抗酸化サプリって「運動のパフォーマンスアップ」に使うべきなの?
昨日、「抗酸化サプリは筋トレに悪いのか?」みたいな話を紹介したので、その流れで今回は、
- 抗酸化サプリは運動に良いのか?
って話をまとめてみます。前回は抗酸化サプリに悪影響があるのかどうかをチェックしたんですが、今回は運動の際に抗酸化サプリを使うべきかどうかを見てみましょう。
抗酸化サプリで血のめぐりは良くなるよねー
で、抗酸化サプリのメリットとしてよく言われるのが、
- 血流をあげてくれるから、運動のパフォーマンスが上がるのだ!
みたいな考え方です。抗酸化物質ってのは、血のめぐりを良くするものが多いので、それによって栄養が全身に行きわたり、運動のパフォーマンスも上がるのではないか、と。
実際、運動の前に抗酸化サプリを飲むと血流が上がるって報告は多くて、その候補をざっくり並べておくと、
あたりはわりと有望でしょう。個人的には、カシスとココアあたりはわりと有望なのかなーと思ってまして、どちらも血管を拡張してくれるってデータは多めなんですよ。その点で、やはり抗酸化サプリってのは健康の改善に使えるだろうと思うわけです。
抗酸化サプリで運動のパフォーマンスは上がる?
が、ここで問題なのが、「運動のために飲む意味があるの?」ってところでしょう。血流が上がるのは健康には良いことですけど、スポーツのパフォーマンスとはまた別の話ですからね。
そこで、めっちゃ参考になるのがオークランド大学などのレビュー論文(R)で、過去に行われた抗酸化物質の研究をベースに、「運動のパフォーマンスは上がるの?」って問題をチェックしてくれてます。そこそこ長い論文なので、ポイントだけざっくりまとめておくと、
- ビタミンCは、1日0.2g~1.5g、単回~16週間でチェックしたデータが多いのが、どの研究でも、統計的に有意な効果は報告されていない。ただし、いくつかのデータでは小さな改善が報告されている。
- ビタミンEの研究もいくつかあるけど、動物実験でしか良い結果が出ていない。数週間にわたってビタミンEの効果を調べた研究でも、パフォーマンスの向上を示す証拠はない。というか、どっちかといえば悪影響もあるかも。
- リンゴに含まれるケルセチンは、1日1g程度の摂取で、持久力がちょっとだけ上がる可能性がある。筋トレの効果はよくわからん。
- 赤ワインに多く含まれるレスベラトロールは、動物実験では成果が出ているが、ヒトの運動パフォーマンスについては謎。
- ビーツジュースにはアントシアニンなどのポリフェノールが豊富で、いろいろな運動のパフォーマンスを高めることがわかっている。ただし、この効果は抗酸化物質によるものではなく、硝酸塩の影響である可能性のほうが大きい。
- エピカテキンを多く含むココアなどは、あくまで予備的な研究だが、ランニングの疲労をわずかにカバーすることが示されている。ただし、レッグプレスやベンチプレスといった筋トレのパフォーマンスは改善しないっぽい。
- ピクノジェノールは、 いくつかの研究で有酸素運動と筋トレ両方のパフォーマンスを少し高めることが示されている。
ってことで、こうして見ると、全体的には「抗酸化物質で運動のパフォーマンスが上がることはなくはないけど、あくまで微妙な違いだから飲んでも飲まなくてもどっちでもいいんじゃない?」ぐらいの結論ですね。運動のパフォーマンスを上げたいなら、クレアチンか硝酸塩を使うべきでありましょう。
抗酸化サプリで運動後の疲れや痛みはやわらぐ?
というわけで、運動のパフォーマンスについては、抗酸化物質はどうなのかなーと思うわけですが、最後にもうひとつ、
- 抗酸化サプリは運動のダメージ回復に効くか?
ってポイントも見ておきましょう。運動のパフォーマンスが上がらなくても、運動後の筋肉痛や疲労がやわらぐならありがたいですもんね。
この問題については、2013年のレビュー論文(R)が参考になりまして、この調査を見てみると、
- ビタミンCとビタミンEは、運動後の酸化ストレス、炎症、筋肉ダメージ、筋肉痛をやわらげる可能性がある。
- カロテノイドも、運動後の筋肉ダメージを減らすことを示す、いくつかのデータがある。
- ポリフェノールも、運動後の筋肉ダメージを減らし、回復スピードを上げる可能性がある。
- タルトチェリージュースやザクロジュースも、運動後の回復スピードを早め、筋トレ後の痛みをやわらげるっぽい。
みたいになります。これらの結果を見ると、抗酸化物質ってのは、運動後の疲れや筋肉痛を止めるには良い可能性が高いんじゃないでしょうか。前回の話と合わせて考えると、抗酸化物質で運動のメリットは打ち消されないようですし、ダメージ回復の目的で使うにはいいんじゃないでしょうかー。