自信を持ちたい!とか言う前に、まずは「セルフコンパッション」から鍛えるべし
クリスティン・ネフ「セルフコンパッション」を読み終わり。「人間にとって本当に必要なのは自信じゃない!セルフコンパッションだ!」って説を検証した一冊であります。
セルフコンパッションに必要な3つの要素
セルフコンパッションには決まった定義がないんですが、ネフ博士は、
- 自分へのやさしさ:他人を思いやるときのように、自分にもやさしくしてやる態度
- 一般的な人間性:人間は周囲との関わりのなかで生きているという事実への自覚
- マインドフルネス:思考にとらわれずに目の前の現実に意識を向けられる態度
の3つを重要視している模様。これらの要素が多い人ほどうつ状態におちいらず、人生への満足度も高いってデータがあるんですな。
あくまで自己批判をせずに自分の幸せを願うのがポイントなので、
- ナルシシズム
- 自己満足
- 自己憐憫
- 自尊心
といった状態とは別物になっていきます。かなり仏教の慈悲に近い考えかたでして、日本人にも受け入れやすいんじゃないかと。
いっぽうでネフ博士は、現代の「自信を持とう!」ってムーブメントには否定的。このあたりも、ポジティブシンキングが苦手なわたしには向いてますな。
ある有名な論文によれば、自信だけが高くてもメリットは少ない。学校の成績や仕事のパフォーマンス、リーダーシップのスキル、喫煙や飲酒の習慣、違法ドラッグの使用、乱れた性行為など、あらゆる要素に関して自信の高さは無意味だった。
どころか、自信の高さは健康的な生活に悪影響をおよぼす可能性のほうが高い。
ここでいう「有名な論文」は、以前に当ブログで「『自分に自信を持て!』はデメリットのほうが大きい」として取り上げたものと同じですね。
近年の科学的研究によれば、セルフコンパッションにはメリットが多いわりに副作用は少ない。
ただし、ここで大事なのは、セルフコンパッションと自尊心が相反するものではないところだ。あなたが本当に自分を思いやることができれば、自然と自尊心も高くなっていく。そしてセルフコンパッションが高まれば不安やうつの症状は減り、幸福感や楽観性が高くなる。
とのこと。セルフコンパッションの気持ちが育つと、問題が起きても「自分はダメ人間だ!」みたいな自己批判が起きにくくなり、結果としてメンタルに良い影響が出やすいわけですね。
セルフコンパッションのトレーニング法
じゃあ、セルフコンパッションはどう鍛えればいいの?って話ですが、まずは自分に優しくすることを心がけるのが基本。
自己批判に立ち向かう最良の方法は、思いやりを持って批判の内容を理解してやり、もっと優しい反応をしてあげることだ。自分のなかの批判者を、もっとも優しく親身にポジティブに扱ってやればいい。
とのこと。ちょっと認知行動療法に近いものがありますね。
とはいっても、いきなり自分に対して優しく話しかけるのも難しいはず。そこでネフ博士がおすすめしているのが、自分のなかに架空の優しいキャラを作っちゃう戦略であります。
わたしが行った実験では、まず参加者に対して「どんな悪いことも起きない安全な場所」をイメージしてもらった。そのうえで、優しくて慈悲にあふれた理想的な人物を、頭のなかに作り出すように指示した。(中略)このトレーニングの結果、うつ症状や自己批判、劣等感、恥の感覚などが大幅に減ることが確認された。
あらかじめ理想的な人物を作っといて、自己批判がわき上がってきたら、そのキャラに対応してもらうわけですね。
ネフ博士が実践した例では、ダイエット中にお菓子を食べちゃったときは、架空のお婆ちゃんキャラにこう言ってもらったらしい。
あなたは悲しい気分をまぎらわせようとして、クッキーをたくさん食べちゃったのね。でも、もっと気分が悪くなっちゃったんでしょう。悲しい気分を幸せに変えたいなら、これから散歩にでも出かけるのはどう?
ポイントとしては、
- 嫌な気分を確認してやる
- ネガティブな思考は否定しない
- 非論理的な自己批判には論理的に反論(「俺はいつもダメだ!」→「正しいときもあるでしょう?」)
- よりポジティブな代替案を出してやる
みたいなとこでしょうかねー。とにかく自分を批判する気持ちがわき上がってきたら、歴史上の偉人でもアニメの登場人物でもいいんで、優しくて寛大なキャラに対応してもらう作業をくり返していくのがいいっぽい。
ただし、自己批判が激しい人のなかには、そもそも自分が自分を責めている事実に気づけないケースも多いんで、その場合はまず瞑想などで思考を客観視する練習からスタートしたほうがいいでしょうね。時間はかかりますが、なんせ自分を気にかけてやれるのは自分だけなんで、セルフコンパッションを鍛えておくと財産になるかと思います。