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「汝自身を知れ!」は21世紀の成功に必要な人生スキルだ!という話

Th friend

 

インサイト」って本を読みました。著者のターシャ・ユーリックさんは有名な組織心理学の先生で、ずーっと「自己省察」の問題を調べてる人。

 

 

自己省察ってのは「自分をどれぐらい知ってるか?」のことで、本書の主張もシンプルに「汝自身を知れ!」って感じになっております。

 

 

というと、「自分のことはわかってるんだけどねぇ……」と思う人も多そうですが(わたしもそうです)、博士のリサーチによれば、

 

95%の人は「自分のことを理解している」と考えている。しかし、実際の理解度は10〜15%のあいだにすぎない。わたしたちのアセスメント能力には欠陥があり、自分のパフォーマンスや能力も正確に把握することができない。リーダーシップの技術、学校の成績、仕事の生産性などを計測するのが大の苦手なのだ。

 

ってことでなかなか大変なことになっております。実験の参加者に「自分をどう思ってるか」を尋ねて、それを第三者の意見と照らし合わせると、だいたいこれぐらいの数字に落ち着くらしい。

 

 

ここでいう「汝自身を知れ」の内容は、

 

  • わたしは人生で何が欲しいかわかっている
  • どのように行動すべきかについて明確な指針を持っている

 

みたいなやつです。どんぐらい自分の方向性や能力を客観的につかめてるか?ってことですね。

 

これは21世紀に必要なメタスキルだ。今日の世界に欠かせない能力だ。

 

とのことで、自己省察にすぐれた人は、実際に仕事で成功する確率が高く、人生の満足度も高い傾向があるんだそうな。

 

 

正直、「自己省察」がどれぐらい欠かせないスキルなのか?ってところははまだよくわからんのですが、過去の研究でも自分を正確に知る人ほど人生の満足度が高くて仕事もできる!って結果は出てまして、押さえとくと良さそうな考え方ではないかと。

 

 

いっぽうで人間が「汝自身を知る」のが超ニガテなのも間違いなく、ドライバーの半分以上は「自分は他人より運転がうまい」と思ってるのは有名な話でしょう。暴力事件を起こした犯罪者を対象にした実験(1)でも、ほとんどが「自分は他人よりも親切で信頼がおける人間だ」と答えたそうで、実に切ないことになっております。

 

 

では、「汝自身を知る」ためにはどうすればいいのか?ってのが本書のお題。いろいろと使えそうなテクニックが出てるんですが、個人的によかったものをいくつかまとめときます。

 

 

1 WhyではなくWhatで自問する

博士いわく、人間はバイアスにまみれた生き物なので、いくら「自分とはどんな人間なのだ?」と考えても時間のムダ。

 

内省で自分を理解できると思うのは間違いだ。いくら自分を深く分析したつもりになっても、本当にあなたを理解したことにはならない。これは、私たちがいっときの感情によって自分の性質を判断してしまう生き物だからだ。

 

気分がいいときは「自分はできる人間だ」と思いがちだし、落ち込んだときは「ダメな人間だ」と判断しやすいので、いくら自己分析をしてみたところで間違う可能性が高いよーって話です。そりゃそうかもですな。

 

 

その代わりにオススメされているのが、「なぜ?」じゃなくて「なに?」で聞いてみる方法。たとえば、

 

  • 「わたしはなぜこの仕事が嫌いなのか?」ではなく「わたしはこの仕事のなにが嫌いなのか?」と自問する
  • 「なぜパートナーとうまくいかないのか?」ではなく「パートナーとの不和をもたらす原因はなにか?」と自問する

 

みたいな感じです。

 

「なぜ?」という質問はネガティブな感情をかきたてる作用があるが、「なに?」という質問は私たちに好奇心をあたえてくれる。「なぜ?」は私たちを過去に閉じ込め、「なに?」は私たちによりよい未来に導く。「なぜ?」から「なに?」への切り替えは、被害者意識から成長志向への切り替えなのだ。

 

とのことで、「なに?」と聞いてみると問題の具体的な解決策に目が向かうので、自然と思考が前向きになっていくんだ、と。これはわかるなぁ。

 

 

2 ゴールを決める

 

ゴールを決めるのは目標設定の基本ですが、実は自分を知るのにも役立つんだそうな。博士いわく、

 

ある実験では、被験者は3ヶ月のコーチングプログラムに参加した。その内容は、明確なゴールを決め、そこまでの進捗を計測するというものだ。

 

すると、このプログラムは被験者の目標達成に役立っただけでなく、ムダな内省の時間が減り、より自分を客観的に把握できるようになったのだ。

 

とのこと。「自分にとってはこれが大事なのだ!」って目標をハッキリ決めて行動するうちに、やがてその目標が自分を形作っていくってことらしい。自分を知るというよりは、目標に自らを合わせていった結果、自己理解が深まるってことですな。

 

 

3 データ!データ!データ!

いろいろ考えるのはムダなので、とりあえずは客観的なデータを取ってみるのが吉。ここでベストなのは、やっぱり「他人に尋ねてみる」ことだそうな。

 

他人のほうが私たちをより客観的に見ているのは間違いない。心理学者のティモシー・スミスは、300組のカップルを対処にした実験で、パートナーの怒りっぽさや敵対心などのレベルを調べた。これらは、いずれも心疾患の大きなリスク要因だ。

 

すると、自分の性格を自己判断したときよりも、パートナーが採点したときのほうが正確に病気の発症を予測できていた。

 

ここらへんは昔からよく言われる話で、「自分の性格と寿命は友人に聞いたほうが正しくわかる」なんてデータもあるほどですからねぇ。結局は「オレってどんな人間かなぁ?」と聞いてみるのがベストなんでしょう(あんまやりすぎるとウザがられそうですが)。

 

 

また、自分でやってみたいときは、ポール・ドーランがすすめる「一日再構成法」に似たような記録法もオススメされておりました。こちらも合わせて使ってみると正確な自己分析がはかどるのではないかと思われます。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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