「全粒粉は本当に体に良いのか?」問題に信頼できる結論が出た件
全粒粉が本当に体にいいかは意外とわかってない
「全粒粉は体にいいよー」って話はよく聞くわけです。ご存じのとおり、小麦をまるごと粉にしたのが全粒粉で、普通の精製粉にくらべて食物繊維が格段に多いので、心疾患で早死にしちゃうリスクを下げると言われてるんですね。
実際、健康食としては定評がある「地中海式ダイエット」も大量の全粒粉を食べるのは有名な話。地中海式ダイエットが長生きに効くのも、全粒粉の効果じゃないかのか、とも考えられてきたわけです。
ただ、このへんの話は観察研究がベースなんで、「たんに健康的な暮らしをしてる人は全粒粉の消費量が多いけじゃね?」って疑問も常につきまとってきたんですね。全粒粉が体にいいのではなく、健康志向の人が全粒粉を食べてるだけじゃないか、と。
本当に全粒粉は体にいいのか?のメタ分析
かなーり難しい問題ですが、近ごろやっと精度の高い研究(1)が出まして、「本当に全粒粉は体にいいの?」ってところを徹底的に調べてくれております。
これはケンブリッジ大学の研究で、過去に行われた実験からデザインが良い9件を選んで、1,414人のデータを精査したメタ分析。参加者の内訳は、健康体の人、心疾患にかかった人、メタボや高血圧など心疾患リスクが高い人が対象になっております。
だいたいの実験は、いろんな参加者に全粒粉の食事をしてもらい、心疾患リスクが下がったかどうかをチェック(コレステロールとか血圧とか人生の質とか)。その後、平均で12週間のフォローアップが行われております。
全粒粉が体に良い証拠は見つからなかった
さて、その結論がどうだったかといいますと、
- 全粒粉が体に良いという証拠はなし!
だそうな。いくら全粒粉を増やそうが、総コレステロール、悪玉コレステロール、血圧などには特に目立った影響はなかったみたい。
うーん、衝撃。もちろんパレオダイエットでは全粒粉はNG食品なんですけど、個人的に「さすがに全粒粉は体にいいだろう」ぐらいに思ってたんで。
全粒粉はどんな人にも意味がないかも
ちなみにデータを見てますと、
- すべての結果について個人差が非常に少ない
- 信頼区間もほとんどゼロに近い
って傾向があるのもポイント。簡単に言えば「全粒粉はどんな人にも無意味」ってことでして、人によっては体にいいって可能性も限りなく低いわけです。これまた驚き。
さらに言っちゃうと、全9件のデータのなかで2件は「全粒粉を増やしたら吐き気やガスが発生した」と報告していて、どうも人生の質においてもさほどメリットはないのかも(これはデータ数が少ないので判断保留ですが)。難しいっすねぇ。
まぁこの研究にも欠点はありまして、
- 全体的にドロップアウト(実験と途中で止めちゃった参加者)が多い
- ひとつの実験ではパンだけを使ってたり、他では玄米やオーツ麦を使ってたりと、実験によってプロトコルがバラバラ
といったあたりは結果に影響してそうな気もいたします。その点ではもうちょいデータが欲しいとこではあります。
まとめ
というわけで、現時点での結論としては、
- どうも全粒粉には意味がない可能性が高い(もちろん健康に悪いわけでもない)
ぐらいの印象。白米と同じで、「別に嫌わなくてもいいけど、あえて積極的に食べる理由は見つからない」といった位置づけでしょうか。ってことは、地中海式ダイエットから全粒粉を抜いた「地中海式パレオダイエット」が最強ってことになるんかなぁ。