なぜ人は食べ過ぎてしまうのか?「食事報酬と肥満 その1」
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以前に、人間が太ってしまう原因を片っぱしからリストアップしたことがありました。偏食から運動不足まで、いろんな要因をあげたんですが、なかでも肥満の最大の原因と言われるのが「食事報酬」だったりします。
「報酬」は心理学の用語でして、ちょっと固い印象がありますけども、超ざっくり言ってしまえば、
快楽を感じるものを食べると、つい食べ過ぎてしまう
って話を専門的な言葉にしたものです。
ただ、この説明だと「美味しいものは太りやすいってこと?」と思っちゃいそうですが、少しニュアンスが違うので注意が必要かも。というのも、食事報酬は人間の進化をベースに作られてきたシステムなので、生存や繁殖が有利になりやすい食事ほど脳が喜ぶようになってるんですね。
具体的には、
- 甘いもの
- 脂肪
- 塩
- でんぷん
- 高いカロリー密度(重さあたりカロリー量)
- グルタミン酸(味の素)
- 苦味がないもの
などが報酬レベルの高い食品の条件であります(1,2)。エネルギー量が多かったり(脂肪・カロリー密度)、すばやく栄養を吸収できたり(塩・でんぶん)、毒性がなさそうだったり(苦味)と、いずれも厳しい環境を生き抜くためには必須の要素。つまり、舌が喜ばなくても、脳さえ喜んでいれば、それは十分に「食事報酬」が高いといえるわけですね。
肥満研究の第一人者であるブルース・キング教授いわく、
人間の消化器系・感覚(味覚と嗅覚)・脳の食中枢は、およそ200万年前に発達した。これらの機能は、古代の狩猟採集民たちが暮らした環境に適応している。ほとんどカロリー密度が低い食品しかなく、食事にありつけないことも多かった時代だ。
私たちの脳の報酬系は、できるだけカロリーの高い食べ物を探すように進化したが、現代の先進国に住む人間は、食料の豊富な「肥満環境」に生きている。そもそも人間の体には、自動的に食べ過ぎを止め、体重が増えるのをふせぐメカニズムが備わっているのに、上手く働かなくなってしまった。(2013年,1)
とのこと。本来、人間の体には「セットポイント」と呼ばれる体重の調節機能がついているのに、脳が喜びすぎちゃう食べ物ばかり口にしていると、システムにエラーが出ちゃうんだ、と。
また、食事報酬の高い食事を続けると、どんどん脳の中毒レベルが上がっていくこともわかっております。具体的には、ドラッグと食事報酬の影響をくらべた2011年の研究がありまして、グラフにするとこんな感じ。
ほぼコカインやヘロインと同じペースで右肩上がりになってますね。もちろん、これは「食事報酬の高い食事はドラッグと同じ!」って意味ではなく、あくまで食事報酬が高い食事を続けると総摂取カロリーがアップする可能性も高くなるって話ですので念のため。
そんなわけで、「食事報酬」のおおまかな説明はここまで。次は、さらに詳しい根拠と対策を見ていくことにします。
【食事報酬と肥満シリーズ】
- なぜ人は食べ過ぎてしまうのか?「食事報酬と肥満 その1」
- あなたが痩せないのは意思が弱いからではない「食事報酬と肥満 その2」
- 糖質と脂肪はどちらも同じように人を太らせる「食事報酬と肥満 その3」
- 苦しまずに体脂肪を減らすための『脳の再トレーニング』ガイド「食事報酬と肥満 その4」
credit: petekraynak via FindCC