このブログを検索




ハゲる?腎臓に悪い?効果がなくなる?クレアチンによくある3つの疑問

Th 2014 08 14 23 10 45  

クレアチンに関するご質問を2ついただきました。

 

クレアチンに関して、オフ期(クレアチンをとらない時期)を設けた方がよいということを聞きました。 理由は腎臓への負担の軽減と、クレアチンの効果が薄れるのを防ぐためとのことです。 Suzukiさんは、このオフ期を設ける必要があると思いますでしょうか?

 

もうひとつは、

 

ブログを読んで、クレアチンを飲み始めました。しかし、最近クレアチンは髪が抜ける原因になるという話を読みました。クレアチンが男性ホルモンを増やして、ハゲの原因になるというのです。どう思われますでしょうか?

 

とのこと。いずれも、クレアチンについてよく聞く疑問の代表例かと思います。

 

 

クレアチンにオフ期は必要なの?

まず「クレアチンにオフ期は必要なの?」って問題から。

 

 

初めてオフ期を主張したのはセオ・ウォリマン博士で、「クレアチンを3カ月飲んだら1カ月は休まないと効果が鈍る!」と提案したんですね。これはマウス実験の結果がもとになってまして(1)、なんでもネズミに大量のクレアチンを飲ませたところ、筋肉が取り込むスピードが下がったんだそうな。

 

 

ただし、いっぽうでヒトを対象にした実験(2)などを見てみると、1日20gものクレアチンを半年にわたって飲んでもらっても、筋肉の取り込みスピードは変わらなかったとか。ほかにも、似たような実験はいくつかありますが(3,4)、いずれも「長期摂取でも特に効果は変わらない」との結論であります。

 

 

そもそも口から摂取したクレアチンは必要な分だけが筋肉に貯めこまれていき、あまったら体の外に排出されるだけなんで、効果が薄れる可能性はあまり心配しなくてよさげ。それよりは、ちゃんと1日5gを続けるのが大事ではないかと思う次第です。

 



 

クレアチンは腎臓に良くない?

クレアチンは腎臓への負担が大きい!という話もよく聞きます。クレアチンは腎臓の代謝に必須なので、大量に摂ると負担が大きいというんですね。

 

 

これまたマウス実験から出た説(5)でして、ネズミたちに大量のクレアチンをあたえ続けたら、10週間で腎臓のフィルター機能が低下したというんですな。

 

 

が、やはりヒトを対象にした実験では、同じような悪影響が出てないのがおもしろいところ。たとえば、

 

  • 1日5〜10gのクレアチンを1年ほど飲み続けても、腎臓の機能には何の問題も出なかった(6,7,8)
  • 閉経後の女性が1日20gのクレアチンを12週間飲んだが、腎臓には何の変化もなかった(9)
  • 糖尿病の参加者に1日20gのクレアチンを12週間飲んでもらったが、腎臓には何の変化もなかった(10)
  • 高齢者に1日10gのクレアチンを310日間飲んでもらったが、腎臓には何の変化もなかった(11)

 

 といった感じ。いまのところ、ほぼ腎臓への安全性は確認されていると言えましょう。

 

 
クレアチンでハゲる?

最後に「クレアチンはハゲの原因になる!」って話について。

 

 

この説は2009年の論文(3)がネタ元でして、20名の男性を以下の2グループにわけたんですね。

 

  1. 1日25gのクレアチンと25gのブドウ糖を1週間飲み、その後1日5gのクレアチンを2週間飲む
  2. 1日50gのブドウ糖だけを飲む

 

すると3週間後の結果は、

 

  • クレアチンを飲んだグループはDHT(ジヒドロテストステロン)が56%もアップ!
  • クレアチンの量を1日5gにしたら、DHTの量は16%増にとどまった

 

みたいな感じ。DHTはテストステロンが変換してできる物質で、ハゲの1番の原因とも呼ばれております。こいつが増えれば、当然ハゲが進むのではないかと考えられるわけですね。

 

 

もともとクレアチンにテストステロンを増やす作用があるのは有名な話。おかげで筋トレに役立つわけですが、いっぽうではDHTを増やす原因にもなっちゃうわけです。悩ましいですねぇ。

 

 

もちろん、まだクレアチンとハゲの関係を直に調べた実験はないので、実際どうなのかは誰にも断定できないところではあります。とりあえずクレアチンでDHTが増えるのは間違いないので、

 

  1. 遺伝的にハゲそうにもないなら(現時点で薄毛の兆候がなくて親戚にもハゲがいない場合)、DHTの感受性は低いと考えられるので、1日5gなら何の問題もなさげ。
  2. 遺伝的に薄毛の心配があるなら、1日3gぐらいに抑えておくといいかも。どうしても不安なら、5αリダクターゼを阻害する成分やフィナステリドを使っていくといいかも。もちろん、完全にクレアチンを止めるという選択肢もありですが。

 

といった方向性が考えられるかと思います。DHTは活力アップに必要な物質でもあるんで、そのへんのバランスは難しいとこですよねぇ。

 

 

まとめ

以上の話をまとめると、

 

  • クレアチンのオフ期は必要なし!
  • クレアチンは腎臓に悪影響がない!(もちろん腎臓に疾患がある場合は別)
  • クレアチンでハゲるかどうかはデータ不足!(1日5g以下ならそんなに影響はなさそうですが)

 

みたいな感じ。DHTと薄毛の関係はほぼ遺伝の問題なので、今後も実験でシロクロつけるのは難しそうであります。それではどうぞよしなに。


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item

search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM