結局「マルチビタミン」は体にいいのかどうか問題
マルチビタミンに関するをご質問をいただきました。
パレオさんはマルチビタミンを飲んでいないようですが、何か理由があるんでしょうか?まとめて栄養が取れるのは便利なので、もし良いものがあれば紹介して欲しいです!
とのこと。実は私もかつてはマルチビタミンを飲んでたんですけど、いろいろ考えたあげく止めちゃったんですよねぇ。以下、その理由など。
マルチビタミンを止めた理由1:なにせ効果がないっぽい
第一に、マルチビタミンには「そもそも意味がないんじゃない?」って疑惑が大きいとこ。
この点については2006年の有名な研究(1)がありまして、ジョン・ホプキンス大学が20件の過去データをまとめたメタ分析になっております。9件のRCTもふくまれていて、信頼度としては結構高め。
その結論だけ引用すると、
現時点では、マルチビタミンやミネラルのサプリメントが慢性病や癌の予防になると信じるに足る証拠はない。
って感じです。一部のデータでは「マルチビタミンで発癌率が減った」みたいな結果も出てるものの、全体的に見れば「心疾患や癌の予防にはならない!」って結論のほうが優勢なんですよねぇ。
ちなみに、個別のビタミンに関するデータを見ても、
- 39876人の女性を調べた実験では、ビタミンEやベータカロチンが癌と心疾患に役立つという結果は得られなかった(1999年,2)
- 8171人の女性を調べた実験では、1日500mgのビタミンCと600IUのビタミンE、50mgのベータカロチンを飲んでもらったが、9年が過ぎても特に病気の発症率はプラシーボと変わらなかった(2009年,3)
といった残念な報告が出てたりもします。しかも、いずれも実験のクオリティが高いもんで、どうも健康な成人がマルチビタミンを飲む意味はなさげなんですな。
マルチビタミンを止めた理由2:ヘタすりゃマルチビタミンで害が出る
さらに、一部の研究では、マルチビタミンには「逆に体に良くないんじゃない?」って結果も出てたりします。たとえば2011年に東フィンランド大学から出た論文(4)によれば、38,772人の高齢者を調べたデータセットを使って、普段のビタミン使用量と死亡率をチェックしたんですな。
すると、
高齢の女性において、ビタミンやミネラルの一般的な使用は総死亡リスクの上昇と相関があった。
だったそうな。なかなか怖い結論になってますねー。
ほかにも、2011年にアメリカ癌協会が行った研究(5)では、475,726人の男性でマルチビタミンの影響を18年にわたって調べたら、
- 定期的にマルチビタミンを飲む男性は前立腺癌の確率がアップ!
なんて結果が出てたりもしまして、やはり怖い感じ。
もっとも、これらのデータは、いずれも相対危険度を見る限り大した数字でもないんで、そこまで怖がるべきかというと、よくわからんところではあります。実際、2011年に行われたメタ分析(6)では、「いろいろ調べたけどマルチビタミンで前立腺癌が増加するって証拠はなかったよー」とのこと。うーん、悩ましい。
まとめ
ってことでいろんなデータを並べてみましたが、結局はよくわからんって感じです。いずれにせよ言えるのは、
- マルチビタミンに目立った効果がないのは確実っぽい
- マルチビタミンが有害かはよくわからんけど、否定はできない
といったところです。そう考えますと、特にメリットがないうえにリスクもありそうな商品に金を出すのもなー、とか思うんですよねぇ。