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運動で分泌されるストレスホルモンには、どこまでビビればいいのか?

Stress
 
ストレスホルモンと肥満に関するご質問をいただきました。

いつも読んでます!前の記事によりますと、エクササイズはストレスホルモンを出すと書いてありましたが、コルチゾールは肥満の原因になるのではないでしょうか?お時間あるときにご回答いただければ幸いです。

とのこと。これは「プチ断食で腹まわりのしつこい脂肪を減らす方法」でも軽く触れた話でして、確かにエクササイズは体にストレスをあたえる行為なので、コルチゾールの分泌をうながす作用があります。コルチゾールといえば、当ブログでも過去に「激しい老化や肥満を引き起こす原因」として紹介したこともありまして、心配になるのも仕方ないところ。実際のところはどうなんでしょうか?



コルチゾールのレベルが高いと腹まわりの脂肪も多い
そもそもコルチゾールとは、外からのストレスに反応して副腎から出るホルモン。断食のほかに、カロリー制限ダイエットエクササイズ過度の糖質制限、睡眠不足などでも分泌されることが知られております。とにかくストレスを感じれば出るものなので、たとえばレジ待ちでイライラしても出るし、お金がなくて不安になったときなんかも出ちゃう。


実際のことろ、「コルチゾールのレベルが高い人ほど腹まわりの脂肪も多いよ!」ってデータはいくつもありまして(1,2)、ストレスと肥満が関係しているのは間違いなさそう。


とはいえ、「プチ断食やエクササイズはダイエットの敵!」って結論にはならないのが人間の体のおもしろさ。コルチゾールと体重の関係については、2000年に米軍が行った有名な実験(3)がありまして、兵士たちを過度のストレス状態に置いたうえでダイエットをさせたんですね。具体的には、

  • 1日の食事は、必要カロリーのマイナス1,000Kcalまで
  • 高温と寒冷地でのトレーニングを交互に行う
  • 毎晩のように30kgのリュックを背負って巡回を行う
  • 1日の睡眠時間は4時間以下

といった感じ。読んでるだけでストレスホルモン出そうなハードさですねぇ。


実験は8週間ほど続きまして、結果は全員の体重が平均で10kg減少。おもしろいことに、体内のコルチゾール量が多い兵士ほど体重の減り方は大きかったんだそうな。肥満の女性を対象にした12週間の研究(4)でも似たような結果が出てまして、どうもコルチゾールが体脂肪の減少をブロックするってことではなさそう。


じゃあ何が問題になっているのか? 
では、何が問題なのかといえば、ズバリ「コルチゾールの分泌期間」であります。 というもの、短い時間ならばコルチゾールは体脂肪を燃やす働きがあるんですね。


具体的には、過去にオックスフォード大学などが行った実験(5,6)では、

  • コルチゾールの大量分泌が6時間までなら体脂肪が燃える
  • コルチゾールの大量分泌が11時間を超えると体脂肪の燃焼がおさえられる

 とのこと。分泌時間によって真逆の作用が出てくるんですねぇ。


また、2005年の研究(7)では、

  • 60分ぐらいの運動を行うとコルチゾールの量がはね上がる
  • エクササイズの時間が40分以下だとコルチゾールの分泌量に目立った変化はない

とのことで、やはりランニングのような長時間の運動は、あまり好ましくないのではないかと思う次第です。


まとめ
そんなわけで、以上の話をまとめますと、

  • ストレスと肥満には確かに関係がある
  • でも短時間の筋トレぐらいなら問題はない
  • ただし、マラソンやランニングのような長時間のストレスは問題かも

 といったところ。というか、コルチゾールの悪影響に関しては、エクササイズのしすぎよりも、

  • 慢性的な睡眠不足
  • 長期間のストレス(職場環境が悪いとか)
  • ジャンクフードの食べ過ぎ
  • エクササイズをまったくしてない

といった要素のほうが大きいかと思います。お気をつけくださいませー。

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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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