世界で最も幸せな国デンマーク人の人生哲学「ヤンテの十戒」とは?
幸福度が高い国として、何度もトップに輝いているのがデンマーク。その原因には諸説あって、
- 所得が平等だからだ!
- 政府への信頼が厚いのだ!
- 個人の自由が保障されているからだ!
などと言われてるわけですが、セラピストのリンゼイ・デュプイ博士が、PsychCentral誌で「デンマーク人が幸福なのはヤンテの十戒のせいでは?」みたいな話を書いていて、おもしろかったです(R)。
「ヤンテの十戒」ってのは、作家のアクセル・サンデムーセが自作で対象した10カ条のルールで、もともとは「デンマーク人って、みんなこういう考え方をしてるよねー」という社会風刺の意味で作ったものらしい。
「ヤンテの十戒」は、具体的に以下の10項目で構成されてます。
- 自分を他人よりも特別だと思ってはいけない
- 自分を他人と同じぐらい有能だと思ってはいけない
- 自分を他人より賢いと思ってはいけない
- 自分が他人より優れていると思ってはいけない
- 自分は他人より多くを知っていると思ってはいけない
- 自分は他人よりも重要な存在だと思ってはいけない
- 自分が他人よりも何かに秀でていると思ってはいけない
- 他人を下に見て笑ってはいけない
- 他人が自分のことを助けてくれると思ってはいけない
- 自分が他人に何かを教えられると思ってはいけない
ってことで、基本的には「自分の特別さを疑え!」みたいな内容で、ナルシシズムをぶっ壊すものになってます。本人は気づかないとしても、デンマーク人の精神には、こういった教えが埋め込まれているんだそうな。
たとえば、「ヤンテの十戒」はデンマークの学校制度にも影響を与えていて、
- 競争的な学校制度はよろしくない!
- できる学生を教えるための上級プログラムもない!
- 学校はすべて平等でなければならない!
- 生徒たちは「一番」を競うのではなく、互いに助け合わなければならない!
- だから、デンマークには褒賞制度もなく、成績の良い生徒にトロフィーが与えられることもない!
って感じで、子どもたちは、幼い頃から無意識のうちに「ヤンテの十戒」的な思考を植え込まれていくらしい。そのせいで、子デンマークのどもはクラスで1番になったからといって自慢しないし、仕事場でも他人の昇進や昇給が話題になることはないそうな。
なんだか、悪しき平等主義につながりそうな考え方ですけど、とにかくこれがデンマークのやり方なんだ、ってことですね(もちろん、近年はデンマーク国内でも「考え方が古い!」って批判は多いみたいですが)。
ただ、この話には納得できるところもありまして、過去のデータを見てみても、
- 「幸せになろうと頑張るほど幸せから遠ざかる」と示した調査も多い
といった指摘はいくつもありますからね。ここらへんのデータは、「ヤンテの十戒」的な考え方ともなじみやすいところではありましょう。つまるところ、「ヤンテの十戒」ってのは、
- 自分が平凡な人間であることを受け入れよ!
- 人生に多くを期待するな!
って話なんで、このような考え方は、過去の心理学の研究とも整合性が取れてるんですよね。自分の平凡さを受け入れれば無駄に挫折で苦しまなくなるし、人生の平均を飲み込まれば日常の満足感も大きくなるでしょうから。
デュプイ博士いわく、
「ヤンテの十戒」に従うと、あなたはおそらく、ごく平均的な人生を送ることを目標にするようになるだろう。そのような精神状態であれば、人生からごく平均的なものを与えられても、かなり満足できるはずだ。
その一方で、もし人生が平均以上のものを与えてくれるなら、あなたは嬉しい驚きを感じ、ほとんどの場合、とても幸せな気分になるに違いない。
とのこと。そもそも人生に期待しないほうが幸福を感じやすくなるよーって考え方でして、私のような内向的な人間には響くんじゃないでしょうか。
一方で、ご存じのとおり、北欧は自殺率が高い国としても知られているんで、そこらへんとの整合性も気になるとこではあります。
一説によると、「ヤンテの十戒みたいな考え方のせいで、はみ出し者へのいじめが起きるのが原因では?」って指摘もあるんで、ここは注意しておきたいところでしょう(R)。また、外向的だったり、競争心が旺盛な人にとっては、「人生に期待するな!」ってアドバイスは虚無感につながりかねないので、私としても、万人におすすめできる戒律ではないよなーとも思ってたりします。
が、現時点で「自意識に苦しんでいる人」「鬼のように内向的な人」「過度なナルシシズムに苦しむ人」「他人との比較が多い人」などは、「ヤンテの十戒」を心がけておくと精神衛生を保ちやすいかもしれないっすね。