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トレーニングの量を減らしても体力と筋肉を減らさずにすむ"最低ライン"はどれぐらいか?問題


 

アメリカ陸軍環境医学研究所のチームが、「いまの体力や筋肉を保つのに必要な最小のトレーニング量は何か?」ってのを調べたおもしろい研究を出してくれておりました(R)。ケガとか旅行のせいでトレーニングを減らすしかないような状況で、いままでのエクササイズで得たメリットを無駄にせずに済む運動の最小量は?ってポイントですね。

 

 

これは過去の「トレーニング量」に関するデータをまとめたレビューでして、

 

  1. 頻度=週に何回トレーニングすべきか
  2. 量=持久力トレーニングの長さ、またはセット数やレップ数
  3. 強度=どれだけハードにトレーニングすべきか。どれだけの負荷でやるべきか

 

という3つの重要なポイントについて、大きな結論を出してくれてます。個人的に参考になったポイントをまとめておくと、こんな感じ。

 

 

  1. 持久力の維持

    まずは持久力をキープするために必要なトレーニング量から。この問題に関しては、主に1980年代初頭に行われたデータをベースにしていて、

    ・週6日のハードなトレーニング(最大心拍数の90〜100%に達する強度で40分間のサイクリング)を10週間続けた結果、VO2max(心肺機能の指標)が20〜25%ほど改善した。その後の15週間、トレーニングを週2日〜週4日に減らしてもVO2 maxは新しい数値のまま低下しなかった

    といった結果が得られたんだそうな。これらのデータをもとに、著者は「トレーニングの量と強度を維持する限り、週に2回程度のセッションでも問題ない」との結論を出しております。週2のトレーニングでも持久力は維持されるってのはうれしいですね。


    ただし、一方で著者は「VO2maxを維持することと、長時間の競技の持久力を維持することは同じではない」とも言ってますんで、そこはご注意ください。要するに、週2回のトレーニングを続けてもマラソンを走れるようにはならないぞってことですね。


    また、上記のテストでは「トレーニングのセッション時間」と「強度」もチェックしていて、こんな結論を出してます。

    ・1回あたりのトレーニング時間を13分または26分に短縮した場合(つまり、ベースラインの時間を3分の1または3分の2に短縮した場合)も、15週間にわたってVO2maxの向上が維持された

    ・ただし、短時間持久力はどちらのグループも維持されたものの、13分に短縮したグループは2時間ランニングのテストでは成績が悪くなった

    ・トレーニング強度を3分の1に下げた場合(最大心拍数の90〜100%から82〜87%に下げた場合)、VO2maxと長時間持久力が低下し、3分の2に下げた場合(61〜67%に下げた場合)は、トレーニングのメリットのほとんどが失われた


    ということで、ここらへんを見てると「トレーニングの頻度と時間は短くしてもいいが、負荷だけは減らしちゃダメっぽい」って印象ですね。時間的なラクはできても、精神的なラクはできなそうっすな。





  2. 筋力の維持

    筋トレの研究はバリエーションが多いので、持久力よりも結論を出しにくい感じ。ただし、全体的なパターンは持久力トレーニングとよく似てまして、

    ・大事なのは強度!(どれだけ重いウェイトを使うか)

    ・強度を下げなければ、トレーニングの頻度と時間は短くしてもいい

    といった結論になりそうであります。負荷さえキープしていれば、筋力と筋肉量の両方を数ヶ月は維持できるんだそうな。忙しくてジムに行けないような時には、はげみになる結論っすね。


    いちおう、もうちょい詳しい傾向をまとめておくと、

    ・運動の頻度については、いくつかの研究で「週に1回のトレーニングでも筋力と筋肉の大きさを維持するには十分」と報告されている

    ・トレーニング量についても同様で、1エクササイズにつき1セットで十分に筋力と筋肉の大きさを維持できるとの報告が多い

    ・ただし60歳以上の場合は、週2回のトレーニングの方が筋肉を維持できるし、セット数も2セットはやった方が良い

    みたいになりまして、週1に1セットで従来のトレーニングを無駄にせずに済むってのは、めちゃくちゃありがたいっすなぁ……。


 

ってことで、負荷さえ変えなければ、思ったよりトレーニングの量を減らしても問題はなさそうっすね。まぁこのレビューはかなりハードなトレーニングを行なった人を対象にしてるとこもありますんで、一般的なトレーニーだとちょっと違う結論が出る可能性はあります。その点だけご留意あれ。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。