抗生物質はどれぐらい長期間にわたって使い続けるとヤバいのか?
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「抗生物質の使い過ぎはヤバい!」とよく書いております当ブログ。とはいえ、抗生物質は多くの命を救った大発明ですし、まったく使わないのも不可能でしょう。腸にダメージをあたえないていどに、ほどよく付きあっていくのが大事。
といったところでかなり参考になりそうなのが、近ごろセルに出た論文(1)であります。
肥満の男性57名を対象にした実験で、以下の3グループにわけて7日ほど抗生物質を飲んでもらったんですね。
- バンコマイシン:50年代に開発された抗生物質でグラム陽性菌に効く(結核とか破傷風とか)。1日1,500mgを飲む
- アモキシシリン:70年代に開発された抗生物質で、バンコマイシンより安全でいろんな症状に効く。1日1,500mgを飲む
- プラシーボ:糖質が入っただけのカプセルを1日1,500mg飲む
とりあえず、一週間の投与でどれぐらいの変化が出るかをみたわけですね。
で、7日後に全員の便や血液を調べてわかったのが、
- バンコマイシンを飲んだ参加者は、やせ菌(バクテロイデス)の量が減少。2カ月後の再チェックでも、腸内細菌はもとにもどっていなかった。ただし、アモキシシリンを飲んだ参加者には明確な差が出なかった。
- インスリン抵抗性には影響が出ていなかった。ご存じのように、インスリンは血糖の代謝をコントロールする大事なホルモン。7日ぐらいの抗生物質では、インスリンの効き方が変わるまではいかないみたい。
- 体重と体脂肪の燃焼には影響がなかった。7日後も体重や脂肪細胞のサイズには変化がなく、2カ月後も同じだったそうな。同様に、脂肪や糖が燃えるスピードも、別に変わりはなかったとのこと。
- 体内の炎症物質のレベル(IL-6やTNF-αなど)はとくに上がっていなかった。ただし、プロテオバクテリアのような真菌は増えていたんで、もしかしたら炎症は起きていたのかも。
- リーキーガットのサインはみられなかった。体内の毒素レベルをしらべたところ、とくに腸に細かな穴が開いている兆候はなかったそうな。
- 短鎖脂肪酸は減っていた。短鎖脂肪酸は、バクテロイデスのような「やせ菌」が作り出す脂肪酸の総称。腸のダメージをいやす働きがあったり、食欲の暴走をおさえる働きがあると考えられております。実験では、バンコマイシンを飲んだ参加者のみ短鎖脂肪酸が減っていたそうな。
みたいな感じ。確かに腸内細菌にはダメージが出ているものの、そのせいで見た目や体内にまで影響が出るのはもうちょい先の話みたいですね。
もっとも、2014年に行われた実験(2)だと、1週間のバンコマイシンでインスリン抵抗性が4%も悪化!って報告も出てるんで、このへんはまだよくわからないところ(実験の質は今回のほうが高いですが)。
また、体重の変化については、過去の実験(3,4)によれば4〜6週間ほど抗生物質を使うと体重が増えたって話なんで、ざっくり1週間ならそんなに問題がないけど、1カ月も使い続けたらヤバくなっていく感じですかねぇ。かなり個人差が大きそうな話ですけど。
というわけで、インフルエンザの合併症対策みたいに、数日から1週間ぐらいの単位で使うならとくに問題はなさげ。マウス実験だと「数日でもヤバい!」って話でしたが、ヒトのほうが耐性は強いみたいですね。
逆に、炎症をおさえる目的などで、長いあいだ抗生物質を飲むのは考えたほうがいいかも。お気をつけくださいませー。