代でコストが低い食品といえば、小麦を使った精製穀物がほとんどなのに、高価な野菜や肉を増やせばエンゲル係数が高くなるばかりではないのか、と。まことにごもっともな指摘かと思います。
健康的な食事ほどコストがかさむのは当然の話。こればかりはどうにもならないポイントですけど、具体的にどれだけ金がかかるもんなんでしょうか?
不健康食と超健康食のコストの差をくらべたら…
ってことでまず参考になるのが、リード大学から2014年に出た論文(1)であります。
これは35,000人の女性にアンケートを行った調査で、普段の支出と食事のクオリティの関係をチェックしたもの。そのうえで、研究者は典型的な食事のパターンを6つに分類したんですね。
1.粗食グループ:食事のバラエティがとぼしくて栄養価の低いパターン。パンと牛乳がメインで、あとはイモと肉を少し食べるぐらい。
2.ジャンクフードグループ:パン、肉、お菓子、高脂肪食がメインで、野菜やフルーツは少なめ。
3.低栄養グループ:わりとバランス良く食べるんだけど、食事の絶対量が少ないせいで栄養不足になってるタイプ。
4.プチベジタリアングループ:全粒粉のパン・野菜・フルーツをメインに食べ、卵・肉・魚の消費量が少ない。食品の質は高いんだけど、全体の量が少ないので1日に必要な栄養量に達してないタイプ。
5.伝統食グループ:イギリスの定番食。パスタとライスが主食で、高脂肪な食品、卵、肉、魚などをよく食べる。野菜とフルーツはそこそこ。栄養は足りてるんだけど、脂肪と加工食品がちょい多めなタイプ。
6.健康食グループ:野菜とフルーツが多く、質が高い肉と魚をそこそこ。炭水化物は全粒粉の商品がメインで、加工食品はほぼ削減。
これはイギリスの調査ですが、日本でもそれなりに当てはまりそうな感じっすね。
不健康から超健康に切り替えると年間23万増
で、すべての食事パターンを食品コストのデータベースとくらべて大きな見積もりを出したところ、
- もっとも栄養が足りない粗食グループのコストは1日626円ぐらい
- いっぽうで健康食グループのコストは1日1,263円ぐらい
って結果だったんですな。栄養レベルが低い状態から改善を目指すと、1日の食費が倍になっちゃう計算であります。1年に直すとだいたい23万円ぐらいの差。
もっとも、これは物価が高めなイギリスの調査ですし、あくまで「特定の食事パターンをすべてまとめた場合」の数値ですからね。たいていの人は一気にライフスタイルを変えたりはしないでしょうから、もっとゆるく健康な食品に切り替えた場合(加工肉を普通の肉に変えるとか)はどうなるのかなーってあたりが気になるとこです。
普通に健康になるためなら1日169円でOK
実はそのへんを調べてくれた研究もありまして、2013年に質の高いメタ分析が出ております(2)。
これはハーバード大学が行った調査で、過去に出た27件のデータをまとめたもの。日本をふくむ10カ国の研究を分析して、「健康になるためのコスト」について大きな結論を出したんですね。
その結果をざっくり言えば、
- 健康な食事のために必要なコストの増加分は1日169円!(1日2,000kcalの場合)
だったんですね。ここでいう「健康な食事」ってのは、普通の野菜とフルーツが多めで、肉と魚をそこそこ食べ、加工食品はあんま食べないというイメージです。結構パレオダイエットに近いですね。
これを1年あたりの出費に直すと、だいたい6万円ちょっとぐらい。だいぶ手頃な価格に落ち着いてきましたねー。
ヒトの体は最高の投資物件だ!
そんなわけで、健康な食事を目指すなら、おおまかに年間6万〜23万増ぐらいの幅で考えればいいんじゃないでしょうか。年に10万円の支出増と聞くとビビるかもですが、個人的には「それぐらい投資してもいいんじゃないですか?」ってのが正直なところです。
なんといっても、ヒトの体は食事を変えれば間違いなく良い変化が出ますし、そのおかげで確実に生産性もアップするわけです。これだけハッキリしたリターンが見込める物件はなかなかないんじゃないかと。
わたしの場合、パレオダイエットを始めてからの追加コストは計算してないんですけど、家計簿からざっくり推測すると、不健康な食事をしていたときより年間で30〜40万円は増えてるような印象であります。
ただし、これはバカみたいに高価なグラスフェッド肉とかムダな健康食品とかを買ってみた失敗の歴史も加算されてますんで、実際は上で紹介したメタ分析の金額ぐらいに落ち着くのではないかと。みなさまは、ぜひわたしの失敗例を参考に、屍を超えていっていただければと思います(笑)