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【プチ断食】はどこまで夢の健康法なのか? を調べた系統的レビューの話

 


  

このブログでは、よくプチ断食を推奨しております。これは、1日のうち食事の時間を3~12時間の枠内に収めるやり方で、それ以外の制限はゼロ。なにを食べてもいいし、好きなだけ食べてもOKであります。

 

 

たいていは、空腹の時間を「16時間〜20時間」に収めるのが一般的でして、減量をする効果はかなり認められております(ただし「世間のダイエットを超える夢の減量法!」とかではないので、そこはご注意いただきたいですが)。

 

 

とりあえず、現時点で言えそうなのは、

 

  • プチ断食は、一般的なカロリー制限や長期の断食(36時間以上の断食)よりも実行しやすいため、そのおかげで体重が減る。

 

  • ついでにプチ断食は、メタボのリスクも減らすることができる(コレステロールとか血糖値とか)。ただし、これも一般的なダイエットより効果が上かと言われれば、そんなこともない。あくまで、実行するのが簡単ってだけ。

 

といった感じでしょうか。個人的には、日常的にツラさを感じずに体型を維持する方法としてやっぱいいよなーと思っております。

 

 

で、ここで問題なのが、「プチ断食はなぜいいのか?」ってポイントです。これは栄養学の世界でも議論がわかれるところでして、

 

  • たんに摂取カロリーが減るからでは?
  • 内臓の働きを休められるからでは?
  • ミトコンドリアが活性するからでは?
  • 脂肪の分解スピードが速まるのでは?
  • 体内時計を整えてくれるからでは?

 

みたいに諸説あるんですよ。ざっくり言えば、たんに食い過ぎが治るからプチ断食は健康にいいのか? はたまた、その他にも凄いメカニズムがあるのか? みたいな感じですね。

 

 

そんなわけで、新しく出た系統的レビュー(R)は、「プチ断食はなぜ効果があるのか?」に関するヒントを与えてくれてて良い感じでした。

 

 

これは、プチ断食に関する17件の研究をまとめたもので、早いプチ断食と遅いプチ断食が健康にいいかどうかをチェックしたもの。こちらもざっくり言うと、

 

  • 早いプチ断食:1日の早い時間で食事を終えて、夕方以降は何も食べない。だいたいの研究では、1日の食事を午後5時前までに終えるケースが多い。
  • 遅いプチ断食:1日の遅い時間で食事を終えて、朝は何も食べない。だいたいの研究では、1日の食事時間が午前10時以降に始まり、午後11時以前に終わるケースが多い。

 

みたいな違いです。ブログで前にも書いたとおり、に「早いプチ断食ってのは体内時計と調和しやすいから、それだけメリットが大きいのでは?」みたいに言われてるんですよ。

 

 

で、今回の分析では、全データの4件は早いプチ断食を調査し、13件は遅いプチ断食を調査しております。データの質がバラバラすぎてメタ分析は行われていないので、そこは残念ですけども。

 

 

そのうえで、体重、カロリー摂取量、メタボのリスクなどを調べたら、結果はこんな感じになりました。

 

 

  • 早いプチ断食と遅いプチ断食は、どちらも似たように体重が減る。ただし、「断食中も摂取カロリーは維持してね!」と指示された研究では体重が減ってないので、プチ断食のダイエット効果は、やはりシンプルにカロリーが減るのが原因だと思われる。

 

 

  • 早いプチ断食と遅いプチ断食は、どちらも糖の代謝を改善させたが、その効果は一貫していない。たとえば、糖尿予備軍の人の場合、「早いプチ断食」でインスリン感受性が改善したが、肥満の人だと「早いプチ断食」で空腹時血糖、インスリン感受性は改善しなかった。

    また、こちらも「プチ断食に独自のメリットが!」ってわけではなく、たんにカロリー摂取が減ったのが原因だと思われる。全体として、早いプチ断食のほうが、遅いプチ断食より糖代謝の転帰を改善するのに効果があるかもしれないが、この効果をカロリー制限と切り離すことは困難である。

 

 

  • コレステロールや血圧の改善についても、プチ断食の効果は研究間でバラバラ。これらの違いは、参加者の血中脂質がコントロールされていなかったからだと思われる。

 

 

  • 「遅いプチ断食」は2件の研究で血圧の低下が確認されたが、いずれの試験でも、参加者は体重を減らしており、こちらもカロリーが減ったのが原因と思われる。

 

 

  • 4時間と6時間のプチ断食を比較した研究では、どちらも同じように1日のカロリー摂取量を約550カロリー減らし、参加者の体重を減らし、インスリン感受性と酸化ストレスを改善しました。つまり、2時間ほど余分に断食してもたいした違いはないかもしれない。

 

 

ということで、全体を見わたしてみますと、プチ断食の効果はカロリー摂取量の減少と同時に起こっているみたいなんですよね。要するに、プチ断食で健康が改善されるのは、シンプルに「食べる量が減ったから」で、体内時計を改善したり、脂肪の燃焼スピードを上げたりなど、魔法のようなメカニズムが他にあるわけじゃなさそうだなーって印象ですね。そこまで過大な期待を持たずに、カロリーコントロールの手段として使うのが正しそうであります。

 

 

ただし、一部のデータを見てると、早いプチ断食が体内時計のリズムに適している可能性も捨てきれない感じでもあります。ここらへんは、もっと研究が必要ですけど、午後5時までに食事を終えるってのは現実的じゃないんで、一般には遅いプチ断食を選ぶしかないでしょうが。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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