コミュニケーションで「相手の好みに合わせるぞ!」と思うと爆死するぞ!みたいな実験の話
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ちょい前に「自分の素を出したほうが好かれるぞー」みたいな話を書いたわけですが、また新たに「相手に合わせるな!素でいくんだ!」みたいなデータ(R)が出ておりました。主筆は「イヤなやつほど仕事がデキる」のフランチェスカ・ジーノさんで、ハーバードの有名な先生っすね。
で、これはいくつかの実験にわかれてるんですが、まずポイントとしては、
- ほとんどの人は「相手に合わせるのが成功のカギだ!」と思っている
ってのがあります。
これはひとつめの調査から出てきた話で、約450人の男女に「理想の職場に入るための面接をしてるシーンや、自分のビジネスアイデアを投資家に売り込んでるシーンを想像してね!」と頼んだところ、全体の7割が「大事な場面では相手の好みに合わせるのがベストだ!」と考えてたそうな。まぁライターの世界でも「読者の期待を読み取ってそれに合わせろ!」みたいなアドバイスはよく聞きますし、ごく普通の考え方だとは言えましょう。
では、「実際にこの戦略は正しいのか?」ってことで、ふたつめの実験では166人の起業家を集めてこんな実験をしてます。
- 3人の投資家に対して自分のビジネスアイデアをプレゼンしてもらう
- プレゼン後に参加者へインタビューを行い、審査を突破した人と落選した人は何が違うのかをチェックする
すると結果は明白で、
- 審査員の期待や好みに合わせずに、自分が好きなようにプレゼンした方が、勝ち抜く確率が300%も高かった!
だったそうです。まぁこの研究でセミファイナリストに進んだのは10人ですし、全体的にはそんな大規模な調査でもないので300%って数値をどこまで信じるかはムズいんですけど、なんかすごい結果になってますね。
でもって、チームはまた別の実験もやってまして、今度は「就職面接の自己アピールではどう振る舞うべきか?」って問題も検証してます。こちらは379人の男女を対象にしていて、みんなに「あなたが就職したい会社に向けたアピール動画を撮影してください」と指示。みんなに3分程度の自己アピール動画を作ってもらったんですが、その際に全体を3つのグループに分けてます。
- 「動画を評価する人の期待や興味に合いそうなことをアピールしてね!」と指示する
- 「素の自分をアピールするつもりでしゃべってね!」と指示する
- 「動画は人事採用の専門家によって採点されます」と事実だけを伝える
そのうえで、人事の知識を持つ第三者に動画を見せたら、結果はこんな感じになりました。
- 素の自分をアピールするつもりで動画を撮ったグループは、相手に合わせたグループよりも採用率が26%高かった!
- 事実だけを伝えられたグループは、相手に合わせたグループよりも採用率が15%高かったが、素の自分をアピールしたグループよりは9%低かった
つまり、「相手に合わせるぞ!」と考えたグループはもっとも成績が低かったわけですな。おもしろいもんです。
こういった現象が起きる理由はまだハッキリしてるわけじゃないんですけど、現時点でありそうなメカニズムとしては、
- 相手に合わせようとすると、「相手の好みは?」や「相手の興味は?」や「自分の好みを隠さねば!」みたいな雑念がわきまくるので、そのせいで脳の認知リソースが無駄に消費されてしまい、結果としてプレゼンのパフォーマンスが低下する
- 結局のところ他人の内面なんてわかりようがないので、いくら相手に合わせようと思っても無理が出てしまう。そのせいで、つねに「いまの自分は相手の意図を正確に判断できているか?」と心配になり、その不安が相手にも伝染する
といったあたりが考えられております。「相手に合わせるぞ!」と思いすぎたせで緊張が高まり、そのせいでなんとなくギコちない印象になったせいで会話全体がギクシャクしちゃうのはよくある話っすね。これはすべてのコミュニケーションに当てはまる話なので、覚えておくとよさげ。
まぁビッグファイブで協調性が高すぎるような人は、つい相手に合わせようとしがちなんで、コミュニケーションの前は「素で行くぞ!」と心がけておくといいかもしんないっすねー。