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やる気が出ないのは、難易度の設定が間違っているからだ!

Motivation

  

 「やる気が出ないのは、難易度の設定が間違ってるからだ!」って論文(1)がおもしろかったんでメモ。

 

 

「なんとかできそう」レベルの難易度がベスト

これはコロンビア大学の実験で、26名の学生を対象にしたもの。みんなに179種類の英単語を見せて、「すべてをスペイン語に訳してください」と指示したんですね。

 

 

そして、生徒たちのテスト結果を参考に、単語を以下の3グループにわけたんだそうな。

 

  • 難しすぎる
  • なんとかできそう
  • 簡単すぎる

 

そのうえで全員に単語の勉強をしてもらったところ、

 

  • 「なんとかできそう」レベルの勉強をしてるときに、もっとも参加者の集中力が持続した
  • 問題の難易度があがるにつれて集中力は下がっていく
  • 問題が簡単すぎると、集中力はガクンと下がる

 

みたいな結果だったんですね。この現象を、研究者は「学習の最近接帯」とよんでおります。

 

 



学習の最近接帯とは?

なんだか難しそうな名前ですが、超ざっくりいうと、

 

  • 作業が簡単すぎる=退屈になる=やる気が失せる!
  • 作業が難しすぎる=ビビッてしまう=やる気が失せる!
  • 作業がほどほど=いい調子で問題が解ける=やる気が出る!

 

みたいなシンプルな話です。メタ認知の研究で有名なジャネット・メトカフ博士が作ったモデルで、やる気と難易度の関係をグラフにするとこんな感じ。

RPLj

参照 http://www.columbia.edu/cu/psychology/metcalfe/RPL.html

 

要するに、高いモチベーションと集中力を保つには、赤く塗られたスイートスポットに難易度を設定するのが大事なんだ、と。スマホのゲームでも、ほどよい難易度のほうがハマリ度は高いですからねぇ。ちなみに、これはゾーンやフローの状態を体験するための条件とまったく同じですね。

 

 

やる気が出ないと思ったら難易度を調節!

研究者いわく、

 

人間の集中力は、デリケートなバランスのうえに成り立っている。問題そのものの難易度と、各自の知識や習熟レベルのバランスを取るのが重要だ。

 

学生たちの集中力が続かないのは、モチベーションがなかったり、学習の能力が足りないのが原因ではない。たんに難易度の設定が間違っているだけなのだ。

 

とのこと。これはかなり大事なポイントですねー。 

 

 

この知見を現実の世界に活かすならば、

 

  1. やる気や集中力の低下を「難易度の設定が間違っているサイン」としてとらえる
  2. 目の前の作業の難易度が高すぎるか低すぎるかをチェック
  3. ほどよい難易度に調整する

 

ってステップになりましょう。かくいうわたしも、難しい文献を読むときは一気に集中力が切れてしまうんですが、そんなときは「とりあえず結論だけは読んでみる!」とか「実験のデザインだけは理解する!」といった感じで難易度を調整しております。

 

 

とりあえず、「やる気が出ないと思ったら難易度を調節!」と心がけておくだけでも、ムダに時間を浪費せずにすむんじゃないでしょうか。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。