狩猟採集民に学ぶ「体の最適化に必要な1日運動量」とは?
最適化された体に必要なベストな運動量とは?
拙著「パレオダイエットの教科書」では、主に現代人の観察データと、狩猟採集民の活動量の平均をもとに、1日のオススメ運動量を算出しております。大まかな結論としては、
- せめて1日30分か8,000歩のウォーキングぐらいはしてね!
って感じなんですけど、あくまでこれは「最低限」のレベル。脳と体の最適化を目指すパレオダイエッターとしては、「ベストな運動量」を知っておきたいところではあります。
狩猟採集民の運動量を徹底的に調べた
ってとこで非常に参考になるのが、近ごろアリゾナ大学から出た論文(1)。人類学者のデビッド・ライクレン博士が、タンザニアのハッツァ族の運動量を調べた研究であります。
ハッツァ族といえば、当ブログではおなじみの部族。「この狩猟採集民がすごい!」でも書いたとおり、いまもガチの狩猟採集生活を送る珍しいグループなんですな。つまり、ザ・パレオ。
研究では2パターンの調査が行われまして、
- 46人のハッツァ族に心拍計とGPSを着けてもらって日中の活動量を計測
- 198人の血圧と、23人の炎症レベル(CRP)とコレステロールをチェック
って感じ。これまでの研究は、狩猟採集民の暮らしを観察して「これぐらいの活動量だなー」と推測してたケースが多かったんで、今回のは定量的でいいですねー。
1日75分の早歩きがベストかも
それで何がわかったかと言うと、
- ハッツァ族の活動量はアメリカ人の14.8倍
- 1日に75分の中高強度身体活動(MVPA)を行う
- 18才だろうが60才だろうが1日の活動量は同じ
- ハッツァ族のコレステロール値や炎症レベルは完璧
って感じ。MVPAってのは、だいたい早歩きからランニングぐらいの負荷の運動(3〜6METSぐらい)ってことです。
一般的なガイドラインだと「一週間に150分のMVPAをしようね!」と言われるケースが多いんで、ハッツァ族は2日で先進国の基準をクリアしちゃってる計算ですな。どえらい差ですねぇ。
ついでに、ハッツァ族はおじいちゃんになっても若者と同じぐらい動いてるってのもナイスなポイント。年を取るとどんどん活動量が落ちていく先進国とは対照的っすね。
現代の運動ガイドラインはまだ不足している
ライクレン博士いわく、
ハッツァ族は、先進国にくらべて大量の時間を中高強度身体活動に使っている。(中略)200万年にわたって狩猟採集を続けてきた我々の祖先も、 長時間のMVPAに適応してきたのだろう。
とのこと。つまり、現代人が完全体を目指すには、現代の運動ガイドラインではまだまだ不完全。1日75分の早歩きぐらいはしとかにゃいかんのではないか、と。
って、体脂肪率が高めの人がいきなり75分の中高強度身体活動をすると死ぬので、少しずつ活動量を増やしていくのは必須。そのうえで、最終的には1日75分のMVPAを目指すのがよさげですなー。