今週なかばの小ネタ:悪夢の効用、「安全シグナル」で不安減少、アナログゲームの脳トレ効果
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ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
悪夢は現実の危険に対するトレーニングなのだ!説
「悪夢にもメリットがある!」というおもしろ論文(R)が出ておりました。これは89人の参加者を対象にした研究でして、ざっくりした実験の内容をまとめておくと、
- みんなに1週間だけ夢日記をつけるようにお願いする
- その後、みんなに「怖い画像」(誰かが銃で撃たれそうになってるとことか)や「普通の画像」(街中の様子とか)を見せつつ、脳の反応をスキャンする
みたいになってます。これにより、夢の内容と恐怖の反応に相関があるかどうかを調べることができたわけっすね。
そこでどんな傾向が見られたかと言いますと、
その結果、悪夢を見て恐怖を感じる時間が長かった人ほど、ネガティブな写真を見ても帯状回や扁桃体の活性が少ないことがわかった。
さらに、内側前頭前野が活性すると扁桃体の恐怖反応が減ることが知られているが、この反応も恐ろしい夢の数に比例して増加した。
とのことで、要するに「悪夢を見れば見るほど現実の恐怖に強くなる!」ってことですな。従来は「人間の夢なんてなんの意味もない」とか言われてたもんですが、意外と現実の感情コントロールにも役立ってるのかもですね。
夢は私たちの未来に起きる出来事に対するトレーニングになっているのかもしれない。つまり、私たちが現実の危険に直面する際の心構えを用意しているの可能性があるわけだ。
というわけで、そう考えると悪夢も使いようなんでしょうなぁ。
「安全シグナル」で不安が減るかも!みたいな話
このブログではかねてから複数の不安対策を取り上げてますが、新たに「”安全シグナル"が結構効くよ〜」みたいなデータ(R)が出ておりました。これはヒトとマウスの両方を対象にした研究で、すごーくざっくりと実験デザインをまとめておくと、
- 特定の形を見せつつ恐怖を引き起こす音楽を流して、形と恐怖を結びつける(三角を見ながら映画「ハロウィーン」のテーマを聞きまくるとか)
- 恐怖をそそるシグナルを提示した後で、脅威を感じない形や音(安全シグナル)を見せてどんな反応が起きるかを調べる
みたいな感じです。ご存じのとおり、脳は関係ないものと恐怖心を結びつけちゃうものなんですが(「子供のころ犬に噛まれたせいで、どんな動物を見ても身がすくんじゃうようになった」とか)、これに「あきらかに脅威を感じないもの」(安全シグナル)をぶつけたらどうなるのか?ってことですね。
すると、結果は研究チームの読みどおりで、
- 安全シグナルをぶつけたら、恐怖や不安の反応がかなりやわらぐ
- 脳スキャンのデータでも、安全シグナルが不安に対処できる神経回路が活性化する
とのこと。脅威がないものを見るだけでも、恐怖や不安の反応はすぐに減るんじゃないの?ってことらしい。
研究チームいわく、
安全シグナルは、音楽や人物、さらにはぬいぐるみのように、脅威がないことを示すものであればどんなものでも良い。
とのこと。要は「なんか不安に襲われたら、なんでもいいから自分が『これは安全だ』と思うものに触れろ」ってことでして、結局のところ非常に普通のアドバイスではありますが、いざというときのために覚えておくといいかもしれません。
非デジタル系ゲームが高齢者の脳機能を防ぐかも
ゲームは良くない!と言われたのは昔の話で、近ごろは「テレビゲームで頭が良くなるかも?」みたいな見解もあったりはします。まぁ個人的にはテレビゲームへの取り組み方によって脳機能への影響が変わる気もしてますが、とにかくゲームが全面的に悪いわけじゃないのは確実でしょう。で、新しいデータ(R)では、「歳を取ってからのアナログ系ゲームは脳に良い!」って結論になってまして、ちょっとおもしろい感じでした。
これはスコットランドに住む70歳代の1,091人を対象にしてまして、全員を3年に1回の割合で調査。どのくらいの頻度でチェス、カード、ビンゴ、クロスワードなどのゲームをしているかを尋ね他んだそうな。
それで何がわかったかと言いますと、
- 日常的にアナログなゲームで遊んでいる人は、歳を取っても記憶力、問題解決能力、一般的な思考能力が衰えにくかった!
だったそうです。チェスにせよカードゲームにせよ認知機能をよく使いますんで、納得の結果ではないでしょうか?
研究チームいわく、
今回の最新の知見は、人生の中でより多くの活動に従事することが、高齢者の思考能力が保たれる可能性を示している。
70歳以上の人にとって、デジタル以外のゲームは認知力の低下を軽減するポジティブな効果を持ち得るようだ。
とのこと。まぁデータを見るとそこまで大きな差でもないんですけど、ゲームは社交ツールにもなりますんで、やっといて損はなさげです。