新型コロナのストレスに強くなるための「終末系」ホラー映画ガイド
https://yuchrszk.blogspot.com/2020/10/blog-post_5.html?m=0
こないだ「老人は新型コロナのストレスに強い!」みたいな話を紹介しましたけど、今度は「ホラー映画好きは新型コロナのストレスに強い!」っていうナイスデータ(R)が出てておもしろかったです。まだ査読前なんで精度はちょっと落ちますけど、あり得そうな話だったんで紹介しときましょう。
これはシカゴ大学などの調査でして、310人の男女を対象に「怖い映画は好きか?」と尋ねた上で、新型コロナに対するストレス耐性をチェック(PPRSを使用)。これに加えて、
- 「新型コロナのパンデミックに対して、映画や小説で得た知識を使っている」みたいな質問をぶつけて、どれだけ心構えができているかを調査
- 「もしあなたが中世にタイムスリップしたら、公開処刑を見てみたいですか?」みたいな質問をぶつけて、もともとネガティブなことへの興味が強いかどうかを調査
といったあたりもふくめて、参加者の趣味嗜好とパンデミックへの対応レベルを調べたんだそうな。
なんでこういう研究をしたのかというと、
- 人間が怖いものを好むのは、架空の恐怖体験によって現実世界のシミュレーションができるからでは?
って考え方があるからです。あらかじめ怖い映画を見ておくと、脳内で恐怖をモデル化できるんで、そのぶんだけ現実のマイナスな体験に強くなるんじゃないか?ってことですね。要は、ホラー映画は恐怖の脳トレになってるんじゃないか、という話です。
でもって、結果がどうだったかと言いますと、
- 予想どおり、ホラーやパンデミック系の映画を見ている人や、ネガティブなことへの興味が強い人は新型コロナのストレスに強かった
- なかでも「プレッパーもの」(ゾンビとかエイリアンの襲撃とか大災害とか人類の終末を描いた系統の映画)が好きな人は新型コロナへの心構えができていて、ストレスにも強い傾向があった
だったそうです。やっぱり怖いフィクションを見ると、恐怖への耐性が高まるみたいっすね。
チームいわく、
ホラー映画を長く見続けると感情コントロールスキルの育成に役立ち、不快な出来事にともなう心理的苦痛を改善しやすくなるかもしれない。
というわけで、ネガティブな状況に強くなりたければホラー映画を見よ!って感じで、長年のホラーファンとしてはまことに慶賀の至りと申しますか。
ちなみに、この研究では参加者がどんな作品を好んでたかまでは書いてなかったんで、個人的に「これは脳トレになりそうだ!」と思った「プレッパーもの」をダラーっとピックアップしておきます。あくまで私の主観ですが、いちおう上から「エグくない順」に並べてみました。
- トゥモロー・ワールド:人類がなぜ出産能力を失って滅亡に進んでいく映画。SFアクション系なので怖いわけじゃないものの、移民とかテロなどの要素も扱ってて「終末不安シミュレーター」として優秀。
- ショーン・オブ・ザ・デッド:イギリス産のコメディで、笑えるけど「大事な人がゾンビに!」展開の本質をきっちり押さえてて「離別の悲劇シミュレーター」として優秀。
- 新感染 ファイナル・エクスプレス:韓国産ゾンビ映画で、近年のパンデミックホラーでは一番おもしろい。危機的状況における「利他的な行動シミュレーター」として優秀。
- 28日後:完全に崩壊したイギリスでひとり取り残される男のビジョンがクールなパンデミックゾンビ映画。「終末の孤独感シミュレーター」として優秀。
- ミスト:異界から来た謎の生物に世界が占拠される終末ホラー。衝撃のラスト!みたいに宣伝されることが多い映画ですが、ほとんどスーパーマーケットの中だけで世界の終わりを実感させる演出が実はすごい。「追い込まれた人間の暴発シミュレーター」として優秀。
- スノーピアサー:気温変動で死滅状態の世界で、貧富に分かれた人間が殺し合う救いがない話。終末の「貧困格差シミュレーター」として優秀。
- キャビン・フィーバー:謎の感染症でバタバタと学生が死んでいくだけのヒドい話。70年代低予算ホラーのパロディになってまして、そこらへんの知識がないと全くおもしろくない可能性があるんでご注意ください(私は好きですが)。「パニックで人間の暗黒面むき出しシミュレーター」として優秀。
- エボラシンドローム~悪魔の殺人ウイルス~:人格が最低のダメ男が、やけになって中国中にエボラウイルスをバラまくというヒドすぎる話。R18レベルの描写が延々と続くので、耐性がない方は見ないほうがいいでしょう。「ダークトライアドに武器を持たせたらどうなるかシミュレーター」として優秀。