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「海外で自分探し」は意外とバカにできない。どころか激しく人生の幸福感を高めるかも!という話

 

海外に出ると本当に自分が見つかりやすくなる?
「海外で自分探し」とか言うとバカにされがちな昨今ですが、「意外とそうでもないよ!」っていうおもしろい研究(1)が出ておりました。


これはライス大学の実験で、「海外に出ると本当に自分が見つかりやすくなるんじゃない?」って問題に取り組んだものです。


研究者いわく、

私たちは自分の祖国の文化で育つにつれて『常識』を学び、自らの考え方や行動を左右される。

そのため、もし生まれた国しか知らないと、自分の思考や行動に影響する信念が、本当のコアバリューと一致したものなのかに疑問を持たなくなり、確かめようともしなくなってしまう。

ところが海外に住むと、自己を調査する機会がそこらじゅうに存在する。

とのこと。違う文化に触れると強く自分を意識することになるので、結果として自己分析が進むんじゃないの?ってことですな。


昔から海外旅行のメリットとしてよく言われることではありますが、確かにデータで検証しようとした事例って他にないですからねぇ。


海外でセルフコンセプトクラリティがはかどる
で、これがどんな研究かといいますと、まずひとつ目の実験では296人の男女をオンラインで集めて、次のようなサーベイに答えてもらったらしい。

  • 「自分がどのような人間か?」という問題に対してハッキリした感覚を持っていますか?
  • いくつかある自分のパーソナリティ同士が衝突を起こすことはありますか?

これらの質門が何を聞いているのかというと、専門的には「セルフコンセプトクラリティ」と呼ばれる状態であります。この論文の定義でいうと、

自分に対する信念が明確で、自身を持って定義でき、時間が過ぎても一貫して安定している状態。

みたいな感じ。ざっくり言えば、自分をよくわかってて自分自身に安心できているような状態のことです。


過去の研究では、この「セルフコンセプトクラリティ」が高い人ほど幸福だし創造性は高いし決断力はあるしで、いろいろと人生がウハウハなことがわかってるんですな。


といっても、この世で一番難しいのは、なんだかんだで「汝自身を知れ」ですからねぇ。「セルフコンセプトクラリティを高めよう!」と言われても、そう簡単にはいかないもんですよね。


さて、研究の結果はハッキリしていて、海外で暮らした期間が長い人ほど「セルフコンセプトクラリティが高い!」というもの。この傾向は年令や性別を調整した後でも確認されたそうな。おもしろいもんですな。


セルフコンセプトクラリティが高いと良いことだらけ
さらにもうひとつの実験では、MBAの学生551人を対象にサーベイを行いまして、まずは全員に「自分で決断力やコミュニケーション能力はどれぐらいあると思う?」と質門。


さらにその友人たちにも協力をお願いして、「参加者の決断力やコミュニケーション能力はどれぐらいあると思う?」と聞いてまわったらしい。要するに、自己の採点と他者からの採点が一致している人ほど「セルフコンセプトクラリティが高い」と判断できるわけですね。
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その結果はやはり同じで、海外に住む経験が長い人ほどセルフコンセプトクラリティが高く、自分の長所と短所をしっかり把握してたそうな。さらには、海外暮らしが長い人は、

  • 人生の満足度があがる
  • ストレスレベルが下がる
  • 仕事の生産性が上がる
  • 人生の目的が見つかりやすくなる


なんて傾向もあったとのこと。なんか良いことだらけですな。


海外に行った回数より期間が大事
研究者いわく、


海外で暮らす時間が長くなるほど、自分について考える時間が増える。結果、自分への理解が深まるチャンスが生まれ、意思決定も明確になっていく。



ドイツの哲学者ヘルマン・カイザーリンクは、1919年の著書「或る哲学者の旅日記」で、”自己に続く最短の道は世界をめぐることだ”と記した。それからおよそ100年後に、このアイデアを支持する実証データが出てきたのだ。

とのこと。ACTなんかでも自分の価値観をやたら重視するんですが、その作業が海外経験ではかどるかもしれないわけっすな。


ちなみに、ここで大事なのは「海外に行った回数」ではなくて「海外で暮らした期間」なんだそうな。つまり、5つの異国で2年ずつ暮らすよりも、ひとつの異国で10年暮らしたほうがメリットは大きいってことっすね。


そう考えると、ちょっと海外旅行に行ったぐらいで「自分探し」ってのは確かにアレですが、ガッツリと異国の地に身をうずめるぐらいの覚悟なら心理的なメリットはかなり大きいんでしょうな。まぁ海外移住までいかずとも、外国旅行に行くだけでも創造性が上がるってデータは結構ありますんで、とにかく知らない土地に行ってみたらどうかと思う次第です。  

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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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