目先の欲望を満たすのが苦手な人は、それはそれで幸福度が下がるから気をつけてね!みたいな話
「人生の幸福にはセルフコントロールが大事だ!」みたいな話はよく書いているところ。普通に考えれば、長期目標に向かってがんばれる人のほうが、目の前の欲望に負けちゃうひとよりも、長い目で見て幸せになりやすいのはわかりやすい話でしょう。
が、いっぽうでチューリッヒ大学などから出た新しいデータ(R)は、
- なかには目の前の欲望を満たすのが苦手な人もいるから気をつけて!
ってポイントが強調されてておもしろかったです。世の中にはセルフコントロールが苦手な人が多いように、目先の快楽をうまく楽しめない人が一定数存在し、そのせいで幸福度を下げている可能性があるというんですな。
研究チームいわく、
現在のセルフコントロール研究には再考の余地がある。
もちろんセルフコントロールは重要だが、快楽主義または短期的な喜びにも同じくらいの注意を払うべきだ。
とのこと。もちろん外国語を学んだり健康を目指すような長期目標はやりがいがあってすばらしいんだけど、時には目先の楽しみにふけることも同じぐらい大事なんじゃないか、と。
ってことでチームは、「快楽を追求する能力」の個人差をチェックするために、まずはオリジナルの尺度を開発してます。例えば、「短期的な快楽を追求する能力」が高い人の特徴をまとめた質問はこんな感じ。
- 私は自分がやりたいと思ったことをよく実行する
- いまここで自分の欲望に従うことができる
- ひまなときは、ちゃんとリラックスできる
でもって、快楽の追求が苦手な人の特徴をまとめた質問はこんな感じ。
- 仕事のことを考えていると、楽しい時間やイベントを楽しめなくなることがある
- 楽しい時間を過ごしていても、仕事のことを考えてしまうことが多い
- やらなければならないことを考えていると、その思考を止めることができない
こうして見ると、私は「快楽の追求が苦手な人の特徴」に結構あてはまってて嫌になっちゃいますね。生まれつきビビり症なんで、リゾートとかに行ってもつい「あの原稿やんなきゃ……」とか考えがちなんですよ(そうは言っても決してセルフコントロール能力が高いわけでもないのが辛いところですが……)。
続いて、チームはこの尺度で2つの調査を行い、「快楽能力が高い人と低い人はどっちの方が幸福感が高いの?」ってポイントをチェック。最初の研究ではWHOの幸福度調査を使い、2つ目の研究では生活満足度テストを使ったそうな。
でもって、これらのテストでどんなことがわかったかと言いますと、
- 快楽を追求する能力が高い人は、一般的な幸福度と人生の満足度の両方が高い傾向があった
- セルフコントロールの高さも幸福度と関係していたが、快楽を追求する能力のほうが影響はデカかった
- 快楽を追求する能力の高さは、うつ病や不安のようなメンタルの問題、めまいや失神などの身体的な問題の減少とも相関があった
だったそうです。うーん、なんかここらへんの話は身につまされるなぁ。
ちなみに、この研究ではさらに2つの実験を行なってまして、ざっくり結論だけまとめると以下のようになります。
- 快楽を追求する能力が高い人はリラックスがうまい
- 快楽を追求する能力が高い人は、日常的によりポジティブな経験をすることが多い
まぁ目先の欲望にふけれる人ってのは、言い換えればマインドフルな人とも表現できるので、なんか納得できるとこっすね。
研究者いわく、
自分にとっての快楽を本当に楽しむことは簡単そうに思えるが、実際には、困難を覚える人も少なくないようだ。
とはいえ、快楽主義的な目標と長期的な目標の追求は、互いに相反するものである必要はない。私たちの研究によれば、短期の快楽と長期のやりがいはどちらも重要であり、人生の幸福と健康を達成するためにお互いを補完し合うことができることがわかっている。
ハードワークをしつつ、自分自身を楽しむ。日常生活の中で適切なバランスを見つけることが重要だ。
とのこと。といっても、私のようについ仕事のことを考えちゃう人にはなかなか難しいんですが、この問題については、
- 目先の欲望にのめり込むための時間を、あらかじめスケジュール帳に書き込んでおこう!
みたいなアドバイスがされておりました。「この時間は何があってもゲームをするのだ!」とか「この1時間は絶対に漫画を読むのだ!」みたいに設定しておいたほうがいいよーってことっすね。私のように不安症のせいでリラックスが苦手な人は、お試しください。