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心を鍛えれば身体も強くなる?瞑想が持久力パフォーマンスを向上させる理由とは


 

かつて栄華を誇ったマインドフルネスの人気も今や昔。いまではだいぶ話題に上らなくなりまして、メンタルヘルス系のサイトでも、あんまし話を聞かなくなった気がしております。

 

とはいえ、今も水面下ではマインドフルネスや瞑想に関する研究は少しずつ進み、知見が蓄積され続けてはいるんですよ。その最新の例として、今回は国立台湾師範大学のチームが行った研究(R)を見てみましょう。

 

この研究は、瞑想の経験があるアスリートとないアスリートの2つのグループを比較したもので、だいたい以下のようなデザインで実験を行っております。

 

  1. 瞑想のトレーニングをしている人24名と、瞑想の経験がない人25名を集める。瞑想のトレーニングをしていた者は、週平均41.7分間瞑想を行い、少なくとも週1回、1年以上続けていたとのこと。


  2. また、すべての参加者はアスリートで、陸上、柔道、レスリングなど、やっている競技はさまざま。 平均年齢は20歳前後で、週に平均16時間トレーニングを行っていた。


  3. 研究では、みんなに数字の羅列を記憶するテストをやってもらって、参加者の認知機能をチェック。その後、全員にストループテストを指示してメンタルを疲れさせ、さらにトレッドミルで走らせて肉体を疲労困憊に追い込む。

 

このような実験で何がしたかったかと言いますと、要するに「瞑想によって持久力のパフォーマンスは上がるか?」って問題について調べたわけです。精神と肉体をヘトヘトにさせた時に、瞑想をやってる人とやってない人で違いが出るのかをチェックしたんですな。

 

では、研究の結果を見てみましょうー。

 

  • 瞑想経験のないアスリートは、瞑想経験があるアスリートよりも、トレッドミルの持久走テストで4パーセント早くギブアップした。コンピュータテストでも同じような結果が得られた。

 

  • 瞑想をしていない人は精神が疲労するとパフォーマンスも下がったが、瞑想をしている人には同じ現象が見られなかった。

 

ということで、普段から瞑想をやっている人は、精神が疲れにくいので、そのせいで身体的なパフォーマンスも低下しづらいらしい。メンタルの疲労で身体のパフォーマンスが下がる現象は昔からよく知られてますが、これを普段の瞑想が防いでくれるかもしれないわけですね。

 

瞑想で持久力がアップする理由としては、だいたい2つの考え方が提示されております。

 

  1. 瞑想をやる人は脳の抑制機能(これは違う!と思ったら瞬時に止められる能力)が優れているので、精神的な疲労が起こりにくいのだと考えられる。そのため、精神疲労による身体パフォーマンスの低下も起こりにくい。

  2. 瞑想をやってる人でも精神的な疲労は起きるんだけど、やはり脳の抑制機能が優れているおかげで疲労を振り払うことができ、それによってトレッドミルを走り続けることができる。

 

これらの理由のどちらかが正しいというよりは、データを見ると、両方の要素が少しずつ働いている感じですね。いずれにせよ、瞑想をやってる人が精神的に疲れにくいってのはあるんでしょうな。

 

ちなみに、この文献を読んでも「持久力高めるための瞑想トレーニング法」はよくわからんのですが、精神疲労を減らすためには抑制機能の改善が欠かせないみたいなんで、おそらく以下のような方法が良いのではないかと思った次第です。

 

  • オープンモニタリング瞑想(観察瞑想): 考えや感情、体の感覚を評価せずに観察し、そのまま流していく瞑想法。これにより、心の中の雑念や否定的な思考にとらわれず、持久力を保つ力が向上するとされる。具体的には、10~20分間、現在の思考や感情を観察し、心が何かにとらわれたら、それを認識して手放し、再び呼吸や体の感覚に戻る。これを続けると、感情や疲労感に対して執着しない態度が育つと思われる。

 

  • インヒビトリーコントロール瞑想: 抑制機能(誘惑や注意散漫を制御する能力)を強化するために、特に集中力を持って注意を一定の目標に向け続ける瞑想。具体的には、1回あたり5分間ずつ、特定の言葉や音(「無」「静寂」など)に集中する。この間、他の考えが浮かんできたら、その都度注意を戻すことで抑制力を高めていく(5分が過ぎたらいったん休憩)。個人的には、日常生活で無駄なエネルギーの消費を抑えるトレーニングになるような気がする。

 

あくまで上記は私の推測でしかないですが、たぶん抑制機能の改善になるんじゃないかなーとか思っております。実践してみたい方は、3~5回の瞑想セッションを行い、少なくとも1日に合計で20分ぐらい続けてみると良いのではないでしょうか。特に持久力トレーニングをする日には、運動前後に短い瞑想セッションを加えることで、精神的疲労の軽減と集中力の持続効果が得られるかもしれません。自分でも、運動の前とかにやってみようかな……。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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