寝ながらベートーベンを聴くとテストの成績が良くなるかもだぞ!というベイラー大学実験の話
「モーツァルト効果」が否定されて久しい昨今でございます。クラシック音楽を聴くと頭が良くなると言われたのは過去の話で、どうやらいくらハイソな音楽を聞こうが学習には何の効果もないっぽいんですよね。
が、だからといって音楽のメリットが完全に否定されたわけではなく、近ごろは新たな可能性が浮かび上がってたりもします。簡単に言うと、
- 睡眠とセットで組み合わせればクラシック音楽にも意味があるのでは?
みたいな話です。たんにクラシック音楽を聞いて知性がアップするのを期待するのではなく、
- 勉強をしながらクラシック音楽を聴く
- その夜に、勉強中に聴いた曲を寝ながら聴く
みたいに使うと、学んだ内容が定着しやすくなるって話があるんですよ。
ってことで近ごろ、ベイラー大学などのチームが「睡眠+クラシック音楽の効果」について調べてくれておりました(R)。
50人の大学生を対象にしたテストで、実験のデザインは、
- みんなに経済学に関する30分間の動画を見てもらう
- 講義の間、背景ではクラシック音楽を流す
- その夜、参加者の半分に学習中に聴いたクラシックを聴いてもらう
- 残りの半分には、ホワイトノイズを聴きながら寝てもらう
みたいになってます。勉強中に学生が聴いたのはベートーベン「月光」、ヴィヴァルディ「春」、ショパン「ノクターン」で、図書館でかすかに流れるBGMぐらいの音量に設定したとのこと。睡眠中の音楽やホワイトノイズは、学生たちが「徐波睡眠」に入ってから流したそうです(みんなが眠りについてから35分後ぐらい)。
では、結果のまとめです。
- 夜に音楽を聞いた学生は、聞いていない学生よりも、経済学のテストをパスする確率が高かった
- 睡眠中の音楽のメリットは女性に大きく確認された
- 睡眠中の音楽は暗記問題には違いをもたらさず、応用問題の成績をアップさせた
- 9カ月後に再テストをしたところ、音楽の効果は消えていた
ってことで、やはり睡眠中のクラシック音楽は意味があったみたい。実は以前にも同じ研究はあったんですが、今回の実験では、
- 効果の出方は性別で違うのかも?
- 音楽の効果は短期的でしかない?
ってのがわかったのは収穫ですね。
ちなみに、睡眠中のクラシックに効果がある理由にふれておくと、
- 学習中に音楽を聴くと、内容と音楽が脳内で結びつく
- 睡眠中に音楽を聴くと、結びついた記憶が呼び起こされる
みたいな流れになってます。専門的には「標的記憶再活性化」と呼ばれていて、音楽だけでなく嗅覚を使った場合も似たような効果が得られたりします。例えば、バラの香りをかぎながら勉強したあと、同じ匂いがする部屋で眠ると翌日のテストの成績が良くなったりするんですよ。
では、今回の結果を日常生活に応用するためにはどうすりゃいいかと言うと、注意点はこんな感じになります。
- 学習中の音量がデカすぎると集中力が死ぬので、あくまで聞き流せるレベルにしておく
- 歌詞があるような曲、ジャズみたいにテンポがコロコロ変わる曲、つい意識が向いてしまうような曲は避ける(つまり、穏やかなクラシックがベスト)
- 背景で流す曲は、学びたいコンテンツひとつにつき1曲にする(例えば、オスマントルコ帝国の歴史を覚えながらベートーベンを聴いてたなら、化学反応式を学ぶときはモーツァルトに切り替える、とか)
おそらく一番ムズいのは最後のポイントで、特定のトピックには特定の音楽を組み合わせないと効果が得られないはずなんですよね(同じ曲ばかりだと脳が混乱するので)。ここらへんは難しいけど、「このポイントだけはガッツリ覚えておかないと!」ってのを事前に絞り込んでおいて、重要なトピックを学ぶときにだけクラシックを使うのがいいかもしれませんねー。