第一印象を良くするためには「話を盛る」と「正直に話す」のどちらが良いのか?問題
初対面の人にできるだけ良い印象を与えたい!みたいな場面は誰にでもありましょう(面接とか)。このような状況でどうすべきか?と考えたときに、たいていは大きく見てふたつの戦略を使うことが多いんじゃないでしょうか。
- ちょっとだけ話を盛って自分を大きく見せる
- なるたけ正直な自分を見せる
ひとつめが相手に偽のシグナリングを送るのに対して、ふたつめは「こっちは素を見せるから、あとはそっちの希望に見合うかどうかを好きに判断してよ!」って態度で挑むやり方ですね。どちらも面接や恋愛の場でよく見かける手法だと申せましょう。
では、このふたつの戦略はどちらが良いのか?ってことで、ゲルフ大学のブルック・シャルボノー博士らが検証テスト(R)をやってくれておりました。
ここでは複数の実験が行われてますが、概要をざっくりまとめると、
- 仕事の面接を受けた大学生を集め、それぞれがどのような戦略を使ったかを尋ねる
- その回答をコーディングしつつ、みんなの性格特性、面接時における不安のレベル、面接のパフォーマンスと比べる
みたいになります。実際の面接試験を使って、「相手に良い第一印象を与えるにはどうすべきか?」ってのを調べたわけっすね。
で、まず最初の研究でなにがわかったかと言いますと、
- 「自分を正確に表現する」戦略を使っていたのは、全体のおよそ20%だった
ということで、意外とたくさんの人が正直戦略を使ってたみたいですね。ここで言う「正直戦略」ってのは、以下のような文章に同意できるかどうかで判断されております。
- 「私は面接の場で100%正直に話し、自分にはないスキルがあるとは言わなかった。私は自分の限界を理解しており、面接ではそれを正直に語った」
- 「私は自分の成績の良さに注目し、自分の能力と組織・ポジションの間に適合性があることを強調した」
要するに、決して話を盛ったり嘘をつくわけじゃないんだけど、もし自分が相手のメリットになりそうな要素を持っていた場合は、その点を強調する戦略を取ったわけですね。嘘はつかないが良い点はちゃんと伝えるやり方です。
いっぽうで「話を盛る戦略」は、以下のような文章に同意できるかどうかで判断されております。
- 「自分が希望する仕事やポジションについて研究し、その価値観に合うように答えを調整した」
- 「面接官が求めているものと一致するように答えを作った」
「話を盛る」というとネガティブな印象もありますけど、これぐらいなら誰でもやってそうなことではありますね。相手に応じて答えを変えるのが必ずしも悪いってわけじゃないですしね。
で、これらふたつの戦略にどのような違いが出たかと言いますと、
- 「正直戦略」を使う量が多い参加者ほど、「正直」「謙虚」というパーソナリティ特性と相関していた(これは当然でしょうな)
- 「正直戦略」が他の戦略より優れているという明確な裏づけは得られなかったが、とりあえず不安感については明らかな優位性が見られた(つまり、正直戦略のほうが面接でドキドキしないですむ)
だったそうな。「正直戦略」と「話を盛る戦略」があたえる第一印象に明確な違いはなかったものの、コミュニケーションの不安については正直なほうがいいんだよーってことですね。まぁ「いま話を盛ってるな……」ってのが頭の隅にあったら、そのストレスでドキドキしちゃうのはわかりますもんね。
また、「正直戦略」のほうが第一印象について明確な優位性がなかったのは、「サイコパスは魅力的な印象をあたえることが多い」って報告が昔から多いことを考えれば納得がいくところかもしれません。やっぱ人間ってのは、自信満々に話を盛ってくる相手の話は簡単に信じちゃうものなんですよね。つまり、話を盛ることがストレスにならない人の場合は、ガンガンに偽っても問題が起きにくいのだと申せましょう。
話をまとめますと、
- 嘘に心が乱されない人は、正直でも話を持っても第一印象に差はないかもしれない
- 話を盛る作業でドキドキしちゃう人は、不安のせいで第一印象が悪くなる可能性があるので正直にしといたほうがいい
みたいになりましょうか。ちなみに、私は肝の小ささでは人後に落ちない人間なので、正直戦略を心がけるようにしております。実際、昔はドキドキしながら話を盛って痛い目にあいましたしね……(これぐらいの締切なら余裕ですよ!みたいな)。