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今週末の小ネタ:アレで運動と同じぐらいメンタル爆上がり、モンテッソーリ教育どう? 8時間の孤独でメシ抜きと同じぐらいエネルギー爆減


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

  

 

知らない人との会話のメンタル改善効果が運動と同じレベル説

知らない人と話すと幸福度が上がる!ってのは有名な話。その事実を示す報告はめっちゃ多くて、だいたいの話をまとめると、

 

  1. たいていの人は、知らない人と話すことに不安を感じ、不快に思う。その結果、社会的な交流を避けるようになり、うつ病や孤独に陥る人も少なくない。

  2. しかし、実験で「知らない人と話してみてくださいねー」と指示すると、たいていの人は「こんなに楽しいのか!」とビックリして、その後の幸福度が上がる。

 

みたいな感じですね。誰もが見知らぬ人と話すのを嫌がるが、実際にやってみると真逆の結果が出ることが多いんですよ。

 

 

で、新しいデータ(R)も似たような研究で、まず結論から言うと、

 

  • 見ず知らずの人とオンラインで会話するだけでも、私たちはめちゃくちゃ幸せになれる!

 

みたいになります。対面でコミュニケーションを取らなくても、オンラインで見知らぬ人と話すだけでも十分な効果を得られるんだ、と。

 

 

具体的には、これは初対面の参加者にペアを組ませ、ビデオチャットで25分ほど会話するように指示。1,656回の会話をしてもらったうえで、みんなに「気分はどうですか?」と尋ねたんだそうな。すると、結果は以下のグラフのようになりました。青いエリアが実験前の気分で、赤いエリアが実験後の気分であります。

 

 


 

このグラフを見た直後の個人的な感想は、「めちゃくちゃ効果が出てるじゃないの!」みたいな感じですね。このレベルの変化って、ざっくり運動で得られる気分の改善と同じレベルでして、これほど大きな効果が確認されるのって珍しいんですよ。

 

 

もちろん、ひとつの研究で「見知らぬ人との会話には運動なみの効果がある!」とは言えませんが、今度なにか落ち込むことがあったら、見知らぬ人と20分ぐらい会話をしてみるのもいいかもしれません。

 

 

ちなみに、過去の研究によると、「会話の機会があるのに、それを避けると逆に不安が高まる」って報告も多かったりします。他者との交流の不安を避けると、短期的には気分がよくなるものの、長い目で見ると社会不安が増しちゃうケースが多いんですね。

 

 

そう考えると、見知らぬだれかと話すチャンスがあったら、積極的にコミュニケーションを取ったほうがいいんでしょうなぁ(という私もゴリゴリ非社交的な人間なので、実践には二の足をふんでしまうわけですが)。

 

 

 

 

モンテッソーリ教育、アリ?ナシ?

モンテッソーリ教育ってあるじゃないですか。イタリア人のマリア・モンテッソーリさんが開発した教育法で、いまは世界中の学校や幼児教育センターで使われている人気の手法であります。

 

 

超ざっくり言うと、モンテッソーリは、体験型の遊びを通して子どもたち学習させる手法で、ほとんどのクラスは、個人または小グループで実施。子どもたちは、与えられたおもちゃで自由に遊ぶことができるし、特にご褒美や罰のようなものはないし、教師も援助はするもののほぼ直接的な指導はしないしで、自立的な活動を推奨するのがポイントですね。

 

 

で、この手法については長らく賛否があるんですけど、新しい研究(R)はモンテッソーリを深堀りしてくれていてためになりました。

 

 

この研究は、モンテッソーリ学校に通う3歳から6歳までの子供と、その学校に通わなかった子どもたちを比較したもの。すると、モンテッソーリ教育を受けた子どもたちは、幼稚園を卒業するまでに、読解力と計算力に優れ、社会性が向上し、実行機能が発達していることがわかったんだそうな。これは、なかなか興味深い結果ですねー。

 

 

ただし、この研究は1校しか対象にしていないので、調査としてはかなり甘めな部類に入るわけです。そこで研究チームは、さらに2つのモンテッソーリ学校を対処に、よりたくさんの子どもたちを研究の対象して新たな分析を実施しております(R)。

 

 

その結果がどうだったかと言いますと、

 

  • 研究の最初のテストでは、2つのグループの間に差は見られかったが、3年後の再テストでは、モンテッソーリ教育を受けている子どもたちは、学力、社会性(心の理論)、習得志向(他人のために行動するのではなく、学習に集中する)、学校の課題へのモチベーションが大きく成長していた。

 

  • 社会的な問題解決や創造性については、2つのグループのあいだに差は見られなかった。

 

  • モンテッソーリ教育には、高所得者と低所得者の学力差をより少なくする働きがあるかもしれない。

 

みたいになります。こうして見ると、モンテッソーリ教育には、なかなか見どころがあるような気がするわけです。

 

 

もっとも、このタイプの研究は判断が難しくて、そもそもモンテッソーリ教育に参加するような家庭ってのは、もともと教育へのモチベーションが高いことが多いんですよね。その点で、より一般の家庭でも同じような結果が出るかと言われれば、疑問もあるんですよ(実際、モンテッソーリと従来の学校との間に差がないことを示した研究も少なくない)。

 

 

個人的には、「まぁもしかしたら明確な優位性はないのかもだけど、少なくともモンテッソーリで副作用があるって報告はないし、あとは好みでやってみてもいいのでは?」みたいな印象を持っておりますが。

 

 

 

 

8時間の孤独でメシ抜きと同じぐらいエネルギー爆減

孤独の疲労感はハンパない!」って話(R)が出ておりました。

 

 

これはウィーン大学などによるテストで、18歳~33歳の女性30人が対象。みんなを3日間に分けてラボに呼んで、

 

  1. 8時間、誰ともコミュニケーションしない日
  2. 8時間、食事をとらない日
  3. 8時間、コミュニケーションと食事の両方がない日

 

のいずれかを体験してもらったらしい。「誰ともコミュニケーションしない日」は、ネットやスマホへのアクセスを完全に禁じ、研究者との接触もないように設定されたとのこと。

 

 

でもって、みんなのストレスや気分などを定期的にチェックしたら、

 

  • 8時間のゼロコミュニケーションは、食事を抜いた時と同じぐらいの疲れとエネルギーの低下を引き起こす。

 

  • ロックダウン中に行われた観察研究でも、やはり孤独によりメシ抜きと同じぐらい疲労度が増すことがわかった。

 

って結果だったそうな。コミュニケーションが足りないと、人間ってのは食事をしていてもエネルギー不足になってしまうわけですな。

 

 

ちなみに、この現象は、もともとの性格が社交的な人ほど強かったそうで、非社交的な人には関係がなかったらしい。となると、私のような非社交マンにはあまり関係がないのかもですが、社交的な方はくれぐれもご注意ください。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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