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野菜に入ってる悪い成分?「抗栄養素」入門

Swiss

 

当ブログでは、よく「抗栄養素」ってワードが登場します。

 

 

その名のとおり栄養の吸収をジャマする成分のことで、ホウレン草やナッツ類のように、カラダにいいと言われる食材にも多く入ってたり。

 

 

そのおかげで、一部の肉好きダイエッターから「野菜は体に悪い!肉で十分!」なんて説が出る根拠にもなっております。

 

 

もちろん「野菜が体に悪い」なんて話を支持する学者はいませんけど、「体に良くない成分が野菜に入っている」と言われれば、気になってしまうところではあります。

 

 

というわけで、代表的な抗栄養素の働きをざっくり見ていこうかと。

 

 

代表的な10の抗栄養素 

1.プロテアーゼインヒビター

タンパク質分解する酵素の働きをジャマする成分。こいつを多くとると、カラダがアミノ酸を吸収しにくくなっちゃうんですな。

 

 

プロテアーゼインヒビターはいろんな野菜にふくまれてまして、とくに多いのが豆類と種子類。あとはキュウリやブロッコリー、ホウレン草のようなカラダに良い野菜にも豊富に入っております。

 

 

2.レクチン

おもに豆類やナッツ類なんかに多い抗栄養素。くわしくは「『レクチン』には、どこまで気をつけるべきか」に書いたとおりでして、そこまで怖がる必要もないんですが、腸が弱い人には結構なダメージ(1)がありますんでご注意ください。

 

 

とくに免疫系が弱い人800名を対象にした実験(2)だと、レクチンの多い食事で体内の炎症マーカーが激増したとか(TNFアルファ)。リーキーガットの自覚がある方は、豆類はひかえたほうがよさげ。

 



 

3.アミン類

食品が発酵や腐敗するときなどに発生する成分。いろんな種類があるんですが、なかでも有名なのはヒスタミンでしょう。アレルギー性鼻炎の人にはおなじみすっね。

 

 

わたしもそうなんですが、世の中にはヒスタミンに弱い体質の人がいまして、「ヒスタミン不耐症」などと呼ばれております。

 

 

くわしくは「その体調不良は「ヒスタミン不耐症」かも?」をご参照いただければと思いますが、体内のヒスタミンレベルが多くなると一気に体調が悪くなっちゃうんですな。

 

 

ヒスタミンが多い野菜は、アボカド、ナス、 ホウレン草、トマト、キャベツ、ナッツ類あたり。これまたリーキーガットとの関連性も指摘されてまして、腸が弱い方はご注意を。

 

 

4.タンニン

お茶やワインなんにふくまれる渋み成分であります。

 

 

もちろん、タンニンはポリフェノールの一種なんで、ほどよくとってればメリットのほうが大。ただし、いっぽうでは消化酵素をジャマする作用もありまして(5)、とりすぎると害が出てきちゃう。

 

 

おもにベリー類、ナッツ類、コーヒー、お茶、ワインなんかに豊富なんで、コーヒーをがぶ飲みしてるような方はご注意ください。

 

 

5.サリチル酸

サリチル酸はスパイスとかによく入ってる成分。炎症をやわらげる作用がありまして(6)、ニキビの治療薬なんかにも使われております。

 

 

が、これまた生まれつきサリチル酸に弱い人がおりまして、「サリチル酸不耐症」と呼ばれております(7)。推定では全人口の1〜2%ぐらいだと言われてますけど、くわしいところは謎。

 

 

これも、リーキーガットな人ほどサリチル酸に弱い傾向がありそうなんで、ご注意ください。

 

 

6.シュウ酸

葉物野菜やフルーツ全般、ナッツ類なんかに入っている成分。体内でカルシウムとくっついて、腎結石を引き起こす原因になったりします。

 

 

とっても、「ほうれん草のシュウ酸で結石ができる?」にも書いたとおり、たいていのシュウ酸は吸収されず、あまりも腸でうまく処理してくれるんで、そこまで心配する必要はなし。

 

 

ただし、過敏性大腸炎のように腸の働きがよくないと、結石ができやすいこともわかっております(8)。これまた腸のコンディション次第ですね。

 

 

7.トリプシンインヒビター

小麦なんかに多く入ってる成分。トリプシンはすい臓から出てくる消化酵素で、タンパク質を分解する働きをしております。

 

 

トリプシンインヒビターは、この働きをジャマしちゃうんで、分解されなかったタンパク質が腸を荒らすことに(9)。その結果として腸に炎症が起きちゃうことが知られております。

 

 

これまた、腸の状態がヤバい人にとっては辛い成分のひとつですねー。

 

 

8.FODMAP

腸で消化されにくい糖類や食物繊維の総称。くわしくは「FODMA入門」に書いたとおりでして、人によっては慢性疲労やアレルギーを引き起こしたりします。

 

 

FODMAPに弱い人がいる理由はよくわかってませんが、こちらもリーキーガットとの関連が言われております。

 

 

9.フィチン酸

小麦や玄米に入っている成分で、亜鉛やマグネシウムといった大事なミネラルの吸収をブロックしちゃう働きを持っております。

 

 

が、いっぽうでは抗酸化作用があったり(10)、炎症をやわらげる効果もあったり(11)で、めっちゃ体にいい働きもしてくれるのが悩ましいところ。

 

 

基本的にはちゃんと水にひたせば量が減るんで、そこまで心配しなくてもよいかとは思いますが。

 

 

10.グルテン

小麦にふくまれるタンパク質の一種で、いまも「体に悪い!いや、問題ない!」の議論が続いております。

 

 

とりあえず、腸が弱い人には悪影響が大きいのは確実みたいなんで、心あたりのある方はパンなどはひかえたほうがいいかも。

 

 

まとめ

というわけで、有名な10の抗栄養素を見てきました。おわかりのように、必ずしも抗栄養素だから体に悪いってわけでもなかったりします(というか逆に体にいいものも多い)。 

 

 

なので、とにかくいろんな種類の野菜を食べて、特定の抗栄養素ばっかり摂取しないように気をつけるのが吉でありましょう。投資の世界では「卵をひとつのカゴに入れるな」などと言いますが、同じように栄養の世界でもリスクを分散させるのが大事

 

 

以上のことから大事なポイントをまとめると、

 

  • たいていの抗栄養素は、水にひたすかお湯で煮込めば問題なくなる(12)
  • いろんな種類の食材を食べたほうが全体的なリスクは減る
  • ただし腸の状態が悪いと、どんなに少量の抗栄養素でも悪影響が出る

 

といったところです。まずは何にせよ腸を改善しよう!ってことですねー。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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