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プチ断食には何か特別な健康効果があるのか?を最新のRCTでチェックしてみましょう

                                            

 

「16時間断食」「8時間ダイエット」など、このブログではいろんなプチ断食法を紹介しております。ここ数年でめっちゃ注目されている手法ですが、「プチ断食が本当に健康に良いのか?」「それとも、単にカロリーが減るから痩せるだけなのか?」って疑問についてはまだ議論の最中だったりします。

 

一部のデータは「プチ断食で代謝が変わって健康になる」と言ってるのに対して、「単にカロリーが減るから健康に良いのでは?」みたいな見解もありまして、ここらへんはまだよくわからんのですよ。

 

ということで今回は、最新のランダム化比較試験(RCT)をチェックして、プチ断食の実際の効果について深掘りしてみましょうー。

 

 

プチ断食は血糖コントロールと体脂肪を改善する?

ここで取り上げるのは、メタボリックシンドロームを持つ108名を対象にした3ヶ月間のRCT(R)であります。実験のデザインを簡単にまとめておくと、こんな感じになります。

 

  1. 全体の半分にプチ断食を割り当てて、1日の食事時間を最小で4時間まで削減。1日の食事時間を8〜10時間にまで縮めて、だいたい睡眠の3時間前までに食事を終えるように設定した。

  2. 一方で対照グループは普段どおりの食生活を続けてもらい、健康の指標にどんな違いが出たかを調べた。どちらのグループとも、カロリー摂取量の指示は出ていない。

 

ってことで、3カ月の違いを見てみたところ、プチ断食したグループにはこんなの変化が見られたらしい。

 

  • HbA1c(糖化ヘモグロビン)の低下(−0.10%)

  • 1日の血糖値の変動が減少

  • 体重が1.66kg減少

  • 体脂肪率が1.25%減少

  • LDLコレステロールが9.1 mg/dL低下

 

この中で言うと、血糖値の変動が減ったところが、健康に最も関わるポイントでしょう。血糖値の安定は糖尿病リスクの低減につながるんで、プチ断食が健康に良い影響を与える可能性があるわけっすね。

 

しかし、一方で「他の糖代謝マーカーには有意な変化なし!」って結果も出てるんで、ここらへんはちょっと辛いところです。つまり、HbA1cの低下はあったものの、プチ断食が特別な「血糖改善効果」を持つかは微妙な感じなんですよね。

 

 

プチ断食の本当の効果は「食事量が減ること」?

でもって、この研究で最も大事なポイントは、「カロリー制限を指示しなかったのに、プチ断食をしたグループは平均1日350kcal減っていた」ってとこです。

 

まぁ、過去の研究(R)でもプチ断食を実施すると自然とカロリー摂取量が減るってのは報告されてたんで、これ自体は意外でもないんですけど、ここで考えなければならないのは、プチ断食による体重減少やHbA1cの低下が、

 

  • プチ断食そのものの効果なのか?

  • 単にカロリーが減ったからなのか?

 

って点でしょう。体重が減れば心臓や血管の健康は改善するのが当たり前なので、プチ断食にカロリー制限を超えるなんらかのメリットがあるかどうかを理解しておくのは大事ですからね。この問題について、プチ断食とカロリー制限を比較したいくつかのRCTの結果を見てみると……

 

  • 「10時間のプチ断食 vs. 16時間のプチ断食」を12週間続けた場合 → 体重・血糖値の変化はほぼ同じ(R)

  • 「プチ断食(午前8時から午後4時まで食べる) vs. 時間制限なし」を12カ月続けた場合 → 体重・代謝マーカーの変化は同じ(R)

  • 「プチ断食(午前10時から午後7時までの食事) vs. 時間制限なし」を6カ月続けた場合 → 体重・代謝マーカーの変化は同じ(R)

 

みたいな結果が出てるんですよ。つまり、プチ断食の健康効果ってのは、「時間を制限すること」よりも「無意識にカロリーを減らせること」が原因である可能性が高いってことですな。ちょっと残念な結論ですけど、やはりプチ断食はそこまで期待せずに続けるのが良さそうっすね。

 

 

プチ断食のメリットとデメリットを整理する

では、以上をふまえて、プチ断食のメリットとデメリットを整理してみましょうー。

 

  • メリット
    • シンプルで実践しやすい:カロリー計算不要で「食べる時間を決めるだけ」なので、心理的な負担が少ない。
    • 無意識にカロリー摂取を抑えられる:「夕食を早める」「間食を減らす」ことで、結果的に摂取カロリーが減少。
    • 血糖値の変動を安定させる可能性:特に糖尿病予備軍やインスリン抵抗性がある人には、血糖コントロールの助けになるかも。

 

  • デメリット
    • 筋肉量の減少リスク:長時間の空腹が続くと、筋肉の分解が進む可能性がある(個人的は別に気にしていないが、高齢者やアスリートは気にした方が良いかも)。
    • エネルギー不足によるパフォーマンス低下:プチ断食の時間帯を間違えると、運動や仕事の集中力が落ちることもある。
    • 長期的なデータが不足:数ヶ月の研究が多く、年単位で続けた場合の影響は未知数だったりはする。

 

ってことで、プチ断食にはメリデメがあるわけですが、それでもアカデミズムで注目され続けている最大の理由は、「カロリー制限よりも楽に実践できる」ってとこでしょう。

 

カロリー制限は毎日の食事を計算して食べる量をコントロールする必要があるのに対して、プチ断食は食べる時間を決めるだけで結果的に摂取カロリーが減るってのが大きな利点なんで。特に、「カロリー計算が面倒」「食事の選択肢を制限するのがストレス」って人には、「時計を見るだけ」でOKなプチ断食の方が心理的負担が少ないでしょうね。

 

ただし、これを逆に言えば、「すでにカロリー管理ができている人」にとっては、プチ断食のメリットは少ないはずなので、そこはご注意くださいませ。ということで、「ダイエットの継続が難しい!」という方は、試しに食事時間を8〜10時間に制限するプチ断食を取り入れてみるのもアリ。今からはじめたい方は「リーンゲインズ」あたりから手をつけてみてはいかがかと思うわけです。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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