やる気をキープさせ続けるためには「タスクシフト」が大事だぞーみたいな話
意志力は本当に減るのか問題
当ブログを長くお読みの方であれば、ここんとこよく「意志力って実は使ってもすり減らない」って話を書いてるのをご存じでしょう。意志力ってのは、簡単に言えば目の前の欲望を抑えて長期的なタスクに取り組める能力のことです。要はセルフコントロール能力と同じようなもんですな。
ざっくり言えば、これまで「WILLPOWER 意志力の科学」などでは「セルフコントロール力は使えば使うほど筋肉のように疲労していく」ってのが定説だったのが、どうも近年の追試では確認されないケースが多く、ちょっと怪しくなってきたよー、みたいな内容です。
オンライン学習で意志力の変動をチェックした
直近のデータだと、インド人は意志力を使うほうが逆にセルフコントロール能力があがるってデータも出てたりして、なかなかおもしろいところ。要は意志力が減るように見えるのは、たんに思い込みとモチベーション変動のせいだって考え方であります。
まぁいまのとこどっちが正しいかはまだわからんのですが、新しく出たデータ(1)では、また「意志力は減らない!」派に有利な内容になっておりました、
これはトロント大学の調査で、17,621人の学生を対象にしたもの。実験期間は17週間で、全員に学校の勉強や試験対策用のオンラインプログラムを受けてもらい、それぞれの参加者がどれだけアクセスを続けたかをチェックしたらしい。
1日を通して意志力の低下は確認されなかった
それで何がわかったかと言えば、まず意志力の低下については、
もちろん誰でも特定のタスクを長時間やり続ければ疲れるものだが、いっぽうで1日を通してタスクをやりとげる能力やモチベーションが減っていくという証拠は見つからなかった。
これは、従来のセルフコントロール実験がすべて間違いだったという意味ではない。しかし、少なくとも今回の調査では、意志力が減る現象は確認されなかった。
とのこと。やはり今回の追試でも、意志力が減っていくような現象は確認されなかったみたい。
ひとつのタスクをやり続けると意志力は下がる
それでは、代わりに何がわかったかと言えば、
- 記憶力をよく使うようなタスクを続けるほど参加者のパフォーマンスは低下した
- たいていの参加者は30分あたりから能力の低下が始まり、50分で完全にセルフコントロール能力はグダグダになった
みたいな感じです。つまり、パフォーマンスが下がるような事態が起きても、それは意志力が筋肉のように消耗したわけではなく、単に脳への負担が大きいタスクを長く続けたのが原因なのではないか、と。うーん、実にシンプルな結論ですね。
実際、この実験では、ひとつのタスクを行なって消耗した参加者でも、ほかのタスクに切り替えたら再びモチベーションとパフォーマンスが向上する傾向が見られたとか。意志力が減ったと思っても、実はちゃんと別のモチベーションが眠ってるわけですな。
マルチタスクじゃなくてタスクシフトが大事
もちろん、これは「マルチタスクをすると生産性が下がる」ってのとは別の話で、あくまでひとつのタスクに対してはすべての注意力とエネルギーを注ぐのがベスト。要は一回の作業のなかで注意力を分散させるんじゃなくて、集中したひとつのタスクを別のタスクに切り替えよう!ってことですね。いわばマルチタスクではなくてタスクシフトが大事、という。
つまり今回の実験から教訓を得るならば、
- 私たちは1日を通してひとつの作業をやり続けられるだけのモチベーションはない
- ただし、タスクの内容を別のものに変えるか、作業時間をちゃんと最大50分までのブロックに分割すればセルフコントロール能力とモチベーションは復活する
って感じでしょうか。もちろん、いっぽうでは「いろんなタスクをやるごとに意志力は減る」ってデータもかなりあるんですけど、今回の実験は現実的なセッティングを用意して24時間ごとの意志力変動をチェックしたのが強みですね。
さらに、2013年の実験ですと、「意志力は使うほど減る」と思ってる人は本当にセルフコントロール能力が下がるって話なので、あんま意志力が低下するかどうかは気にしないほうがよさげ。それよりも自分のモチベーションをちゃんとマネージメントできるようなタスク調整を行なったほうが実りは大きそうな気が。