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運動すれば子供の成績は上がるのか?を調べまくったアンブレラレビューのお話

 

運動が脳に良いのは間違いない!」ならば、活動的な子供ほど成績もいいはずだ!ということで、そのへんをガッツリ調べたデータ(R)が出ておりました。

 

 

これがどんな研究なのかと言いますと、

 

  1. 身体活動と学校の成績について調べた過去のメタ分析をチェック
  2. 2003~2020年までに発表された41本のデータをまとめる

 

みたいになってます。41本のうちすべてが系統的レビューを行っていて、15件はメタ分析をしていたとのこと。要するに本件は、メタ分析を中心に集めたアンブレラレビューになってるんですが、そのうち34件は「低品質」と判定されてまして、まぁ全体的の信頼度はそこそこって感じっすね。

 

 

また、この研究で調べた「身体活動」になにがふくまれるのかと言いますと、

 

  • 学校までの通学でバスや電車を使わずに歩く
  • 筋トレ
  • サーキットトレーニング
  • ヨガ
  • ガーデニング
  • 体育の授業
  • 課外活動

 

といった感じで幅広い内容になっていて、なかなか統一見解を出すのが難しそうな雰囲気が漂っております。全体的には「体育の授業で体を動かす量を増やそう!」みたいな介入が多いですね。

 

 

でもって、これらの活動が「テストの点数」や「成績の評価」と関係してるのかをチェックしたら、だいたい結果はこんな感じになりました。

 

  • 全体的に見ると、身体活動は学校の成績に対して小さな効果が認められた(「無効」とした研究も少なくないけれど)

 

  • 教科によって結果はバラついてるけど、まぁ数学については一貫して小さな効果が出てるなーって感じ(ただし、これは数学の成績を計測したデータが多いからなだけのような気もする)

 

  • 座って授業をするカリキュラムと比べると、身体活動が多いものは効果なし〜中程度の効果があるっぽい

 

  • ずっと運動を続けてる場合は成績に良い効果が現れるが、1回運動したぐらいではなんの変化もないっぽい

 

  • 通学で体を動かしても、数学や言語学の成績は上がらないっぽい(データ量が少ないので違いが検出されてないのかもだけど)

 

ということで、まぁ大きく見れば「身体活動を増やせば成績が上がる‥‥かも?」ぐらいの結論ですね。「身体活動を増やしても成績は上がらない!」って報告も多いんで、そこらへんの食い違いが起きてる理由は謎ですけども。

 

 

ただし、個人的な印象を申し上げますと「あれ?意外と大したことないな?」って感じですかねぇ。運動が脳に良いってデータが多いわりには、あんまパッとしないなーって気がしたもんで。

 

 

実際のところ、研究チームも次のようにも言っておられます。

 

身体活動は実行機能を改善し、その結果として、抑制機能、作業記憶、認知柔軟性に影響を与えると考えられる。さらに、視覚空間スキル、呼称能力、記憶力といった認知スキルの向上は、算数の学習に役立つ可能性がある。

 

運動が認知機能を上げる可能性はかなり高いんだけど、それを成績アップにつなげるには、もうちょい別の要素が必要なのかもしれんですね。この論文の中でチームが推測してるとこだと、

 

  • 身体活動を増やすだけじゃなくて、授業が楽しくなるような介入が必要なのかも?

  • 家族の支援や子供たちのメンタルの問題も大きい?
  • 大半の研究は栄養状態を組み込んでないから、これが影響してる?
  • 大気汚染なんかの問題もある?

 

といったあたりが関係してる可能性を示唆してまして、「やっぱ成績アップは一筋縄じゃいかんよなぁ」という当たり前のことを思ったりしました。そもそも、学校の成績については「認知機能よりも感情のコントロール能力の方が大事では?」って見解もデカいので、運動だけで万事解決するはずもないですよね。

 

 

そんなわけで、身体活動がすぐに成績につながるわけじゃないものの、小レベルの効果はありそうなんで「やっといて損はない」ぐらいの感じで取り組むとよさそうっすねー。

 

 

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。