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今週末の小ネタ:メンタルにめちゃくちゃ悪い「思い込み」、ナルシストは馬鹿にされたくないが馬鹿にするのは好き、激しいストレスを感じたら手を温めればいい?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。  

 

 

  

メンタルにめちゃくちゃ悪い「思い込み」トップ2

メンタルにヤバい信念はこれだ!」みたいなデータ(R)が出ておりました。ここでいう「信念」は「無(最高の状態) 」の「物語」と同じで、「私はダメ人間だ」「私は無価値で愛されない」「本当の私を知ったらみんながっかりだ」といったように、私たちの脳の奥底にこびりついて離れない自動的な思考を意味してます。いつもこんな思考が働いてたら、そりゃあメンタルに悪いのは当然ですよね。

 

 

で、この信念にはいろんなパターンがあるんですけど(くわしくは「無(最高の状態) 」を参照)、今回のデータは、そのなかでももっともメンタルへのダメージが大きいのはどれか?ってのを調べてくれております。

 

 

具体的には、過去の51研究から 17,830分の調査をまとめてくれてまして、ほとんどが横断的デザイン(縦断的デザインは2件のみ)。年齢は18.5歳から69.2歳だったそうな。

 

 

その結果、どんなことが分かったかと言いますと、

 

  • すべてのヤバい信念は、成人期に鬱病を発症する危険を高めることがわかった

 

  • が、なかでもダメージが大きいのは欠陥と孤立に関する信念で、鬱病の重症度が高い者ほど、「自分の居場所がない、なじまない、自分は欠陥がある、私は無能だと感じる」といった信念を持っていた

 

だったそうです。要するに、一番メンタルに悪いのは恥と孤立だってことでして、なかなか納得させられました。

 

 

いちおう言葉の意味を確認しておくと、

 

  • :自己に対してネガティブな評価を抱き、それが苦痛をともなう状況。恥は必ずしも不適応なものではなく、うまく使えば人間関係の変化に適応する態度を生み出す。ただし、慢性的に自分に恥を感じていると、めちゃくちゃメンタルに悪い。

 

  • 孤立:どのコミュニティにも所属せず、ずーっと居場所がないような感情にさいなまれている状態。社会に違和感を感じ、社会に溶け込めない感覚を生み出す。こちらも必ずしも不適応なものではないが、ずっと孤立を感じていると、めちゃくちゃメンタルに悪い。

 

みたいになります。どちらも社会的なつながりに関する状態でして、この2つが浮かび上がったのは個人的にも納得でした。ちなみに、恥の感情のおそろしさについては、「恥(シェイム)…生きづらさの根っこにあるもの 」がとても端的にまとまっているので、あわせてご参照ください。

 

 

ちなみに、この2つに問題を抱えた方でも、「スキーマ療法」に取り組めばどうにかなる可能性が指摘されてますんで、心当たりがある方は、専門家にかかるか「スキーマ療法ワークブック」などをお使いいただければ幸いです。

 

 

 

ナルシストは馬鹿にされたくないが馬鹿にするのは好き

ナルシストは他人からイジられたくないが、他人をイジるのは好きみたいよ」ってデータ(R)が出ておりました。これは尊大ナルシシズムと脆弱ナルシシズムの違いを調べたものなんですが、これら2つのナルシシズムは以前にも書いたので要点を再掲しておきますと、

 

  • 尊大ナルシシズム:俺はすごいのだ!他人より優れているのだ!と素で思ってるタイプのナルシスト。いわゆる一般的なイメージに近いナルシストですな。

 

  • 脆弱ナルシシズム:自分は好きなんだけど、自信がないせいでいつも不安なナルシスト。他人からの批判にめっぽう弱い。SNSを更新してポジティブな反応がないと落ち込んだりする人に多い。

 

って感じです。どっちも自己中なのは同じなんだけど、脆弱なナルシストは、尊大なナルシストよりも孤立する傾向が強く、不安、不信、パラノイアなどにハマりやすく、自尊心も低いケースが多め。なので、いつも自信満々なわりに他人からの攻撃には過剰に反応するようなタイプは、脆弱ナルシシズムである可能性が高いっすね。

 

 

で、ここでどんな研究をしたのかと言いますと、419名の学生を集めたうえで、みんなの過敏なナルシシズム度(「私は嘲笑や他人の軽蔑的な発言によって簡単に傷つく」みたいな文章に賛成するかどうかで判断)。そのうえで、他人とのコミュニケーションタイプを調べてみたんだそうな。

 

 

その後、すべてのデータをまとめてみたところ、結果は以下のようになりました。

 

  • 脆弱なナルシストは、笑われることへの恐怖がやたらと強く、そのくせ他人を笑うことの喜びが大きかった

 

  • 脆弱なナルシストは権利意識が強く、恥をかきやすく、拒絶に対して過敏で、社会的に引きこもることも多い

 

  • 脆弱なナルシストは、低い自尊心を守るために「社会からの孤立」と「相手への敵意」という2つの戦略を使うことが多い

 

ということで、脆弱ナルシシズムを持った人ってのは、笑いものにされることへの恐怖が強く、笑いものにされないために他人を笑いものにするか、相手を激しく攻撃するんだ、と。これは生きづらいパーソナリティですなぁ……。

 

 

要するに、脆弱ナルシシズムな人たちは、自分の恐怖が実現するのを防ぐために他人をディスってるわけでして、かわいそうでもあり、うまくつきあうのは難しそうでもあり……って感じですね。正直、脆弱なナルシストと付き合うのはメチャ難しいんですけど、もし上司がそのタイプだったりした場合は、「この人の根底には恐怖があるんだな……」とか考えてみると、少しは優しい気持ちになれるかもしれません。

 

 

 

激しいストレスを感じたら手を温めればいいんじゃないか説

身体的な温かさでストレスは減る!」みたいなデータ(R)が出ておりました。ここではいくつか実験が行われてますが、基本的なところは同じでして、

 

  1. 30〜31人の参加者に、温熱パック、木製ブロック、ゴム球、モコモコ球などをわたし、右手に6秒間ほど装着してもらう

  2. 3〜5分ほどの怖い映像を見てもらう(飛行機が落ちる映像らしい)
  3. みんなの恐怖反応をチェックする

 

みたいになります。すると、手を温めた場合にのみ良い反応がありまして、

 

  • 温熱パックを使うと、みんな恐怖反応が抑制された

 

って結果だったらしい。身体的な温かさってのは、人間の恐怖反応をやわらげてくれるかもしれないわけですね。

 

 

これはそこまで珍妙な現象でもなくて、だいたい以下のような理由があるからだと考えられております。

 

  1. 人間にとって、身体的な温かさは生存に欠かせない要素である(冷たくなったら死ぬんで)

  2. なかでも新生児(特に早産児)は、親などに体を温かくしてもらった方が生き残りやすい

  3. そのため、人間は「身体的な温かさ」と「社会的なつながり」を結びつけるようになっている(事実、身体の温かさと社会的な温かさは同じような神経生物学的な経路を共有している)

 

要するに、ヒトってのは、身体的な温かさの刺激を「安全のサイン」とみなすシステムが備わっているわけですね。そう考えると、風呂やホットマスクでリラックスできるってのは、このシステムを活性させてるのかもですな。

 

 

ということで、なんか怖いことや孤独にさいなまれたときは、とにかく手や頭などを温めてみるのもいいかもしれません。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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