結局、砂糖ってどこまでデブの原因になってるの?
当ブログでは、よく「砂糖こそ肥満の原因!」みたいな主張に反対する話を書いております。いろいろデータを見てると、どうも砂糖を特別に悪者にする理由が見当たらないんですよね。
ヒトの体重は糖質の量に左右される?
といったところで、こんなご質問をいただきました。
2013年に「体重増加の原因は糖質摂取量」という論文が出ていたようです。システマティックレビューなので信頼性も高いと思うのですが、どうお考えでしょうか?
ご指摘の論文(1)は、 世界5大医学雑誌であるBMJに出たもの。30件の実験データと38件の観察研究をまとめた調査で、かなり科学的な信頼度が高い内容になっております。
その結論は、
特にカロリー制限を行わずに暮らす人たちにとって、遊離糖と遊離糖で味つけしたドリンクの摂取は、体重の決定要因である。
というもの。 ヒトの体重は糖質の量に左右されるんだ!と言い切ってますね。これだけみると、確かに「やはり砂糖こそがデブの原因!怖い!」って意見も出てきちゃいそうですが、もうちょいくわしく見てみましょう。
加工食品や外食の糖質はヤバいが…
まず、ここで大事なのが「遊離糖ってなに?」ってとこでしょう。論文の定義を見てみると、
食品メーカーや料理人、消費者が食品にくわえるすべての単糖類と二糖類、またはハチミツ、シロップ、フルーツジュースなどに天然にふくまれる糖類
って感じになっとります。つまり、おもに料理や加工食品なんかに追加で使われる糖分を意味してまして、たとえばイモやフルーツなんかにふくまれる天然の糖なんかは遊離糖じゃないんですな。なので、この論文で言う「糖質量」は、すべての糖質の合計ではなかったりします。
というわけで、この研究者が言いたかったことをざっくり言い直すと、
- 加工食品や外食から糖質をいっぱい摂ってるヒトほどデブな傾向があるよ!
みたいな話です。厳密には自炊でも砂糖を使いますが、おもなカロリー源は加工食品が外食なので、大筋はこんなところです。
なんだかんだでカロリーが大事といういつもの結論
さらに、この結論は、あくまで観察研究から出てきたデータでしかないのも注意ポイント。論文ではランダム化比較試験のデータもまとめてまして、こんな結論を出しております。
- 遊離糖で体重が増えるのは、カロリーを制限せずに好きに食べてもらったときだけ
- カロリーを調整した場合は、遊離糖を食べても体重は増えない
つまり、結局は体重の増減を決めるのはカロリーなんだ、と。まことに常識的な結論ですね。
というわけで、このデータから「体重増加の原因は糖質摂取量」と言っちゃうのは誤解をまねきやすいかも。あくまで加工食品から砂糖をとり過ぎちゃダメだよ!って話ですので。
トータルの糖質量が多いほど体重は少ない傾向が
ちなみに、「じゃあトータルの糖質の摂取量はデブと関係があるの?」って疑問もわきましょうが、これはいまのところほぼ否定されております。たとえばジェームズ・ヒル博士が1995年に出したレビューによれば、
糖質、とくに精製された砂糖は、肥満の原因だとみなされている。しかし、実際の疫学データを見れば、この主張は間違いだ。ほぼすべての研究データは、高炭水化物や砂糖が多い食事をとる人ほど体重が少ないことを示している。しかも、この相関関係は決して小さなものではない。
とのこと。実際のところ、「糖質をとるほど逆に体重は少ない!」って観察データのほうが多かったりするんですよね。
そんなわけでポイントをまとめると、
- 加工食品や外食で糖質をとりすぎるとヤバい!
- ただし、それはあくまで食べ過ぎちゃうのが原因
- 肥満の原因はあくまでカロリー
っていう当たり前のお話でした。しかし、最近はWHOが「遊離糖の摂取を減らそう!」ってアナウンスを出してますし、そのへんは意識しとくといいかも。どうぞよしなに。