「ムカついたら10まで数を数えよう!」みたいな心理テクってどれぐらい効果があるの?
「10までゆっくり数えて気持ちを落ち着かせよう!」みたいなアドバイスをよく聞くじゃないですか。イラッとしたときには、とっさに数を数えると感情をコントロールできるようになるよー、という。
いかにも効きそうなテクニックではあるものの、あくまでこれは体験談がベース。これまではまともに検証が行われたことはなかったんですが、最近になって「10まで数えたら本当にメンタルはコントロールできるか?」を調べる研究(1)が出ておりました。ありそうでなかった実験ですばらしいですねー。
これはニューヨーク州立大学の研究で、312人の学生を2つのグループにわけております。
- 精神が疲労するタスクを行う:「シロクマについて考えないでください」と指示されたうえで、自分がリアルタイムに何を考えたか?やどんなイメージが心に浮かんだか?を文章に書き起こしていく
- そこまで精神が疲れないタスクを行う:簡単な計算問題を解く
「シロクマ」についてはご存じの方も多いでしょうが、かの有名なウェグナーの「シロクマのリバウンド効果」を採用しております。「シロクマについて考えるな」と言われるほどシロクマのことが頭に浮かんじゃって、精神のタンクが削られていくって現象ですな。
続けて、すべての参加者に「子供ころに好きだったテレビは?」と尋ねてエッセイを書くように指示。この内容を研究者が採点したんですが、エッセイの出来にかかわらずボロクソの評価をつけたんだそうな。たとえば、
このエッセイは、私が人生で読んだなかでも最悪だ。これほどの駄文を書けるのはよほどの愚か者だけだろう。こんな文章を書いた人物が大学に入れたとは信じられない。
みたいな感じ。いやー、これはヘコみますな。
そこから、さらに参加者には「ヒドいコメントをした相手に復讐できる権利」をあたえたんだそうな。具体的には「自分をけなした相手に騒音を浴びせる時間を自由に決められる」というものでして、当然、長い時間を設定するほど参加者は怒りが大きいと考えられるわけです。
が、ここで再び参加者を2つにわけまして、
- すぐに復讐の時間を決めてもらう
- 10を数えてから復讐の時間を決めてもらう
って感じでどんな違いが出たのかをみております。
では、以上の手順でなにがわかったかと言いますと、
- 精神が疲れている参加者ほど、復讐時間を長く設定しがち(ただし統計的には有意ではない)
- 事前に「相手に復讐をすると、やり返される場合もあります」と伝えられた場合は、10を数えることで怒りの反応が減った(だいたい45%ぐらい)
- 事前に「相手に復讐をしても、やり返されません」と伝えられた場合は、10を数えることで怒りの反応が逆にアップした(だいたい30%ぐらい)
だったそうな。うーん、おもしろい。
この結果をざっくりまとめれば、
- 「怒ると問題がある場面」(怒鳴ったら商談が成立しなくなる!とか)では、10を数えたほうが気持ちが落ち着く=時間をかけたおかげで結果を冷静に考えられるから
- 「怒っても問題ない場面」(あきらかに相手が間違ってるときとか)では、10を数えると火に油が注がれてしまう=時間をかけたぶんだけ怒りの原因を反すうしてしまうから
ってことになりましょう。つまり「怒ったら10まで数えよう!」ってアドバイスは、シチュエーションによって効果が変わるわけですな。
まぁ日常的には怒ると問題が起きるケースの方が多いでしょうから、基本的には使ってみるのも吉。ただし副作用もあるってのは心にとめておきたいですな。