たった1分の早歩きを積み重ねるだけでも、あなたの死亡率は大きく下がる!というアメリカ国立がん研究所の研究
「1回の運動は10分以上続けないと無意味!」って考え方があるんですよ。これは2008年にアメリカの保健福祉省が出したガイドライン(1)がベースになってて、「運動は最低でも10分以上は続けないとせっかくのメリットが得られないよ」と明記したんですな。
この考え方は過去のエクササイズ研究なんかにもとづいてまして、どうも10分以上の運動を続けないと身体の持久力が上がりにくい傾向が出てたんですよ。
ただ、これには異論もあって「持久力が上がらないからといって意味がないとは言えなくない?」ってのも昔から言われたり。そもそも、この説が正しいとすれば「エレベーターの代わりに階段を使おう!」とか「車をいつもよりちょっと遠くに停めてみよう!」みたいなアドバイスもムダってことになっちゃうわけで、かなり切ないですからねぇ。
そんなわけで、この問題をハッキリさせるべく立ち上がったのがアメリカ国立がん研究所であります(2)。NHNESってデータセットから40歳以上の男女4,840人を選んで、1回に必要な最低運動量ってどれぐらいなの?って問題を調べてくれたんですな。
NHNESがどんなデータセットかと言いますと、
- 参加者に活動量計を着けてもらって1週間ほど過ごしてもらう
- みんなのMVPA(活動量)をチェックする
- その後の死亡率や健康状態と比べる
って感じで、どれぐらいの運動で健康状態が改善するのかを調べております。MVPAは「中高強度身体活動」のことで、早歩きからジョギングぐらいの軽めな運動のこと。ちょっと息が上がるぐらいの運動で、だいたいどのガイドラインでも推奨されてる負荷です。
さて、それでどんなことがわかったかと言いますと、まずは1日に必要な運動量の話から。
- 1日のMVPAが20分以下だと早期の死亡率は激増する!
- 1日のMVPAが60分を越えると死亡リスクは57%まで下がる
- 1日のMVPAが100分を越えると死亡リスクは76%まで下がる
だそうです。1日100分というと「そんなに運動できないよ!」とビビっちゃうラインですけども、もちろん希望はありまして、
- MVPAである限り、1回の運動は1分でも大丈夫!
って結論も出てたりします。つまり、階段を30秒だけのぼる!とか近所のコンビニまで早歩き!とか、それぐらいの活動でも1日分の運動としてカウントしていいんだ、ってことですな。これは「1日30分のエクササイズをする!」とか決めておくよりもだいぶ心理的には楽じゃないでしょうか。
研究者いわく、
このデータのポイントは、すべての身体活動は等しく重要だということだ。私たちが毎日のように行う活動は、どんな小さなことでも意味がある。すべては少しずつ積み重なって、病気や死亡リスクを減らしてくれるのだ。
とのこと。この見解を実生活に活かすならば、
- いつもの行動をちょっとテキパキやってみよう!
ぐらいの認識で行動すると良さげ。いつもより早歩きで通勤してみたり、スピーディに家事をこなしてみたりとか、そんなイメージですかね。それだけでも十分にエクササイズとして考えていいってのは、なかなかナイスな調査ではないかと思う次第です。