果糖ブドウ糖液糖(異性化糖)はどこまで体に悪いのか?
果糖ブドウ糖液糖に関するご質問をいただきました。
最近、果糖ブドウ糖液糖は砂糖よりも太りやすいという記事を見ました。
ジュースなどは普段飲まないんですけど、ドレッシングやスープの素などいろんなものに入っているようで心配です。(中略)
また、果糖ブドウ糖液糖は、老化の原因であるAGEsを作りやすいのだそうです。体にいいものではないのは間違いないのでしょうが、実際にどこまでひかえればいいのかがわかりません。どうお考えでしょうか?
とのこと。果糖ブドウ糖液糖(異性化糖)は、ご質問にあるとおり、清涼飲料水などに多く入っている甘味料でして、加工食品などに広く使われております。コンビニの商品なんかと見ると、かなりの確率で入っているはず。
確かに「砂糖より果糖ブドウ糖液糖のほうがヤバい!」って主張は昔からありまして、多くは「果糖は砂糖と違って肝臓で代謝されるので中性脂肪になりやすい」って理屈になっているようです。では、実際のデータはどんなもんでしょう?
砂糖と果糖ブドウ糖液糖の太りやすさには差がない
というわけで、まず参考になるのが2012年の論文(1)。肥満の患者さんを対象に、砂糖と異性化糖がダイエットにあたえる影響の違いを調べた実験であります。
被験者は247人で、全員を4つのグループにわけたうえで、以下のように食事法を割り当てたんですね。もちろん、総摂取カロリーはみな同じであります。
- 総摂取カロリーの10%をブドウ糖果糖液糖にする
- 総摂取カロリーの20%をブドウ糖果糖液糖にする
- 総摂取カロリーの10%を砂糖にする
- 総摂取カロリーの20%を砂糖にする
12週間後の結果はこんな感じ、
- ブドウ糖果糖液糖10%:400gの減量
- ブドウ糖果糖液糖20%:500gの減量
- 砂糖10%:700gの減量
- 砂糖20%:変化なし
いずれもごく小さな差でして、計測器の誤差の範囲内におさまっちゃうレベル。もし異性化糖のほうが太りやすいなら、当然2番のグループがもっともヤバいはずですが、数字的にはほぼ明確な差が出なかったわけです。
また、2001年の実験にも似たような実験(2)が行われてまして、これまた砂糖と果糖ブドウ糖液糖の太りやすさには差がないとの結論。どうも、果糖ブドウ糖液糖が砂糖よりも太りやすいってことはなさそうです。
砂糖と果糖ブドウ糖液糖の構造はあんま変わらない
まぁ、それもそのはずで、そもそも砂糖と異性化糖ってあんまり構造は変わらないんですよ。果糖ブドウ糖液糖というと、つい果糖が多いのかと思っちゃいますが、実際に食品に使われているのは、
- HFCS-42:果糖42% ブドウ糖58%
- HFCS-55:果糖55% ブドウ糖45%
の2種類なんですね(3)。砂糖の構造は「果糖50% ブドウ糖50%」ですから、実際の比率はほぼ変わらないことになります。
その点で、異性化糖が砂糖よりもAGEsを作りやすいって説にも疑問。果糖がAGEsを作りやすいのは確かですが、なにせ果糖の量が砂糖と変わらないもんですから。実際、2009年のレビュー(4)でも、果糖ブドウ糖液糖が特にAGEsを作りやすい事実はないとの結論であります。
まとめ
そんなわけで、果糖ブドウ糖液糖を特に怖がる必要はないかなーというのが結論。とはいえ、もちろんとり過ぎは良くないので、以前に「果物は1日にどれだけ食べると体に悪いのか?」でご紹介した、
果糖は1日15〜25グラムまで
って範囲を守れば、肝臓の処理能力を超えないで済むかと思います。それでは、どうぞよしなに。
credit: JonathanCohen via FindCC