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最強エクササイズ「HIIT」の成果を爆上げする「ドロップ・トレーニング」の考え方



HIITを続けたいが辛い!」というお悩みはよく聞くところです。なんせHIITってのは「辛いからこそ効果が出る」タイプのトレーニングなので、そもそも辛くないと意味がないんですよね。

 

 

ただ、それでも「どうにかならないものか……」と考えちゃうのが人情でして、過去にも「HIITが辛すぎて続かないのですが、どうにかならないでしょうか?」なんて話を書いたりしました。HIITの辛さを根本的に解決するのは無理ですが、ちょっとだけやわらげるのは可能なんですよね。

 

 

で、そんな状況下、「ドロップ・トレーニングでHIITがはかどる!」という結論の研究(R)が出まして、非常に参考になりました。

 

 

ドロップ・トレーニングは私の造語ですが、簡単に言えば「少しずつ負荷を減らしていくエクササイズ」のことです。たとえば、

 

  1. 1セット目では、5分の全力スプリントをしたら、4分の休憩を取る
  2. 2セット目では、4分の全力スプリントを行い、2分の休憩を取る
  3. 3セット目では、3分の全力スプリントを行い、1分の休憩を取る
  4. 4セット目では、2分の全力スプリントを行い、30秒の休憩を取る
  5. 5セット目では、1分の全力スプリントを行い、15秒の休憩を取る。
  6. あとは、これを気が済むまでくり返す。

 

みたいになります。こんな感じで、少しずつエクササイズのレベルを下げていくのがドロップ・トレーニングの基本。普通に考えても、「あとになるほど運動が楽になっていくんだなー」と感じられたほうが、気分的に取り組みやすいのは間違いないでしょう。

 

 

では、このようなエクササイズには意味があるのかってことで、今回の実験を手がけた先生方は、参加者たちに3パターンのHIITをやるように指示しました。

 

  1. 長いHIIT:「3分のハードな運動 → 2分の休憩」サイクルを、疲れるまで繰り返す

  2. 短いHIIT:「30秒のハードな運動 → 20秒の休憩」サイクルを、疲れるまで繰り返す

  3. ドロップ・トレーニング:「3分のハードな運動 → 2分のハードな運動 → 1分のハードな運動 → 45秒のハードな運動 → 30秒のハードな運動」を疲労困憊するまで繰り返す。運動のあいだの休憩時間は、前のハードな運動の3分の2の長さに設定する

 

いずれも「ハードな運動 → 休憩」をくり返す点は同じですが、それぞれ時間の長さを変えることで、運動のパフォーマンスにどのような違いが出るのかを調べたわけですね。

 

 

すると、その結果はおもしろいもので、

 

  • ドロップ・トレーニングのグループが、もっとも高負荷で長時間の運動ができていた(579秒)
  • 他の2つのHIITは、ドロップ・トレーニングの半分ぐらいしか運動できていなかった

 

だったそうな。具体的には、ドロップ・トレーニングは、VO2MAXの90%を超える負荷を使いつつ、通常のHIITよりも倍の量を運動できていたようで、これは劇的な違いと言ってもいいんじゃないでしょうか。

 

 

ご存じのとおり、VO2MAXの90%以上ってのは体力の大きな向上が期待できる負荷でして、「もしかしたらドロップ・トレーニングって素晴らしいやり方じゃないの?」と考えられるわけです。要するに、ドロップ・トレーニングってのは、通常のHIITと同じレベルの生理的な刺激を得つつ、より楽に、より負担の少ないトレーニングができるんじゃないのか、と。

 

 

「なんでドロップ・トレーニングでこのような効果が得られるのか?」と言いますと、無酸素運動ってのは、疲労が大きいほどエネルギーの再充電スピードが速くなる傾向があるからです。簡単に言いますと、

 

  • 軽度の疲労があるときに1分間の休憩を取ると、無酸素運動の能力は80%から85%ぐらいしかアップしない
  • 一方、体が疲れ切った状態で1分間の休憩を取ると、無酸素運動の能力は10%から50%ぐらいまでアップする

 

みたいな感じです。つまり、疲労しているときの方が、私たちの回復力は高くなるんですね。

 

 

したがって、ワークアウトを始めるときはハードな運動のインターバルを長くしておき、疲労が蓄積するにつれて短いインターバルと頻繁な回復にシフトしたほうが体を効果的に使うことができるわけです(疲れているときほど無酸素運動の能力をより高速で充電できるので)。うーん、なるほど。

 

 

というわけで、私も今後はこの考え方を採用しつつ、HIITのルーチンを変えていこうかと思っております。どれぐらいのインターバルにするかな……。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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