NMNって本当に老化に効くの?問題をちょろっと考えてみるエントリ
いろんな方から「NMNってどうですか?」と聞かれたので軽くまとめまーす。
NMNは前にもチラッと書いたとおり「アンチエイジングにきくのでは?」と言われる物質のこと。体内でNAD+って分子に変わりまして、細胞のエネルギー生産、DNA修復などを行うと言われてるんですよ。こいつを補給した酵母、ワーム、マウスの寿命がのびたって報告が増えてまして、最近はデビッド・シンクレア博士の「LIFESPAN(ライフスパン): 老いなき世界」で一気に有名になった感じっすね。
実際、シンクレア博士は「まだまだ研究が必要」と言いつつも自身はNMNを飲んでるそうで、なかなか気になっちゃうところなわけです(まぁシンクレア博士は他人にはおすすめしてない感じですが)。
とはいえ、動物実験がそのまま人間に転用できないのは当たり前で、現時点でどんな研究があるかと言いますと、ヒトを対象にしたデータは近ごろ1件(R)が発表されたぐらい立ったりします。これは主に慶應大学の先生方が手がけたもので、健康な日本人男性10名にNMNを100mg、250mg、500mgの3種類の量を1回ずつ投与したんだそうな。
ただ、これはあくまでまだ第1相試験ってやつでして、
- NMNのサプリを飲んでも安全なの?
ってのを確認しただけ。具体的にNMNが抗老化に役立つのかどうかはまだ調べてない段階ですんで、くれぐれもご注意ください。
ちなみに、現段階ではいずれの量も副作用なかったそうで、「健康な男性では500mgまでなら安全っぽいよ」って結論になってます。第2相試験では、いよいよ有効性や適切な用量と頻度を検討するそうなんで、いまんとこは「海のものとも山のものともつかん!」としか言いようがないっすね。
が、これだけだとつまんないので、いちおう「NR」についても触れておきましょう。NRもNMNと同じく体内でNAD+に変わる物質で、やはり動物実験などでは寿命の延長効果が確認されてたりします。実はNRのほうがヒトの研究は進んでまして、「NMNは本当に効くか?問題」を考える参考にしやすいんですよ。
具体的にいくつか見ていきますと、
- 32名のALS患者にEH301を1200mg、またはプラセボを4ヶ月間投与したところ、EH301を投与されたグループでは、ALSの症状、肺機能、筋力、筋脂肪重量比に有意な改善が見られた(R)
- 70~80歳の男性12人が21日間にわたって1日1000mgのNRサプリメント(NIAGEN®)を摂取したところ、NRにより筋肉中のNAD+が増加え、抗炎症作用も確認された(R)
- 健康な男女24人のうち半数に1,000mgのNRカプセルを投与したところ、プラセボと比較してNAD+のレベルが60%上昇し、血圧や動脈硬化が低下する可能性も示された(ただし有意ではない)(R)
- 肥満でインスリン抵抗性が悪化した男性40人のうち半数に1日2,000mgのNRを12週間投与したが、インスリン感受性、グルコース代謝、安静時エネルギー消費量、脂質代謝、体組成などに違いは見られなかった(R)
といった報告が出てたりします。悪くない結果とどうでもいい結果が混在していて、どうにも判断が難しい感じっすね。
とりあえず、NRについて言えそうなのは、
- NRサプリメントは安全性は高そうだし、NAD+レベルを上げる可能性も大きい
- とはいえ、なんせ長期研究が全くないのでNAD+レベルの上昇が実際に抗老化につながるかは謎
ぐらいのもんですかね。こちらはNMNよりデータは多いものの、まだサプリに飛びつくには早いよなーってとこでしょう。
そんなわけで、以上の話をまとめると、
- 「NMNのサプリを飲んだ方がいいですか?」って質問には「まだ様子見で!」と答えたい
- 少なくとも慶應で行われてるテストが完全に終わってからでも遅くはない
ぐらいの話になるでしょう。「いまの段階でNMNサプリにお金を出すのはかなりのギャンブルだ!」ってとこだけ押さえていただければいいんじゃないでしょうか。