受動喫煙も怖いが「受動ストレス」もかなり怖いぞーというお話
ネガティブを遠ざけろ!は正しいか?
ネガティブな情報との付き合い方に関するご質問をいただきました。
よく自己啓発本で「ネガティブなニュースを見ないようにしよう」とか「ネガティブな人を避けよう」みたいなアドバイスを見かけます。あれはどこまで正しいと思われますか?マイナスなニュースを見ないと気分はよくなるでしょうが、脳内がお花畑になってしまいそうな気もします。
とのこと。どこまでマイナスな要素から目をそらすべきか、と。
なかなか難しい問題ですが、確かに「ネガティブを遠ざけろ!」ってアドバイスにも一理はあるかと思います。というのも、ここ数十年で「いかに人間はネガティブな情報に影響を受けやすい動物か」って研究が増えてきたもんですから。
人間は周囲のネガティブに飲み込まれやすい生き物
古典的な例だと1993年の実験(1)が有名で、「いかに人の感情は伝染するか?」を調べたもの。ざっくり言うと、周囲にネガティブな人が多いと、そのうち自分の表情や姿勢も変わり始め、さらには声の出し方までくらーい感じに変化。最後には、大半の参加者がすっかりネガティブ思考に飲み込まれてしまったらしい。
そもそも人間は社会的な動物なんで、どうにかして周囲に同化するように進化してきたんですよね。おかげで、他人のネガティブな影響にも敏感になってしまったわけですな。
受動ストレスに気をつけよう!
このあたりの研究は他にもいろいろありまして、
- 他人のネガティブな感情にさらされた参加者は、脳の海馬(記憶と推論に大事なエリア)の活動が低下した(2004年,2)
- ネガティブな人を見た参加者は、たった2分で脳の働きが低下した(1981年,3)
- ストレスがたまった人の映像を見た参加者は、それだけでコルチゾールのレベルがあがった(2014年,4)
などなど。ネガティブな人を見ると、自分も嫌な気持ちになるだけでなく、実際に脳の機能までダメージを受けちゃうみたい。いわば「受動喫煙」ならぬ「受動ストレス」ですな。
ネガティブの感染力はポジティブの7倍
また、「受動ストレス」が難しいのは、基本的にネガティブはポジティブより強いから。たとえば2003年のマサチューセッツ論文(5)では、一般的なオフィスでの受動ストレスを調べたところ、ネガティブな感情はポジティブな感情の7倍も感染力が強かったそうな。
多くのデータでは、直にネガティブな人が前にいなくても、たんに画像や動画だけで「受動ストレス」の害は発生しちゃう感じ。そう考えると、
- ツイッターで他人のケンカをみた
- テレビで「疲れきったサラリーマン」の映像を見た
なんてことでも、脳と体に悪影響が出ちゃう可能性は高そう。その点で「ネガティブを避けよ!」ってのはアリじゃないでしょうか。
なにせネガティブの影響は想像以上に強いんで、よほど遺伝的に楽観的じゃない限りは、脳内がお花畑になる可能性も低いのではないかと。特に私のように不安傾向が強い人は、SNSとかは見ないほうがいいように思います。
まとめ
といっても、つねにネガティブな人や情報を避けられるわけでもないでしょうから、ある程度は対策を知っておいたほうが吉。具体的には、
- 短期的な対策:ネガティブな感情を「やる気が出てきたぞ!」と思い込んでやり過ごす方法。さらに具体的には「不安の良さを活かすための3つのポイント」をどーぞ。
- 長期的な対策:瞑想などで「観察者の視点」を鍛え、ネガティブな人や情報を他人事のように見つめるクセをつけていく。
って感じでしょうかねぇ。もっとも「受動ストレス」に関しては、三十六計逃げるにしかずですんで、逃げられる場面では、ガマンせずにすぐに逃げちゃうことをオススメします。