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今週末の小ネタ:幸せな若者ほど金持ちに?、頭がいい人は神を信じない?、辛い体験が続くとドーパミンが出にくくなる

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ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。   

  

 

 

 幸せな若者ほど金持ちになるのでは?説

若い頃の幸福度が成人後の裕福さを左右するかも?」みたいなデータ(R)が出ておりました。

 

 

これはアメリカで暮らす約15,000人の男女を対象にした観察研究で、若い頃の幸福度や人生の満足度をチェックしたうえで、後年になってからの裕福さとくらべたものです。その結論をダラダラと並べてみると、

 

  • 基本的に、若いころに幸福度が高い人は成人後の収入が多い傾向があった
  • 具体的には、22歳の時点で「人生の満足度」が5点満点のスケールで1ポイント上がると、29歳の時点で年収が$2,000ほど高い
  • たとえ同じ家庭で育った場合でも、幸福な若者の方が成人後に収入が多かった

 

みたいな感じです。まぁこれだと因果関係はわからないんですけど、いちおう幸福な人ほど学校の成績がよく、高給な仕事につき、同僚よりも早く昇進する傾向もあったんだそうで、「やっぱ幸福が高収入につながるのかなー」って気もするわけです。

 

 

研究チームいわく、

 

おそらく今回の研究において最も大切なのは、一般の人々(特に子育て中の親)にとって、子供と青少年の感情的な幸福が将来の成功の鍵だという点だ。これもまた、私たちが幸福な家庭を構築すべき理由のひとつだろう。

 

ってことで、ショーン・エイカーさんが提唱する「成功するから幸せになるのではない!幸せだから成功するのだ!」みたいな考え方に近いっすね。私の場合は子供時代にあんま良い思い出がないのでアレなんですが。

 

 

 

頭がいい人は神を信じない?問題

宗教と知性には負の相関があるぞ!」ってな興味深いデータ(R)も出ておりました。

 

 

これはロチェスター大学などの研究で、「宗教と知性」について調べた先行研究から63件をまとめたもの。だいたい110,000人分のデータを処理したメタ分析になっていて、その結果がどうだったと言いますと、

 

  • 53件が信心深さと知性の負の相関を示した
  • 10件は信心深さと知性の正の相関を示した
  • 神を信じない人ほど分析的にものごとを考える傾向があった

 

みたいになってて、すごーくざっくり言えば「頭がいい人ほど無信心になる」みたいな傾向が見られたそうな。

 

 

もっとも、その数値はかなり小さくて「r =−.20 〜 −.25」ぐらいの範囲なんで、そこらへんはご注意ください。簡単に言うと、

 

  • 知性が高ければ宗教は不要になる傾向はある
  • だからといって、信心深いから知性が低いとは言えない

 

ぐらいの感じだとお考えいただければ。この結果はおそらく、「信心深い人」と「無信心な人」の思考スタイルの差を反映しているだけで、認知機能の優劣とはあんま関係ないんじゃないかなーと思っております。

 

 

また、これはキリスト教のデータしか扱ってないので、仏教徒の場合はまた違う結果が出るかも(というか、仏教の宗派内でも違いが出そう)。そのへんもご注意くださいませ。

 

 

辛い体験が続くとドーパミンが出にくくなるかも

ドーパミンといえば、人間のモチベーションを司る重要な脳内物質。こいつが枯渇すればやる気も出にくくなっちゃうわけですが、新たに「逆境でドーパミンが出にくくなるのでは?」と示唆する嫌なデータ(R)が出ておりました。

 

 

具体的には34人の男女を対象にしたもので、そのうち半分は「長年にわたって心理的なストレスを受けてきた人」で、残り半分は「心理的なストレスが少ない人」を選んだそうな。ここで言うストレスってのは、悪い家庭環境で育ってきたり、人間関係がうまくいってなかったりとか、そんな感じです。

 

 

で、具体的にこれがどんな実験だったかと言うと、

 

  1. みんなに暗算を指示して心理的にストレスを与える
  2. 全員の脳を調べて、ストレス下でどれぐらいドーパミンが出てるかをチェック

 

みたいになってます。すると、「長年にわたって心理的なストレスを受けてきた人」ほどドーパミンの量が少なく、うまくストレスを処理できなくなってたんだそうな。

 

 

ちなみに、「長年にわたって心理的なストレスを受けてきた人」はコルチゾール(ストレスホルモン)や血圧の変化もほとんど起きなかったそうで、どうやらストレスに対してうまく体が反応してくれない状態になってたみたい。これは辛い……。

 

 

研究チームいわく、

 

小児期に社会的なストレスを何度もさらされることで、低ドーパミン作用または非ドーパミン作用による精神疾患のリスクが高まる可能性があるのかもしれない。

 

とのこと。もちろん横断研究なんで明確なことは何もいえないんだけど、「慢性的なストレスでドーパミンが出にくくなっちゃうのかも?」ってあたりは知っといても良さそうであります。また、合わせて「やる気ホルモン「ドーパミン」を増やす方法17選」などもご参照いただくとよいのではないかと。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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