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今週の小ネタ:筋トレ前のストレッチは効果的?、人間は失敗から学べるのか?

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ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。   

  

筋トレ前のストレッチはアリかナシか問題:リローデッド

運動前のストレッチはすべき?って問題は悩ましいポイントでして、

 

 

ってな見解があるいっぽうで、

 

 

といった報告も出てまして、なかなか判断が難しかったりしたんですよ。なので、現時点では「まぁストレッチにはたいした意味がないかもだけど、好きならやればいいのでは?」ぐらいのところに個人的には落ち着いております。

 

 

そんな状況下、また新たに「筋トレ前のストレッチはアリかナシか?」について調べてくれたデータ(R)が出てまして、参考になります。これは筋トレをほとんどやってない45人の男性を対象にしたテストで、いままでのストレッチ研究となにが違うのかと言いますと、

 

  • ストレッチの指示が現実的

 

ってのがポイントになってます。というのも過去の研究は1回のストレッチに60〜90秒ほどかけてるケースが多くて、あんま現実的な数字じゃなかったんですよ。1回のストレッチに1分も費やす人は少数派ですもんね。

 

 

それにくらべて今回のデータは「1回の動作について20秒のストレッチ」で効果を検証していて、より正しく現実を反映していると考えられるわけです。具体的にどんな実験だったかというと、

 

  1. 参加者には週2回の筋トレを8週間やってもらう(4セット、8-12RM、休憩は90秒)
  2. 参加者のうち3分の1には、筋トレの前に1回20秒の動的ストレッチを合計80秒やってもらう
  3. 別の3分の1には、筋トレの前に1回20秒の静的ストレッチを合計80秒やってもらう
  4. 残りの3分の1はストレッチをしない

 

って感じで効果を調べたところ、

 

  • 8週間後における筋肉と筋力の発達は、すべてのグループで変わらなかった!

 

だったそうです。つまり、筋トレ前のストレッチは、一般的なレベルであれば害がないんじゃないか?って結論ですね。まぁこれはまだ小規模な研究ですし、別にストレッチのメリットが確認された訳でもないんで、結局のところ「好きならやればいいのでは?」という結論は変わらないのですが。

 

 

 

本当に「失敗は成功の母」なのか?問題

「失敗は成功の母」などと申しまして、「若いころの失敗が10年後の成功をもたらすかも」なんて話を近ごろ取り上げたばかりですが、新しいデータ(R)は「人間は失敗から学ぶのが苦手な生き物だ!」という結論が出てておもしろいことになっておりました。

 

 

これは1,674人の男女を対象に5件の実験をした内容になっていて、そのうちひとつを紹介すると、

 

  1. 電話勧誘販売をやってる人たちを集めて、「これから皆さんの仕事に欠かせない情報をお伝えするので、できる限り学習してください」と伝える
  2. 電話販売に関する10問のクイズを出す(「粗悪なカスタマーサービスのせいで、アメリカの企業は年にどれぐらいの損害をこうむっていると思いますか? 900億ドル? それとも600億ドル?」みたいな)
  3. 参加者の半分には「正解した問題」だけをフィードバックし、残りの参加者には「間違った問題」だけをフィードバックする
  4. その後で再テストをして、両グループの成績にどれぐらいの差があるかを調べる

 

みたいな感じになってます。当然ながら、正解だけを伝えられたグループは「成功」だけを強く意識し、不正解だけを伝えられたグループは「失敗」だけを強く意識させられたわけっすね。この意識の違いが、学習結果に差をもたらすのか?ってことですな。

 

 

すると、結果にははっきりした違いが出まして、「失敗」を意識させられた人の方が全体的に学習能力が落ちており、テストの成績も悪かったんだそうな。これは2つめの実験でも同じで、被験者に「テストに正解したらお金をあげるよー」と申し出た場合でも、やはり「失敗」を意識したグループは成績が悪かったみたい。

 

 

こういった現象が起きた理由については、おそらく「失敗」で自尊心が低下し、そのせいで失敗から学ぶ気持ちが失せてしまうからだろうと推測されております。まぁ言われてみりゃそんな気もしますな。

 

 

実際のところ、この研究で行われた5つ目の実験では、

 

  1. 参加者に「他人の失敗」を観察してもらう
  2. その上で知識テストを行う

 

って手順で介入を行ったところ、今度は「失敗」を意識した参加者たちも、ちゃんとテストの成績が上がったというからおもしろいもんです。要するに、失敗が「他人事」だった場合は自尊心が脅かされないので、ミスを肥やしにする気持ちが働き出すわけですね。これまたわかりやすい心理ではないかと。

 

 

こうなると、「若いころの失敗が10年後の成功をもたらす」って話との食い違いが気になりますが、個人的には「期間の違いかなー」とか愚行しております。この実験みたいに短期の失敗だと自尊心が邪魔しちゃうけど、10年も過ぎれば過去の失敗と距離を置けるようになり、ようやく合理的な判断ができるようになるのではないか、と。

 

 

まぁそのへんはよくわからんですが、「短期間の場合には失敗から学べなくなることもある」って話は知っておくといいかもですねー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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