人生をイージーモードに切り替える「しなやかマインドセット」の育て方
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2008年の名著「マインドセット」の新装版が出てたんで、読みなおしておりました。「やればできる!」って考え方を持つ人は人生がイージーモードに入りやすいことを、科学的に実証した有名な一冊であります。
成長マインドセットは作り出せる!
著者のドゥエック博士は、教育心理学のテキストには必ず名前が出てくるエラい人。それだけ学問の世界でも認められた理論なんですな。その内容はシンプルで、大半の人は2パターンの価値観や信念にもとづいて行動しているというもの。
- 硬直マインドセット=人間の能力は決まっていて変えられない!って考え方
- しなやかマインドセット=人間の能力は変えることができる!って考え方
で、しなやかマインドセットのほうが何かと便利ですよーってのがメインの主張になっております。
博士いわく、
硬直マインドセットを持つ人は、人間の基本的な性質や才能、能力、知性は変えられないと信じている。才能の量はあらかじめ決まっており、死ぬまで同じままだと考えているわけだ。
硬直マインドセットを持つと、自分にどれだけの才能があるのかが不安になる。「どうしたら頭が良く見えるだろう?みんな僕を天才だと思うだろうか?」といった思いに悩んでしまうのだ。
いっぽうでしなやかマインドセットを持つ人は、自分の才能や能力は努力やテクニック、他人の助けなどで伸ばせると考える。そのため、何でも試してみようとするし、チャレンジをいとわないし、困難にも柔軟に対応できる。たとえチャレンジに失敗しても、自分の才能や能力が原因だとは感じないからだ。
とのこと。つまり、
- しなやかマインドセットを持つ
- 失敗を恐れなくなる
- トライアル・アンド・エラーの回数が増える
- 成功回数が増える!
みたいな流れですね。ところが硬直マインドセットだと、自分が上手くできることにしか興味を示さないので、いっこうにスキルが上達していかないんだ、と。耳の痛い話であります。
ただし、ここで大事なのは、ドゥエック博士が「しなやかマインドセットは作り出せる!」と考えてるとこ。実際、小学生を対象にした実験でも、子どもたちのしなやかマインドセットを育てたら、大幅にテストの点数が上がったんだそうな。
というわけで、成長マインドセットを作り出すためのポイントをまとめていきます。基本的には子どもの成長に特化した内容なんですが、わたしのようなアラフォーにも役立つかと。
1.才能ではなく努力をほめる
まずはこれが基本中の基本。能力をほめると硬直マインドセットが育っちゃうんで、才能を失うことへの恐怖感が生まれちゃうんですな。博士いわく、
能力をほめると、子どもたちは「ああ、僕の能力は固まっているんだ。親がほめてくれるのはそのせいなんだ」と考えてしまう。そして、子どもたちはチャレンジを止めてしまい、失敗を深刻に考えすぎるようになる。これは多くの実験で確認された事実だ。
とのこと。努力ではなくて能力をほめると、人間はモチベーションが下がり、粘り強くものごとに取り組まなくなっちゃうみたい。
過去に行われた6つの実験では、いずれも知性をほめられた子どもたちは、努力をほめられた子どもにくらべてモチベーションが下がる傾向があった。
例えば、小学5年生を対象にした実験では、知性をほめられた子どもは「結果」のみにこだわるようになり、自分がどれだけ学んだかには注意を払わなくなった。
そのうえ、いったんテストなどに失敗すると、彼らは忍耐力が減ってしまい、勉強の量も少なくなり、努力をほめられた子どもにくらべてパフォーマンスも下がってしまった。
そんなわけで、何かに成功したときは、以下の3つをほめるのが得策であります。
- 努力
- 戦略
- 選択
これは大人でも同じで、自らが何かを成し遂げたときは「やっぱ俺はできる人間だ!」じゃなくて、
- 毎日コツコツやったからなぁ(努力)
- ゴールを細かく決めたのがよかったな(戦略)
- この仕事を選んだのが正解だったな(選択)
みたいに自分で自分をほめてやると吉。
2.といっても、結果を無視してもいけない
努力をほめるのが大事といっても、「結果は無視してOK」って話じゃないので注意。博士いわく、結果を無視してはいけない。大事なのは、結果と努力を結びつけてあげることだ。
以前に、こんなことを言った親御さんがいた。
「子どもが成功したり、難しいことを学んだときは、とても嬉しくてほめたくなっちゃうんです。でもダメなんですよね?」
そんなことはない。子どもが達成した成功を、ちゃんと努力の結果として認めてあげればいいのだ。
とのことで、もちろん成功をほめるのは重要。あくまで「正しい努力や戦略が良い結果を生んだ!」って事実を、自分のメンタルに叩き込むのがポイントであります。
3.とはいえ、努力が必ず成功につながるわけでもない
努力したからといって、必ず報われるわけじゃないのが世の常。というか、普通に生きてれば失敗のほうが多いでしょう。なので、失敗を深刻にとらえるのも、完全に無視しちゃうのもNG。どちらも硬直マインドセットが育つ原因になっちゃいますんで。
博士いわく、
もうひとつ重要なのは、両親が子どもの間違いや失敗にどう対処するかだ。(中略)子どもの失敗をポジティブにとらえ、間違いを学習のチャンスとして扱ってあげるべきだ。
すると、子どもたちは、失敗を学習のプロセスの一種としてとらえ出し、自らの過ちを利用できるようになる。
とのこと。こりゃあ大事ですわね。
まぁ年を取ると失敗への恐怖が増していくんで、このあたりはなかなか対処が難しいところ。わたしも失敗のダメージには弱いほうなんですが、いまんとこは認知行動療法とマインドフルネスでコツコツと対処しております。
4.とはいえ、ただ努力をほめまくるだけじゃダメ
もちろん努力は大事ですが、かといって、ただほめまくるだけなのも困り者。マインドセットの話をすると、多くの親は「結果ではなく努力が大事だ」と解釈してしまう。これは単純化しすぎだろう。努力だけでなく、ゴールや戦略も同じように重要だからだ。
ということで、明確なゴールや戦略の重要性も強調されております。
子どもの努力をほめて、がんばって勉強させるだけでは成長マインドセットは育たない。努力をほめるだけでは戦略の大事さが伝わらないからだ。(中略)
一般的に目標は高いほうがいいが、達成可能でなければならないし、同時にゴールまでのステップも明確にする必要がある。自分の進歩がちゃんと把握できるようにすべきなのだ。ゴールに向かって進んでいることを実感できるとき、人間はもっともモチベーションが上がる。そして、子どもがゴールを達成したら、両親は子どもが行った戦略やプロセスをレビューしてあげればいい。
以前に、科学的に最強のモチベーションアップ法は「ウソでもいいから前に進んでる感じを作ること」だって話を書きましたけど、成長マインドセットにおいても同じことが言えるわけですな。
5.つねに脳のギアを成長モードに入れておく
多くの人は、場面によって2つのマインドセットを使い分けております。たとえば勉強については「やればできる!」と思ってるのに、スポーツは「生まれつき才能がない…」とか考えたり。というわけでドゥエック博士は、ヒマを見ては自分の脳を「成長モード」に切り替えることをオススメしておられます。
毎日、自分に向かって次のように尋ねてみるべきだ。
「今日は何を学びたい?」
「今日は何を教えたい?」
「他人にどんな影響を与えたい?」
それだけで、私たちの心は成長モードに入る。
現代人はみんな忙しいし、日々の暮らしに大きな責任を持っている。だからこそ、自分の心に対して「成長マインドセットの重要性」を叩きこまなければならない。
ってことで、つねに自分の行動や心の声に対して「これは成長か?硬直か?」と聞いてみるとよさげ。
といっても、慣れてないと自分の自動思考に気づくのは難しいんで、まずはマインドフルネストレーニングなどで、自分の脳内の声をキャッチするところから始めたほうがいいでしょうね。
まとめ
そんなわけで、いまの教育心理学の基礎とも言える「成長マインドセット」のお話でした。硬直マインドセットの人がいきなり信念を切り替えるのは難しいでしょうから、まずは「家計簿」や「食事日記」を続けてみたり、意識して姿勢を治してみたりとか、小さなところから進めていくとよろしいかと思います。
また、基本的に成長マインドセットとセルフコントロール能力は近い関係にあるんで、「科学的に意志力が鍛えられる7つの方法を実際に試してみた結果」で紹介した方法論も使えるはず。