無関係な”おもしろさ”は勉強の成果を下げる!から注意しようねーというメタ分析の話
https://yuchrszk.blogspot.com/2020/04/blog-post_10.html?m=0
「無関係な”おもしろさ”は勉強の成果を下げる!」ってなメタ分析(R)が出ておりました。
ここでいう「無関係なおもしろさ」ってのは「勉強の内容とは関係ないけど楽しげなもの」のことで、専門的には「誘引性付加物(Seductive Details)」などと呼ばれてたりします。この訳語だとわけがわからないので、いくつか実際の例を挙げてみると、
- 「過去のインターネット環境はどんなもんだったか?」を伝える授業で、その当時に人気があった映画スターの写真を学生に見せる
- 子供用の学習テキストに、アニメ調のキャラが楽しそうに勉強してるイラストを添える
- 「雷はどのように発生するか?」を説明したテキストに、雷に打たれたサッカー選手のユニフォームの写真を掲載
- 数学の説明動画に、楽しげなBGMをあしらう
みたいな感じです。どれも一瞬だけ「おっ、楽しそう」と思わせるものの、実際の学習内容とは関係ないのがポイントであります。
このようなやり方に効果があるのか?ってのは昔からよく議論されていて、
- 賛成派:無関係なものでもとにかく学生の興味を引くのが大事なのだ!
- 反対派:学習そのものをおもしろくするように努力する方が大事だ!
といったあたりで賛否両論がわかれてたりします。どんなもんなでしょうなぁ?
というわけで、この研究では「誘引性付加物」に関する先行研究から58件を抜き出し、7,500人以上の学生を対象にしたデータをチェック。果たして「無関係なおもしろさ」は役に立つのか?ってとこをガッツリ調べてくれたんですね。全体的にデータの質はまぁまぁって感じですが、その結論は参考になるんじゃないしょうか。
で、結論はこんな感じです。
- 誘引性付加物を使って授業をすると、そうでない授業を受けた生徒よりも成績が下がる!
残念ながら、「ムダなおもしろさ」で生徒のモチベーションが上がることはなく、逆に学習には悪影響が出ちゃったらしい。悪影響のレベルはだいたい「小~中程度」ぐらいでして、それなりのレベルな感じっすね。
では、なんで「無関係なおもしろさ」が逆効果になるのかと言いますと、
- 認知的負荷が高まる:無関係な情報のせいでワーキングメモリがいっぱいいっぱいになり、本当に大事な情報を処理する余裕がなくなる
- スキーマの干渉:無関係な情報が割り込んでくるせいで、頭のなかに正しいメンタルモデルができなくなる(=知識の整理が邪魔される)
といったあたりが二大要因だと考えられております。要するに、無関係な情報で頭が混乱しちゃうわけですね。
といっても、これはあくまで「無関係なおもしろさ」の話でして、「関係あるおもしろさ」の場合は、勉強には大きなメリットがあるのでご注意ください。コンテンツそのものがおもしろいと学習のモチベーションが上がるってデータはいろいろありまして、
- 学習内容と関係がある限り……
といったあたりは間違いないところ。とにかく、「おもしろさと内容の一貫性が大事!」ってことでして、ここらへんはエンタメ作りの世界でもよく言われることっすね。どうぞよしなに〜。