頭がまわらない!脳が働かない!恐怖の「ブレインフォッグ」が起きる原因と対策
こんなご質問をいただきました。
新型コロナのせいで、ブレインフォッグという言葉をよく聞くようになりました。鈴木さんのブログでもいくつか説明を書かれていたと思いますが、もう少しくわしいことを知りたいです。
ってことで、確かにニュースなどでは、新型コロナの後遺症のひとつにブレインフォッグが挙げられることが多いっすね。このブログでも過去に取り上げたことのある概念ですが、具体的にどんな状態のことを言うのかを、もうちょいくわしくまとめてみましょう。
で、ブレインフォッグを直訳すれば「脳の霧」でして、名前のとおり頭がぼんやりしたり、一日中眠かったり、考えがまとまらなかったりといった問題が起きる現象を意味しております。そのほか、どんなことが起きるのかと言いますと、
- 思考のスピード低下
- 思考の混乱
- 覚醒度の低下
- 情報処理がうまくできなくなる
- コミュニケーションがうまくできなくなる
みたいになります。全体的には認知に障害が起きたような状態で、脳に満足な血が流れてなかったり、ストレスがダラダラ長引いたときに起こることが多いっすね。当然、生活の質には大きな悪影響がありまして、ほっといたら仕事がなにも手につかない状態になったりするんですよ。情報処理が滞ったら、そりゃあいろんなとこに不具合が出ますもんね。
でもって、ブレインフォッグが困っちゃうのは、基本的な認知の働きが低下するだけでなく、それに続く二次的な問題を引き起こすこともあるとこです。具体例をいくつかあげますと、
- スキルと自信の低下:ある研究(R)によると、認知の障害が起きるとメンタルが疲れてしまうため、それによってエラーやミスを監視する能力が低下。さらには、あらゆる活動への準備もできなくなり、最終的にはパフォーマンスが下がって、自信が低下していく。
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モチベーションの低下:精神疲労のレビュー論文(R)によると、精神的な疲労は、タスクを行うためのエネルギーコストが、期待される報酬を上回ったときに生じる。しかし、最初から精神的な疲労を感じていると、タスクの実行コストがが以前よりも大きく感じられていまい、結果としてモチベーションが下がり、簡単にできることしかしなくなる。
みたいになります。とにもかくにも、記憶、思考、注意機能の低下がもっとも一般的なブレインフォッグの兆候でして、これにかかった人は「頭がいつも霞んでいる感じ」や「心がいつも混乱している感じ」みたいな症状を訴えるケースが多いですね。嫌ですなぁ。
では、ブレインフォッグの原因には何があるかと言いますと、これには新型コロナのような特定の病気、生活習慣、心理的な問題などいろんなものが指摘されております。代表的なところをいくつか挙げてみましょう。
- 脳の炎症:脳に十分なグルコースが回らなかったり、栄養が不足していたりすると、脳内に炎症反応が発生。健康な細胞まで免疫に攻撃され、正常な認知機能が損なわれてしまう。
- ストレス:強いストレスを感じると、タスクを実行するコストが大きく感じられるため、ブレインフォッグのような症状が起きることがある(R)。
- 不安:不安は精神と身体を興奮状態に切り替える働きがあり、そのせいでメンタルの疲労が起きやすくなる。
- 低栄養状態:ビタミン、ミネラル、フラボノイド、脂肪酸の少ないバランスの悪い食事や、精製された糖分の多い食事は、認知機能を低下させる傾向がある。
- 肥満:体脂肪が多くて代謝が平均以下だと、全身に炎症が起こり、結果としてブレインフォッグにつながることがある。
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ホルモンの変化:2018年の研究(R)によると、ホルモン変化もブレインフォッグの引き金になる。たとえば、妊娠中はプロゲステロンとエストロゲンのレベルが上がるが、この変化は記憶に影響を与え、短期的な認知機能障害を引き起こす可能性がある。
- 睡眠不足:60歳未満で7時間未満の睡眠不足が続くと、注意力の低下、過剰反応、記憶喪失、混乱、処理速度の低下など、さまざまな認知機能障害が起きる。
- 脱水:満足な量の水分を摂取していないせいで脳への血液供給がとどこおり、脳の認知処理が妨げられた結果、ブレインフォッグが起きる。
- 頭痛:頭痛は、炎症、血流障害、脳内の神経信号トラブルなどによって引き起こされる。頭痛が多い人は、痛みが続くあいだ、言語記憶の低下、処理速度の低下、注意力の低下、判断力の低下など、ブレインフォグのような症状を示すことが多い。
- 体位性頻脈症候群:横になった状態から急に起き上がったせいで、脳への血流が減少してしまう現象。ベッドからガバッと起き上がった後で、短期的にブレインフォッグが起きることが多い。
- 自己免疫疾患:PID、MS、狼瘡のように、自分の免疫が自分を攻撃する疾患もブレインフォッグが起こりやすい。
ってことで、いろいろ見てみましたが、これらとてブレインフォッグの原因としては氷山の一角。この他にも認知機能の低下につながる原因は山ほどあるとお考えください(たとえば、酒の飲みすぎとか)。
ちなみに、新型コロナとブレインフォッグの関係についてはまだ謎も多いですけど、よく言われるのは、
- 感染によって脳への酸素不足が起こり、そのせいで細胞ダメージや認知機能の障害が起きる
- コロナウイルスによって神経細胞の機能が破壊される
といったあたりですね。いずれにせよ、脳の機能になんらかの障害が起きてるのは間違いないところですね。
では、ブレインフォッグの対策に何をすればいいかと言いますと、よく言われるのは以下のような手法です。
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基礎疾患や機能不全を調べる:多くの病気がブレインフォッグにつながるため、まずは病気の有無を確かめるのが、ブレインフォグからの回復への第一歩。COVID-19、グルテン不耐症、慢性ストレス・疲労、鬱、不安、体を動かさないライフスタイルが原因になってないかを調査する。
- 水分を補給する:水は脳が必要とする酸素を運搬してくれるので、ちょっとでも欠かさないようにするのが大事。実際、脱水症状は勉強の生産性や集中力を低下させる主な原因となってまして(R)、水を飲んだけで、注意力、運動神経、試験の成績、記憶力が上がったって報告も多いんですよ。
- ストレスコントロール:慢性的なストレスは長期的にブレインフォッグの原因になりやすい。なのでストレス対策はブレインフォッグ対策にもなるし、さらに「好きなことを楽しむ」作業は認知能力のベースを上げる働きもある。
- ちょっとしたチャレンジ:「自分はいま挑戦している」と感じられるレベルのストレスであれば、脳を活性化し、モチベーションを維持するために役立つ。また、ちょっとしたチャレンジにはフロー状態の発生率を高めやすく、これも脳の活性化につながる。
- 睡眠を改善する:睡眠には、生体の維持、認知の再組織化、感情の調節という機能があり睡眠不足は、意思決定、問題解決、感情コントロールの能力に影響を与える。
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認知機能を高める食事をする:野菜と果物を増やし、食物繊維の増量を図るのは基本。また、オメガ3脂肪酸葉酸、ビタミンB12、ビタミンDがマスト。 また、ブルーベリーやオレンジ、ナッツ類など、抗酸化物質を多く含む食品は、体内の酸化ストレスを軽減し、脳や身体に良い影響を与える。
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コリンを増やす:コリンは、正常な認知機能に必要なアセチルコリンの材料になるため、ブレインフォッグ対策には欠かせない栄養のひとつ。コリンは、肉類、乳製品、ナッツ類、豆類、卵、全粒粉、リンゴ、タンジェリン、キウイ、ブロッコリー、豆類に含まれている。
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日課を変えて楽しい活動をする:ブレインフォッグを脱して脳に活を入れるには、毎日のルーチンに意図的な変化を与えて新しいことをやるのがよい。ここで行う作業はなんでも構わないので、いつものルーチンとは異なるが、自分が楽しめることを心がける。
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体を動かす:運動が脳に良いのは間違いなく、脳への血流を増加させることで炎症が緩和されて、ブレインフォッグに対抗することができる。特にダンスセラピーは、認知機能の障害に有効だとされている。
- アルコールに気をつける:アルコールは覚醒作用と抑うつ作用の両方を持ち、認知機能を著しく低下させる。また、体内のアルコール濃度が下がるときに、疲労感、頭痛、めまい、不安感など、ブレインフォッグの症状が出ることがある。
ということで、長くなりましたが、ブレインフォッグに立ち向かうには、いまんところ基本的な健康ライフスタイルを守るしかないことがおわかりいただけると思います。なんせブレインフォッグはあらゆる原因で起きるんで、健康を心がけておくのがベストなんですよねぇ。