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仕事のモチベーションの半分は生まれつきの性格で決まっちゃうんだからさぁ……というメタ分析の話


  

近ごろ、ビジネス書の世界でめっちゃ聞くようになったのが「エンゲージメント」って言葉でしょう。仕事に自然とのめり込んだり、会社への愛情ががっつり高い状態のことで、エンゲージメントが高い人ほど仕事がよくできると考えられております。

 

 

実際、最近の調査(R)でも、「従業員のエンゲージメントは組織の成功に欠かせないよー」ってのを示してまして、エンゲージメントが高い人ほどエネルギーレベルが高く、そのおかげで組織の生産性が高くなっていくんだそうな(R)。まぁモチベーションが高い人の生産性が高いのは、そりゃそうですよねーって感じですが。

 

 

が、ここで誰もが思うのが、なんでエンゲージメントが高い人と低い人がいるのか?ってところでしょう。よく言われているのは、上司のマネージメント、組織の不公平さ、企業の文化などですが、まだよくわかってないのが、

 

  • 実は生まれつきの性格が、エンゲージメントの高さに関係してないか?

 

ってポイントです。リーダーとか組織の文化が大事なのは間違いないものの、生まれつき備わった性格がかなりのウェイトを占めているんじゃないか、というところですね。

 

 

ということで、最近のメタ分析は(R)、この問題についてがっつりと調査を進めてくれております。確かに、いくら会社のシステムが良かったとしても、それを受け取る側の性格がゆがんでいたら、エンゲージメントは高まりそうにもないですからねぇ。

 

 

この研究は、性格とエンゲージメントについて調べた114件の先行研究をまとめたもので、世界のいろんな国から約4万5000人の調査データを分析してくれてます。そのうえで、個人の性格によって、エンゲージメントがどれぐらい高まるのかを推計してくれたんですね。

 

 

そこで出た結果をざっくり紹介すると、こんな感じになります。

 

  • 仕事に対するエンゲージメントの違いの約50%は、個人の性格で予測できた。

 

  • エンゲージメントが高い人は、ポジティブ感情、積極性、誠実性、外向性という4つのパーソナリティ特性が高い傾向があった。

 

ということで、エンゲージメントの約半分は個人の性格で決まっちゃうんじゃないの?って結論ですね。簡単に言えば、ポジティブで、自分から仕事に取り組み、コツコツやるのが好きで、他人と関わるのが好きな人は、仕事へのエンゲージメントが高い傾向があるという意味ですね。それはそうだろうなーって感じですが、ポジティブでも、積極的でも、外交的でもない私としては、「だから自分はいつも仕事のやる気がないのか!」って感想を持ちました(忍耐はあるのでコツコツした作業はできますが、それ以外が低いので、常にモチベーションも低い)。

 

 

ちなみに、これら4つのパーソナリティが重要なのは、すべての特性が合体すると、感情的知性(EQ)とレジリエンス(失敗からすぐ立ち直る能力)が爆上がりするからだそうです。まぁこのメタ分析では、性格の影響だけしか考慮しておらず、エンゲージメントに影響するほかの外部要因が組み込まれてないので、そこは難点ではありますが、この結果には説得力がありますね。

 

 

そう考えると、この結果を企業側から見た場合は、

 

  • 上の4つの性格を持つ人を集めたほうが全体のエンゲージメントは高まり、業績は伸びるのかもしれない。

 

  • ただし、一方では、同じようなキャラの人ばっかり集めると、組織としての多様性が下がるという問題も起きそう。近年では、多様性がある組織のほうが業績が高いとの報告もめっちゃ多いので、ここらへんとのバランスが難しいかも。

 

  • あと、レジリエンスが高い人ばかり集まった組織は、上司やマネージメントがダメダメな環境でもわりとうまくいったりするので、組織の根本的な問題が残されたままになりがち。

 

  • さらに言えば、組織内で良いアイデアを出せる創造性が高い人は、意外と積極性や外向性がなかったりもする(好奇心だけは高いことが多い)。エンゲージメントが高い人ばっかり集めると、そこらへんの能力も低下しそう。

 

といったあたりが注意ポイントになるでしょうな。もともと、多くの企業は、エンゲージメントが高そうな人ばかりを集めたくなるもんですが、そこはぐっとこらえて多様性に気を配ったほうがいいのかもなー、という。

 

 

そのうえで、この結果を個人の側から見た場合は、

 

 

 

 

ぐらいに考えております。いずれにせよ、持ち前の性格にあらがうのは難しいんで、私のように生まれつきエンゲージメントが低い人は、その特性を活かす方向で考えるほうが無難でしょう。そもそも、仕事のモチベーションなんて、そうそう長く持続するもんじゃないですからねぇ。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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