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今週半ばの小ネタ:サフランで睡眠改善? 内受容を鍛えるには? 大人の分離不安こわいこわい問題


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

  

 

 

サフランで睡眠の質が上がるかも?

サフランと言えば、このブログでも「実は抗炎症作用が高い健康食品」として取り上げてきたスパイス。日本だとサフランライスのイメージが強いものの、海外では普通に健康系サプリとして売られてたりもします。

 

 

でもって、新たな研究(R)は「サフランで睡眠が改善するかもしんないよー」って可能性を報告してまして、やっぱサフランすごいのでは?という気分になりました。

 


このRCTは「よく眠れないなー」って問題を抱えた男女102名を対象にしたもので、

 

  1. 寝る1時間前にプラセボサプリを飲む
  2. 寝る1時間前に14mgのサフランエキスを飲む
  3. 寝る1時間前に28mgのサフランエキスを飲む

 

って3グループにわけたうえで28日間の様子を観察しつつ、睡眠の質、総睡眠時間、眠りへの入りやすさ、夜中に起きちゃうかどうかなどを調べたんだそうな。

 

 

 

その結果を簡単にまとめると、

 

  • サフランを飲んだグループは、どちらも睡眠の質の評価が改善された。1回あたりのサフランの使用量は、睡眠の質に大きな影響をあたえなかった(つまり、たくさんサフランを飲めばいいってもんでもない)

  • 実験のスタート時と比べて、サフランのサプリは、14mgと28mgでそれぞれ24.60%と22.26%ずつ睡眠の質を改善した
  • また、サフランを飲んだグループは、目が覚めたあとの気分も改善。不眠症についても、実験のスタート時と比べて、14mgと28mgでそれぞれ22%と26%の減少が見られた。
  • プラセボと比べて、サフランを飲んだグループは夕方のメラトニン濃度の増加が認められた

 

みたいになってまして、個人的には「なかなか良さそうじゃないっすか」という感想でした。

 

 

ただし、もちろんこの研究には注意点がありまして、

 

  • 多重比較の調整を行ってないので偽陽性が出るリスクが高い(つまり、本当はサフランの効果がなくても効果があったような結果が出やすい)
  • 睡眠のチェックが自己報告式のアンケートばっかなので、ポリソムノグラフィーのような客観的な睡眠測定法を使ってくれるとうれしい

 

といったあたりは判断を難しくしてるところではないでしょうか。まぁサフラン自体の抗炎症効果はわりと確実なので、自分で試してみるかなーぐらいには思いましたが。

 

 

 

定期的な運動で内受容感覚が鍛えられそうだ

無(最高の状態) 」では、「内受容感覚を鍛えると楽になるよー」みたいな話をしております。内受容感覚について本書から引用すると、

 

「内受容感覚」は、さきほど説明した「臓器の感覚」を感知する能力のことです。もしあなたが呼吸のペースや心拍数、体温の変化を正確につかめないようであれば、内受容感覚は低いと判断されます。いわば内臓の脅威センサーが満足に働いていない状態です。

 

 身体の状態が感情に影響するのは先述のとおりですが、内受容感覚の不調もまた私たちの精神にマイナスの効果をおよぼします。「心拍や呼吸の変化など簡単にわかる」と思われそうですが、実は現代社会においては、肉体の変化を正しく察知できない人は意外なほど多いものなのです。

 

みたいになります。人間にはもともと体内の状態をモニタリングするセンサーみたいなものが備わってて、こいつが不調を起こすと脳が「自分の体がどうなってるかわからん!」とパニックを起こし、これがメンタルの不調につながっていくんですよ。人間の体ってよくできてますねぇ。

 

 

では、この内受容感覚を鍛えるにはどうすればいいのか?ってことで、新たに「中ぐらいの有酸素運動をしようぜ!」と結論づけたデータ(R)が出ておりました。定期的な有酸素運動は身体の健康にも脳の働きにも欠かせないんだけど、さらに内受容感覚にも効果を発揮してくれるみたいなんですな。

 

 

ざっくり実験デザインをまとめると、これは3カ月間の非ランダム化対照試験になってまして、健康な大学生48名を集めたうえで、

 

  1. 定期的に運動する
  2. 運動をしない

 

ってふたつのグループに割り付けたんだそうな。運動グループは、最大心拍数の50%でステッパーをふむ作業を1日30分ずつ週3日ほど行ったらしい。

 

 

でもって、それから1カ月ごとに心拍トラッキングタスクで内受容感覚をチェックしたところ、結果はこんな感じになりました。

 

 

  • 運動グループは、運動をしないグループより脳機能のスコアが高く、内受容感覚についても2ヵ月目と3ヵ月目で上昇が見られた(運動をしないグループは逆に低下した)

 

ということで、予想どおり、定期的に運動をしたグループは内受容感覚の増加が見られたみたいっすね。まぁ運動をしてますと、どうしても自分の肉体の変化に意識が向きやすくなりますから、このような結果が出るのは納得しやすいんじゃないでしょうか。最大心拍の50%で30分ならわりと取り組みやすいレベルですしね。

 

 

 

人と離れるのが怖すぎる!大人の分離不安に悩むのはどんな人?

子育てをしたことがある方なら、「分離不安」って言葉はなじみ深いでしょう。親から離された子供が極度の不安を覚えて、日常生活にも問題が起きちゃうような状態であります。

 

 

でもって、新しい研究(R)では、「大人にも分離不安はあるんだぜ!」って話になってておもしろかったです。大人の分離不安ってのは、パートナーや他の愛する人(ペットも含む)と離れることに極度の苦痛を感じる状態を意味する言葉であります。

 

 

これはコロンビア大学などの研究で、アメリカに住む609世帯を調べたデータを調査したもの。9年間にわたって定期的なアンケートを行って、

 

  • 愛する人と離れることへの不安はあるか?
  • 日々の気分の変動はどんなもんか?
  • それぞれの性格はどのようなものか?

 

といった要素をチェックしたんだそうな。そのうえで「分離不安が強い人ならではの特徴とは?」との問題を調べたところ、だいたい以下のような感じになりました。

 

  • 神経質で心配しがちな人ほど分離不安は強い(そりゃそうでしょうな)

  • 分離不安のスコアが高い人は、自分の「脆弱性」を強く感じている可能性が高かった(自分は弱い人間なのだ!って思いが強い)

  • 分離不安のスコアが高い人は、攻撃性のスコアも高い傾向があった(これは、好きな人が離れた時に絶望を感じ、これが攻撃性に変わるのだと考えられる)。一部の研究者は、このタイプの攻撃性が家庭内暴力のケースに関連している可能性を示唆している

 

  • 分離不安のスコアが高い人は、愛着のある人が離れると、自己の一部が離れていくように感じられ、それを苦痛として感じている(他人を自分の一部にしちゃってるわけですな)

 

いずれも納得の結果ですけど、「分離不安が他者への攻撃性につながってるかも」ってのは「言われてみればそうだよなー」って感じでありました。攻撃性の根っこにあるのって、だいたい恐怖と不安ですもんね。

 

 

まぁ、この研究は参加者のほとんどが中流の白人女性なんで、どこまで一般化できる結論かと言われればなんともかんともですけど、大人の分離不安研究ってあんまないので、とっかかりとしては非常によろしいのではないでしょうか。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。